スポンサーリンク

ロリンズ、ウェア、アレン、そしてJBL

今回はサックス奏者、ジェイムズ・ブランドン・ルイス(James Brandon Lewis)略してJBLの9枚目のリーダーアルバム『Jesup Wagon』の紹介。

JBLはここ数年でアルバムをリリースするごとに着実に評価と知名度をあげていて、今ではトッププレイヤーの仲間入りをした感がありますね。前作『Molecular』もそうですが、今回の『Jesup Wagon』も各種メディアで取り上げられいます。

今回のアルバム『Jesup Wagon』は、Red Lily Quartetという名前のこれまでのあるバムにはないグループによるアルバムです。

■Red Lily Quartet
James Brandon Lewis: tenor saxophone, composition
Kirk Knuffke: cornet
William Parker: bass, gimbri (on tracks 2 & 7)
Chris Hoffman: cello
Chad Taylor: drums, mbira (on track 6)

基本はJBLがこれまでに共演してきたメンバーたちがメインだと思うのですけど、目を引くのはチェロのクリストファー・ホフマンの参加かも。
現在のJBLはジェイミー・ブランチなどシカゴ周辺のジャズミュージシャンと関わりが深いみたいですが、ホフマンも同じくシカゴを拠点にしているので、そういった地元つながりでの起用なのかも。
ただ、チェロは繊細な楽器であり、このグループではあんまり目立ってない感じですね(正直、いてもいなくても良いような、、)

ジョージ・ワシントン・カーヴァー

このアルバムで演奏される曲は、20世紀初頭の農業科学者でありでもあったジョージ・ワシントン・カーヴァーの伝記にインスパイアされて書かれたようです。
※前作『Molecular』もワトソンらによる分子生物学をモチーフに作られたようです。JBLは他にもSFとか、音楽以外の分野からの影響を受けてアルバムを作ることも多いみたい。

カーヴァーは米国アラバマ州にあるタスキーギ大学で、サツマイモやラッカセイなどを研究する農学化学者。


1860年頃に生まれた当時は奴隷の身分だったそうですが、南北戦争の後、黒人が自由になったので、働きながら勉学し修士課程まで教育を受け、1896年にタスキーギ大学の農学研究の研究長になったそうです。

彼の大きな功績は、南部の農業に輪作を導入して貧しい農民たちに持続可能な耕作方法を定着させたことのようですが、アルバムタイトルである『Jesup Wagon』の名前は、カーヴァーが新しい農業を広めるために南部を走り回った時の馬車に由来しているそうです。

そのため演奏される曲は「奴隷時代の名残が残る南部」をイメージしたものが多く、ジャズというよりも、ゴスペルやワークソングといったテイストも含まれていますね。
アルバム全体がエモーショナルな空気感に包まれていて素晴らしいです。

JBLはもともと父親が牧師で教会で演奏されるゴスペルが彼の音楽体験のルーツにあり、ジャズを学ぶ間も定期的にゴスペルを演奏するしてきたそうです。
そのため、この『Jesup Wagon』はJBLのアルバムとはかなり違うテイストの、彼のルーツが色濃くでたアルバムとも言えるのかもしれません。

ロリンズ、ウェア、アレン、そしてJBL

これまでのJBLはいわゆる「豪快」といった形容をされることも多くて、スローでコード感の希薄なベースラインと、手数の多い過剰とも言えるドラムをバックに、アルバム全編にわたってゴリゴリ吹きまくるイメージ。

そのスタイルは、ソニー・ロリンズ、デビッド・S・ウェア、J・D・アレンといったサックス奏者の系譜に連なる存在とよく例えられています。
ロリンズやアレンもJBLのことを高く評価しているみたいだし、JBL本人も彼らの後継者だと公言しているようですね。

JBLのキャリアを読んでみると、ハワード大学でトランペット奏者のドナルド・バードが創設したジャズ・スタディーズを専攻したり、カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)でチャーリー・ヘイデンやワダダ・レオ・スミスに師事しつつ、現代音楽や民族音楽も学ぶなど、かなり学術的で高度なトレーニングを受けてきたプレイヤーのようですね。
実際には「豪快に吹きまくるテナー奏者」という世間のイメージよりももっと引き出しの多い人なのかも。

余談

彼は、自分が読んでる中ではトップクラスに多くのコメントをSNSで投稿していて、読むのもなかなか面白いです。
父親が牧師ということもあるのかもしれませんけど、知的で誠実な人柄みたい。
以下は今回いろいろ過去の記事を読んでいて、彼らしいと思ったインタビューでのやりとりです。

JBL 「ストリーミングやCDの衰退により、音楽業界は以前とは違ってきています。今やパフォーマーは、経理、メディア対応、ブッキングエージェントを務めなければなりません」

インタビュアー「そんなたくさんの仕事をこなしながら、どうやって自分の音楽のための時間を確保しているのですか?」

JBL「早起きするんです」

 

Jazz
スポンサーリンク
サナコレ