Jen Shyu パンデミックで露わになる深い傷

Jen Shyuは台湾系移民と東ティモール系移民の両親を持つヴォーカリスト、作曲家、マルチ楽器奏者。

このブログの中で取り上げた作品では仁科彩さんの『Flora』に参加したりもしますが(→こちら)、ブログを書きはじめてから特にアルバムリリースなど無かったので書きそびれていました。

最近、Downbeat誌にて彼女のインタビューが載っていて(→こちら)、そこでコロナ禍で感じたアジア系住民への差別的な目についてなどを語っていました。
そんなこともあり、あらためて彼女の過去作品などを聴き返しています。

彼女はもともとはジャズ・ヴォーカリストとして活動をしていて、1stアルバム『For Now』(2003)などはジャズ・スタンダード中心の構成。このアルバムはサブスクサービスでも聴けます。悪くないのですが、やはりその後のアルバムの方がオリジナリティがあって良いかな。

彼女のソロアルバムも良いのですが、珍しいところではメアリー・ハルヴォーソンとの共演などが多いベーシスト、John Hebertのアルバム『Rambling Confessins』で彼女のヴォーカルが大きくフィーチャーされています。

いまの彼女の活動は自身のルーツである台湾、東ティモールの音楽だけではなく韓国、インドネシア、キューバ、ブラジル、など世界各国の伝統音楽を自身の音楽に取り入れてきました。

特に韓国の伝統音楽は彼女の音楽の中で大きなウェイトを占めているようです。ハングルを流ちょうに話しパンソリなども歌いこなしています。

動画はパンソリ『沈清歌』

 

彼女はもともとはクラシックピアノを習っておりピアノコンクールなどにも出場していたようで、いまでもステージでピアノを弾くこともあります。
ただ基本は歌いながら韓国のカヤグムや台湾のMoon Lute(月琴)を演奏する弾き語りスタイルが多いようです。

スティーブ・コールマン&ファイブ・エレメンツ

もともとジャズヴォーカリストだった彼女がいまのような音楽スタイルに変わっていったのは、2003年からスティーブ・コールマン&ファイブ・エレメンツに加入して、コールマンからオリジナル曲を中心に活動するようにアドバイスを受けたことによるとのこと。

やっぱりスティーブ・コールマンは今のジャズ・ミュージシャンに多大な影響を与えていますね。(ウィントン・マルサリスと並んで)「いまのジャズ」を語る上で避けては通れない存在なんだなと思います。

ちなみに彼女はファイブ・エレメンツのアルバムには『Lucidarium』(2004),『Weaving Symbolics』(2006),『Harvesting Semblances And Affinities』(2010),『The Mancy Of Sound』(2011)の4枚に参加しています。
かつての80年代後半から前半にかけてのアルバムのようなミクスチャーな感じはなく今のフリーインプロ系の音なのですが、大物ミュージシャンの安定感というかさすがというか「レベルが違うな」という感じですね。

ファイブ・エレメンツのアルバムは『Harvesting Semblances And Affinities』(2010)からレーベルがPi Recordingsに変更していますし、その流れからか彼女のソロバム『Sounds And Cries Of The World』『Song Of Silver Geese』もPi Recordingsからのリリースです。
そのため彼女のアルバムでの共演者は、ファイブ・エレメンツ関係、Pi Recordings関係が多いですね。ドラムのDan WeissとかギターのMiles Okazakiとか。

アクティビストとして

また彼女は、Robert Glasperと#metooの話(→こちら)でも少し触れた女性ミュージシャンの地位向上のための活動団体 We Have Voiceのメンバーでもあります。

その他にもアジア系ミュージシャンのための活動団体Asian Improv aRtsの話もDownbeat誌のインタビューで取り上げられていました。Asian Improv aRtsのくだりではアメリカで活動する日本人サックスプレイヤーのSugimoto Maiさんの話も取り上げられていましたね。