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まれにみる「失敗」に終わってしまったフジロック2021

今回のブログ投稿は2年ぶりの開催となった今年のフジロックついて。
2021年8月20日からの3日間開催されていました。

今日の投稿は日記みたいなものかな。
何年か後にこの当時の雰囲気を読み返した時のための備忘録でもあります。

今年のフジロックは、日本全国で新型コロナ感染者が急増している状況もあり開催地の新潟でも過去最高の感染者数を記録したことから「こんな時期に本当に大丈夫なのだろうか?」という声があがる中での開催となりました。

新潟の医療状況については、新潟大学小児科の方が開催の直前に
「新潟の病院はどこも限界ですので体調が悪くなっても充分な対応ができない」「今からでも参加は辞めた方がいいでしょう」
とかなりストレートに警告を発していたことから、かなり逼迫している状況ではあるようです。

そんな状況の中でフジロックは開催されたのですが、ネット上では「こんな時にマジで開催するのか」いまだかつて無いほどの逆風が吹いていました。
これはもう「炎上」と言っても良いくらいですね。これは来年以降にも禍根を残しそうです。

新型コロナの感染状況から参加を取りやめた人もたくさんいるようですし、参加された方も「ホントに参加してよいのかな?」と複雑な思いを持っていた人も多かったようです。

思うに音楽フェスはそこで演奏される音楽だけではなく、むしろそこでの体験や経験のひとつひとつが価値あるものなのだと思います。

ですが、「思い出は、シェアされて初めて思い出」「感動は、いいね!されて初めて感動」というノリの今の音楽リスナーにとって、世間からの逆風が吹く今回のフジロックにどれほどの価値を感じているのかな?とも思います。

万全のコロナ対策

そもそもの話として、わたしはフジロックだって(中止になった)ロッキンジャパンフェスだって、野球やJリーグ、さらにはオリンピックだって、基本的にどんなイベントでも決められた数で観客を入れて開催しても良いと思っています。

「観客の上限は◯万人です」と事前に宣言して、それが「まぁ良いかな」と世間的に許容されれば、開催に関してはそれで問題ないと思いますし。
野球やJリーグはそうしてきたんですし。感染が拡がる可能性はゼロじゃないけど、それはその他の社会活動と同じこと。

その上で「フジロックの開催は適切だったのか?」と言われるとかなり疑問ですね。
少し前に「ロッキンジャパンは中止になっても当然」ということを書いたのですけど、今回のフジロックも同じ理由から、もう少し良い運営のやり方があったんじゃないかと思っています。

オリンピックはけっきょく無観客でしたし、いまの状況で数万人規模のイベントが行われると聞くと開催地の地元民にとってはかなりのインパクトです。
「例年の半分」という数字から、今年のフジロックはおそらく1日2万人以上の観客を入れようとしていたはずです。
これだけの多くの観客が来ることを事前にオープンにせず、「例年の半分」というパッと聞いても良くわからないフレーズであいまいにごまかしていたように思えます。

実際にフェスがはじまってみると、案の定ステージ前にぎゅうぎゅう詰めになっている写真がたくさんSNSアップされていますし、こんなに密になるって最初からわかっていたら、地元の声もずいぶん違ったんじゃないかな?
その他にもオフステージのいろんな場所でも、ソーシャルディスタンスから考えると「これはちょっと、、」という写真などもたくさんアップされていましたし。

やっぱり「大声禁止」とか「ソーシャルディスタンス」の確保といった参加者の自主性にまかせた対策を取るなんて聞かされても地元の人は安心できなかったと思いますし、その不安がしっかりと的中したかたちです。

参加者の数もそうですが「希望者のみの抗原検査」というのもけっこう甘い気はします。
出演者とスタッフは全員PCR検査していたそうですが、観客も含め全員にPCR検査を義務付けるくらいはやらないといけなかった。
「フジロックだけ厳しすぎる」という意見もあると思いますが、注目されているイベントでもあり、オリンピックが無観客だったことで「安全・安心」のハードルが極端に上がってしまったので、地元に納得してもらうためにはそのくらいはやるべきだったと思います。

大規模イベントは地元に納得してもらった上で開催することはもう最低条件で、それができなかった時点でフジロックは明らかに失敗だったんです。

でも、主催者も観客が多いことに対する批判はあらかじめ予想できていたんじゃないかな?
言葉は悪いですけど、開催してしまえば批判は後でなんとでもなると思ってたのかも。

