ガリア・ベナリ 〜 チュニジアからベルギー、インド、そして世界へ 〜

今回はちょっと短めのブログ投稿。

ワールド系音楽を扱うメディアというはあまりないのですが、その中で良く読むサイトにTransglobal World Music Chartというサイトがあります。

これはワールド系のジャーナリストが自分の気に入った新譜アルバムに投票して、それをランキングするというサイトになります。

CDの売りあげやストリーミング再生数ランキングなどではあまり見られないマイナーなミュージシャンもけっこうランクインしていて、チェックしていると面白いです。

チュニジア系ヴォーカリスト ガリア・ベナリ

最近のこのチャートで気になったのは、ガリア・ベナリという、チュニジア系の女性シンガー、ソングライター。

彼女は父親がベルギーで医学を勉強していたこともあり、ベルギーで生まれ、その後4歳でチュニジアに戻っています。
その後、グラフィックデザインを学ぶために19歳でベルギーに戻り、卒業後はグラフィックデザイナーとして活動しているという人です。

彼女はとにかく多才でアクティブな人のようで、デザイナーとしての活動と並行して(けっこう美人なこともあり)女優として映画に出演したりもしています。
音楽に関しては、チュニジアにいる間にアラブ音楽やインド音楽に興味をもって家族の前で歌うようなこともあったようですが、特に専門的なトレーニングは受けていないようですが、25歳の時に友人の誕生日で歌ったことをきっかけにヴォーカリストとしての活動もスタートしたようです。

『Call to Prayer』

2020年にリリースされた『Call to Prayer』は、ヴィオラ・ダ・ガンバを演奏するRomina Lischkaとのコラボで、ヨーロッパ古楽とアラブ音楽の融合を試みています。
この2人に、ベナリさんと共演歴の長いベーシストのVincent Noiretがサポートするかたち。

この『Call to Prayer』を聴いた印象ですが、意欲的でチャレンジングな試みだと思いますけど、空振り気味であまりうまくいっていない感じはします。
たぶん、このアルバム限定のプロジェクトなのでしょうけど。

『ウム・クルスームを歌う』

ガリア・ベナリさんの音楽は基本はアラブ音楽をベースにしているのですが、あまりアラブ音楽の伝統にこだわりが無いためか、アルバムごとに他ジャンル音楽とのコラボレーションを行っています。
たとえば彼女はインドダンスを学ぶために2年間インドに滞在していたこともあり、ベルギー在住のシタール奏者であるバート・コーネリアス(Bert Cornelis)と『Al Palna』(2008)というアラブ音楽とインド音楽をのミクスチャーアルバムを作っています。

この『Al Palna』というアルバムも、「なんちゃってインド音楽」という感じでどことなくぎこちない感じで、あまり聴くべきところも少ないような。

と、ここまで彼女のアルバムをぜんぜん褒めていないのですが、、伝統的なアラブ音楽楽器を伴奏(ウードやレク)に歌われる曲は素晴らしくて、そういう彼女の良さがいちばんわかるアルバムは『Chante Om Kalthoum(ウム・クルスームを歌う)』(2010)なのだと思います。

ウム・クルスームは戦前~戦後にかけて長く活躍したエジプトの歌手で、間違いなくアラブ世界で最も偉大な存在。
彼女のラジオコンサートが放送される時は、通りから人々が消え去ったという逸話もあるほどです。
ベナリも幼いころからクルスームの歌に魅了されてきたということで、彼女の代表曲を歌っています。

いつもはSpotifyのリンクを貼っていますが、なぜかSpotifyは音源がないためApple Musicのリンクを貼りますね。

Personnel
Vincent Noire(Double Bass)
Moufadhel Adhoum(Oud)
Azzedine Jazouli(Percussion)
Ghalia Benali(Vocals)

クルスームはいつもはゴージャスなオーケストラを伴奏に歌っていましたが、この『Chante Om Kalthoum』では小編成の伴奏ですね。

シンプルな伴奏なので、ベナリさんが歌う繊細で表現力豊かなヴォーカルテクニックを聴くことができますね。

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