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ブルガリアン・ポリフォニーを歌う4人組  エヴァ・カルテット

今回はブルガリアン・ポリフォニーを歌う4人組グループ、エヴァ・カルテット(Eva Quartet)の新作アルバム『Minka』

このアルバムは日本盤もリリースされているのですね。ブルガリアン・ポリフォニーの日本での人気の高さがうかがえます。

エヴァ・カルテットは、ブルガリアン・ポリフォニーでワールドミュージック界を席巻したブルガリア国立放送合唱団の出身者の4人によって結成されたグループです。
当時のブルガリア国立放送合唱団は1000人以上もの応募者からオーディションでメンバーを選んでいたそうなので、彼女たち4人も選りすぐりのメンバーということですね。

ブルガリアン・ポリフォニーが話題となった80年台後半は、東欧の政治情勢が大きく変わった時期とも重なります。
ベルリンの壁崩壊が1989年でしたが、ブルガリアもちょうど同じ年に共産党政権が崩壊しています。
国がパトロンとして機能していたブルガリア国立放送合唱団も、社会環境の変化によってかつてのような活動は難しくなっていったようですね。

ブルガリア国立放送合唱団じたいは例外的にワールドワイドに人気があったこともあり、現在はブルガリアン・ポリフォニー・アンジェリーテというグループに形を変え、いま現在も活動を続けています。
そんななか、エヴァ・カルテットの4人は1995年に合唱団を抜けて独自の活動を続けていくことになったようです。

彼女たちのアルバムとしては『Bulgarian Folklore Gifts』(2000)が1stアルバム。その他にも2000年初頭にはさまざまなコンピレーションや映画音楽などで活発に活動していたようです。
その後に彼女たちのアルバムリリースはぷっつりと無くなっていきますね。唯一、2012年にリリースしたエクトル・ザズーとのコラボアルバム『The Arch』があるくらいです。
この『The Arch』はビル・フリゼール、坂本龍一、ニルス・ペッター・モルヴェル、ローリー・アンダーソン、ロバート・フリップといった大物ミュージシャンを多数ゲストに迎えていて、かなり力の入ったアルバム。
ただ、個人的にはエクトル・ザズーが関わったアルバムはどれも、いかにも「西洋人が考える民族音楽」といった感じでぜんぜん好きになれないのですよね。伝統文化に対するリスペクトがないというか(例えばディープ・フォレストとかもそうですけど)

この新作『Minka』は前作『The Arch』と違い4人のコーラスで伝統的なポリフォニー・コーラスに回帰し、ブルガリアの伝承曲や現代作曲家のレパートリーをとりあげているアルバムになりますね。こういうスタイルの作品はほぼ20年ぶりということになります。
たとえば冒頭の「Minka E Rano Stanala」という曲は、ブルガリアで初めて伝統的な民謡を演奏したボーカルカルテットであり、ブルガリアで祖国でカルト的な存在となったKuschlevi姉妹のレパートリー。
その他には、ブルガリアの著名な作曲家であるステファン・ドラゴスチノフと、故イヴァン・スパソフ(1934-1996)の曲「Balno Li Ti E Sinjo Ljo」などもとりあげられているようです。

かつてのブルガリア国立放送合唱団のような大編成のコーラスも良いですが、エヴァ・カルテットのような小編成のコーラスもすごく良いですね。
編成がシンプルな分、不協和音が移り変わっていくさまがよりクリアに聴くことができます。
エヴァ・カルテットの音楽がこれまでのブルガリアン・ポリフォニーと比べて斬新だとか新しいとかいうことはないのですが、やっぱり伝統的なコーラスとそのまま歌ってくれる、それだけで貴重だし楽しめます。
それだけブルガリアン・ポリフォニーというのは、「強い」音楽ジャンルなんだと思いますね。

「音楽の良し悪しにジャンルは関係ない」っていう人も多いですけど、「いやいや、関係あるでしょ」とエヴァ・カルテットを聴くと思うわけです。

エヴァ・カルテット Personnel

Alto Vocals – Evelina Spassova
Contralto Vocals – Daniela Stoitchkova
Mezzo-soprano Vocals – Sophia Kovatcheva
Soprano Vocals – Gergana Dimitrova