炎上に次ぐ炎上

フジロックは、会場内で反核・脱原発イベント『アトミック・カフェ』を開催していたりして、「左翼的」だと言われることも多いイベント。
わたしは参加したことないので「ふーん」としか思って無かったですけど、フジロックは(いわゆるネトウヨ的な人も含めて)政治信条の違う人たちから、音楽以外のところでたびたび攻撃されてきたようです。

今回の話もそういった政治クラスタ的な界隈からロックオンされてしまったようで、「これで感染拡大したら誰が責任取るのw?」「めっちゃ蜜ってて草」「この無責任さもロックだね」と集中砲火を浴びたみたいです。

しばらくするとそうした炎上が(音楽以外の)一般メディアにも飛び火したようで、「押し寄せる関東ナンバーの車。感染拡大に怯える地元民」みたいなweb記事がたくさん目につくようになりました。

それだけに留まらず、ワイドショー的な番組で無責任なテレビのコメンテーターや「ご意見番」みたいな人たちにまで、「こんな時に開催なんてやめときゃ良かった」だのあーだこーだと言われる始末です。
「お笑い芸人のほんこんさんと、元新潟県知事の米山 隆一さんがフジロックの開催をめぐって舌戦」なんて状況は、音楽ファンにとっては地獄でしかないでしょ。

期間中のメディア報道で、フジロックを名前くらいしか聞いたことない人たちにはこのイベントに対してすごくネガティブなイメージを植え付けたんじゃないかな、と。

お粗末な運営で医療関係者をガチギレさせるフジロック。
音楽に興味のないネット民から小バカにされるフジロック。
ワイドショーのネタにされ、上から目線で批判されるフジロック。
と、全方位から叩かれてしまいました。

わたしの知る限り、こんなのちょっと見たことないですね。
正直、フジロックというイベントにそこまで思い入れのない自分でもさすがに憂鬱な気分にさせられました。

一方では世間のバッシングを知ってか知らずか、フジロックに参加した人からは「フジロック、ずっと待ってました」「〇〇のステージ、最高です」といったSNS投稿もあったりして、世間との怒りモードとはまるで正反対の雰囲気がなんだか読んでいて辛くなります。

みんな政府が悪いんや

フジロックの炎上ですが、新型コロナ感染拡大への影響だけでなく、ミュージシャンの発言も炎上の一因となっているようです。

中でも、折坂悠太さん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんという2人のミュージシャンのコメントがイベント開催の逆風にさらに火に油を注いでしまったようです。
(もしかすると順序は逆で、ふたりの発言がフジロック全体の炎上のきっかけなのかもしれないですけど)

興味ある人は2人の元コメントを読んでほしいですが、簡単にいうと以下のような感じ。

折坂さんは出演を決めながら直前にドタキャンして、そのことに対するつらい思いをつづっていたのですが、コメント後半になって

一般企業や国民に多くの責任を負わせ必要のない分断を作った今の政府に対して、改めて憤りを感じます

と唐突に政権批判をはじめてしまったようです。
当然のごとく「人のせいにするのダサい」「この話に政府は関係ないだろ」と総ツッコミをくらっていました。

またアジカン後藤さんはイベントに出演することに対する「迷っている。自問自答している」といった葛藤する思いを、超長いnoteにと書きつらねていたのですが、最後になって

しかし、補償もないまま、どうやって多くの人や民間企業の行動を制限して行けばいいのだろうかと素朴に思う。「予期できたのではないか」と言う言葉もあるかもしれないが、それもまた、市民どうしがお互いに向ける言葉というよりは、政府に向けるべき言葉ではないかと思う。感染症対策の責任は本来、彼らにあるはずだ

と、こちらもまた批判の矛先を政府へ向けさせるかのようなコメントをしていて、こちらも総ツッコミされていました。

普段からこういう人なのかもしれないですが、さすがに飛躍しすぎだし幼稚すぎやしないか?と思いますね。
ふたりとも言い訳がましくて自己憐憫に溢れたポエミーな文章を書いていて、それがさらに火に油を注いだという感じでした。

政府批判に関しては2人だけの話ではなく、言う言わないはともかく同じようなことを考えているミュージシャンは多いのかもしれないですけど。
どうもTHA BLUE HERBというグループもステージ上のMCで、似たような政府批判をしていたようですね。

しかも今回のフジロックはコロナ禍におけるイベント支援ということで、政府(経済産業省)から9000万円の支援金を受けて開催されていたっていうじゃないですか。
そんなの事前には全然知らされていませんでしたよね。なんなら出演者も知らなかったんじゃないかな?

