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2019年グラミー賞 ワールドミュージック部門

グラミー賞において、ワールドミュージック部門はかなり「迷走している」と言って良いでしょう。

もともと世界の75%もの音楽をなんとなく総称しただけの単語であり、何かジャンルの定義がある訳でもなく、同じカテゴリとしてノミネートして優劣をつけるのはあまり意味がないとも言えます。

例えばレゲエなど、ワールドミュージックに入っていてもおかしくないジャンルも、人気があるとワールドミュージックの枠から外れてひとつの部門として独立していったりもしています。
ラテン部門なんかもそうですね。

2003年から「ベストトラディショナルワールドミュージック」と「ベストコンテンポラリーワールドミュージック」に分けたり、そして2012年にまた統合したりしているのも迷走ぶりを示す好例ですね。

過去の受賞作品をみると(こちら)、セレクションの難しさから、ほとんどアフリカ音楽に偏っていることがわかります。
あとはちょこっとインド音楽、あと昔はジプシー・キングス。

アラブ系の音楽などはほとんど無視。東南アジアの音楽とかもほぼ無視。アイリッシュ音楽なども、一般的な人気からすると冷遇されているような。

ただ「グラミーのワールド部門ってそういうもんだ」と割り切ってしまえば新しい発見もあるかも。

ベスト・ワールドミュージック・アルバム

さて、今年2019年のグラミー賞ワールドミュージック部門のノミネートはこの5枚

『Gece』Altin Gün
『What Heat』Bokanté & Metropole Orkest
『African Giant』Burna Boy
『Fanm D’ayiti』Nathalie Joachim With Spektral Quartet
『Celia』Angelique Kidjo

ノミネート9回、受賞3回のアンジェリク・キジョーが大本命という感じですね。

『Gece』Altin Gün

アルトゥン・ギュンはアムステルダムを拠点に活動するグループ

トルコの60年代〜70年代のフォーク・ロックが本国トルコでリバイバルしているらしく、アルトゥン・ギュンはトルコ人男女2人をフロントに据え、バックをオランダ人が支えるというスタイル。

こういう「B級グルメ的」な音」は病みつきになる人もいるのでしょうけど、個人的にはあまり楽しめないアルバムかな。

『What Heat』Bokanté & Metropole Orkest

スナーキー・パピー(Snarky Puppy)のリーダーであるマイケル・リーグが、他のメンバーと共にはじめた派生バンド。

カリブ海グアドループ出身のマリカ・ティロリエンのヴォーカルをフィーチャーしていて、フランス語で歌われていますね。

スナーキー・パピーはブルックリンをベースに活動しているグループということで、これをワールドミュージックに入れるかは微妙な感じ。

ただ、音はポップで、ラージアンサンブルによる厚みのあるアレンジがなかなか凝っています。
透明感のあるティロリエンのヴォーカルと、ちょっと尖ったバックのコントラストが良い感じです。

小川慶太さんというパーカッショニストの方もメンバーみたい

『African Giant』Burna Boy

ナイジェリア出身のBurna Boyは本名をダミーニ・オグル(Damini Ogulu)といい、1991年生まれのシンガー・ソングライターで、これが4枚目のアルバム。

ナイジェリアというと、キング・サニー・アデみたいな音楽を想像してしまうのですけど、彼の音楽はレゲエやラップ、R&Bをブレンドさせたような音楽。

ストームジーはエド・シーランとバーナ・ボーイとコラボみたいなニュースがあった(こちら)のですが、超メジャーなミュージシャンを聴くようなリスナー層に受け入れられている人みたいです。

彼にするとワールドミュージック部門なんてあまり眼中にないかも。

『Fanm D’ayiti』Nathalie Joachim With Spektral Quartet

ナタリー・ヨアキム(Nathalie Joachim)はブルックリンをベースに活動する、ハイチ系アメリカ人のフルート奏者/ヴォーカリスト

シカゴを拠点に活動するSpektral Quartetという室内楽アンサンブルと共演したのが本作。作曲もヨアキム自身が行っているのですが、ハイチの伝統音楽をベースにしながら聴いた感じは完全にクラシックですね。
クラシックに抵抗のない人が聴くと、純粋に楽しめるかも。

それにしてもここまで見てきて、今年は「これ、ワールドミュージック部門なの?」というアルバムが多いですね。

『Celia』Angelique Kidjo

トーキング・ヘッズの「リメイン・イン・ライト」の全曲カバーも記憶に新しいのですが、今年はサルサの女王セリア・クルスのカヴァー集をリリースしました。

これは申し訳ないですが、セリア・クルス曲のカラオケみたいですね。
そもそもこのアルバムはラテン部門にノミネートされるべきジャないかな?とは思います。

受賞予想

受賞はアンジェリク・キジョが順当に受賞しそう。話題性でBurna Boyとかもあるかも。

個人的に気に入ったのは『What Heat』Bokanté & Metropole Orkest かな。マリカ・ティロリエンの声質はすごく好みで心地よいです。

マリカ・ティロリエンはスナーキー・パピー本体とも共演していたんですね。動画はこちら

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