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Henry Threadgill’s Zooid 『Poof』レビュー

作曲家/サックス奏者であるヘンリー・スレッギルが過去20年以上に渡り続けてきたグループ Zooid
そのZooidが今年2021年に新作『Poof』をリリースしました。

2015年にリリースされたZooidのアルバム『In For A Penny, In For A Pound』がピューリッツァー賞(音楽部門)を受賞したことはエポックメイキングな出来事でしたが、今回リリースされた『Poof』は受賞後にリリースされる初めてのZooidによるアルバムとなります。

このアルバムはもう素晴らしくて、全ての音楽ファンが聴いて欲しいですね。

Zooidは素晴らしいだけではなく、他のどんな人とも似ていない音楽を演奏していると思いますよ。
わたしは音楽理論には詳しく無いですが、それは聴けばすぐわかると思います。

本当の意味でオリジナリティを持ったグループのアルバムを聴く、という体験は実はなかなかできない事なので。

シリアル・インターヴァリック・システム

スレッギルは自身の音楽のコンセプトを「シリアル・インターヴァリック・システム」と読んでいるそうです。
これは「楽譜と言うよりも音符の間隔のパターンを演奏者に指示として与え、演奏者はそれに基づいて自由に即興演奏する」というものらしいです。

まあ音楽理論素人のわたしはそのコンセプトを聞いても良くわかりませんし、耳で判別することはできないのですけどね。

特徴的な点としては、各プレイヤーがそれぞれバラバラに演奏してソロをとっていながらも、実は演奏者同士がお互いに影響しあい、結果としてひとつの曲を構成していくという感じ。
Zooidの音楽について「タペストリーのようだ」という文章を読んだのですが、これほどわかりやすい例えはなかなか無いですね。
メロディーが時間の流れに合わせて音程を変えるように、Zooidの音楽は音符の間隔やパターン、演奏者同士のルールといったパラメータを時間と共に刻々と変化させるもののようです。

「楽譜による演奏と即興をどう組み合わせるか」という現代ジャズの大きな命題についての回答を、Zooidは独自性のある斬新な手法で作品に表現している貴重な存在なんだと思いますね。

聴いた印象としては、ジャズコンボというよりはむしろクラシックのストリング・カルテットや(サックス奏者4人組からなる)ロヴァ・サキソフォン・カルテットに近いかもしれません。

ただZooidは、楽器間のハーモニーよりも異なる楽器の異なるトーンが絡み合うことによるダイナミクスを重視しているようにも思いますし、だからこそチェロやチューバといった普通はジャズで使用しない楽器も慎重に選ばれたんでしょうね。
スレッギルの他のアルバムでは普通にピアニストがメンバーに入っていますが、Zooidがピアノレスなのは、ピアノがジャズやクラシックなど特定の「ジャンル感」を思い起こさせるからというのもあるかと思いますが、アタック音の強いピアノのトーンが他の楽器と合わないと考えたんじゃないかな。
ベースがチューバに置き換わっているのも、あまりジャズでは使われていないチェロが使われているのも同じような理由なのかも。まあこの辺はただの想像ですが。

ちょっと気づいた点として、今回はいつも以上にJose Davilaのチューバ(と少しトロンボーン)がフィーチャーされていますね。

あとスレッギル自身のサックスは今回はけっこう少なめかも。
ただ、曲がグワっと盛り上がり緊張感が高まるパートなどになると必ずスレッギル本人が「ここはオレだから」という感じでメインでソロを取るのは、いかにも「ボス」という感じでした。

最後にこのアルバムの不満点といえば、5曲トータル38分と曲が少なすぎ、短すぎ、全然足りないという点ですね。

Henry Threadgill’s Zooid Personnel

Henry Threadgill – alto saxophone, flute, bass flute
Liberty Ellman – acoustic guitar
Jose Davila – tuba, trombone
Christopher Hoffman – cello
Elliot Humberto Kavee – drums

ところで、なぜかSpotifyではこのアルバムは聴けませんね、今のところ。
わたしがSpotifyからApple Musicに乗り換えたのもこういったSpotifyでしか聴けない音源が多かったからです。
(もちろん逆のパターンもありますが、その頻度はずっと少ない)

Spotifyユーザーのみなさんは、ダウンロードかフィジカルで購入しましょう。

Jazz
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サナコレ