裏でイベントとしては政府に支援を受けておきながら、出演者が政府を批判しても、説得力もなにもないんじゃないかな、と単純に思うのですがね。

あとアジカンの後藤さんは、「オリンピックにはあれだけ反対していたのに、自分のライブには何食わぬ顔して出演するの?ダブル・スタンダードだ」と言う点でもすごい勢いでバッシングされていましたね。
このやりとりでだいぶ凹まされたのか、どうも「twitter休止宣言」をしたらしいですけど。

正直、オリンピックに反対と言っておきながら音楽フェスはO Kと言っている人は、自分の中でどうやって自分の意見に整合性をつけているのか、わたしには全く理解できないです。

「オリンピックは巨額な税金を使っているから」「オリンピックとフェスは全く別物。同列に論じてもしょうがない」とかいう人がたまにいるのですけど、意味不明ですよね。
別に感染拡大に税金が使われるかどうかは関係ないし、人が集まることに関してはオリンピック もフェスも一緒だし。

※ちなみにオリンピックは関係者はバブルで隔離され、全員PCR検査を毎日実施したそうです。7万7000件のPCR検査が行われ、陽性は0・04%の28件だったとか。はっきり言ってフジロックの方がオリンピックよりもはるかに感染拡大のリスクは高い。

別にそんな言い訳しなくても、個人的には今回のフジロックに出演したことじたいを責める気なんて全くなかったのですけどね。
「依頼された仕事だから。プロだから」「タイミング的にしかたない」とか、参加されるミュージシャンそれぞれの立場も考え方もいろいろで、その思いにも濃淡があるのでしょうし。

といったなんやかやで、久しぶりにブルーな気分になった週末でした。。

追記1

投稿後に知ったのですが、歌手のMISIAさんがフジロックで「君が代」を歌ったことが話題となっていました。

フジロックで「君が代」を歌うことがどういう意味なのかMISIAさんがどこまで理解していたのかはわかりませんが、いずれにしてもネット上では「サヨクのイベントで君が代w」「これぞロック」ともうお祭り騒ぎでした。
今年のフジロックのなんやかやは、今後もずーっと言われ続けることになるんでしょうね。。。

追記2

開催後の事務局発表によると、3日間 延べ 来場者数は35,449人だったそうです(内訳:8月20日(金) 12,636人 / 8月21日(土) 13,513人 / 8月22日(日) 9,300人)

2019年は延べ13万人の観客だったので、例年のおよそ4分の1の観客。
フジロック側がおそらく目指していたであろう「例年の半分の観客」には、ほど遠い数字でした。

これだけ観客が少なかったのは、これはおそらくコロナ感染状況から直前になってかなりのキャンセルが入ったからだと思いますね。
もし収益的に厳しいことがあらかじめわかっていたのであればさすがに中止にしたのだとは思いますが、感染悪化とキャンセル増があまりに直前で止めるに止められなかったのかも。

内情はよくわからないですが、例年の4分の1の観客だと普通は赤字なんじゃないですかね?
もしこれで利益が出るなら、逆にこれまでのチケットの値段設定はどれだけぼったくってたんだ?って話ですよ。

収益の面からも今年のフジロックはおそらく「失敗」だったのでしょうね。

追記3

フジロックの開催に関しては政府に事前相談があり、また9000万年の補助金も出ていることから感染状況に対して政府に報告したそうです。

フェス開催後の会見の、コロナ担当大臣西村氏の会見でフジロックに関する質問が出たらしく、それによると

現地検査で陽性が判明し入場を断った例もあった

来場者には事前に抗原検査キットを配ったほか「現地で検査した人も何百人かいる」

とのこと
この状況を見ても、コロナ無症状の人がある程度の人数が主に関東圏から移動してきて、さらには会場に入ってしまっていたことがわかりますね。