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#Spotifyを削除しよう

みなさん、音楽ストリーミングサービスは何を使っていますか?

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#DeleteSpotify

先日、Spotifyのポッドキャストが新型コロナに関する虚偽の情報を広めているとして、ニール・ヤングが自身の楽曲を引き上げるという発表をしました。すでに現在ではSpotify上で実際に彼の楽曲が聴けなくなっているようです。(2021年1月末現在)
また、その後に(ヤングの友人でもあり同じくカナダ出身の)ジョニ・ミッチェルも、ヤングに連帯の意思を示して楽曲引き上げの意向を示しているようです。

今回のヤングの表明に関してはかなり多くのメディアが詳細を伝えています。このBBCの記事などが比較的くわしいと思います。(こちら

今回のニュースを受けて全世界で(そして日本でも)SNS上では「ヤング良くやった」「Spotify解約した」と言った意見をかなり多く読むことができます。

青、もしくは赤

ニール・ヤングは、Spotifyの世界で最も人気のあるポッドキャストとも言われる「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」について問題視していて、この番組に(一部では陰謀論者と呼ばれている)米ウィルス学者、ロバート・マローン博士を出演させたことについて厳しく批判をしているようです(この放送回はYouTube版もあるのですが、そこではYouTubeのガイドラインに抵触して削除されたとのこと)

このマローン博士は以前からワクチンの安全性に疑問を投げかけており、副作用やワクチンの承認プロセスの問題点についての多くの事実誤認を含む発言が、たびたび問題になっているそうです。

彼はアメリカにおける新型コロナに対する反応を「集団催眠」(mass formation psychosis)と呼び、「まるでナチスを熱狂的に迎えたドイツ国民のようだ」と言ったりも。
ちなみにこの「集団催眠」という言葉は医学用語でもないのですが、エリック・クラプトンも引用していたり(こちら)と、ワクチンに否定的な人にかなり浸透しているようにも思います。

マローン博士はもともとはmRNAの研究者だったそうですが、「自分がmRNAワクチンの開発に果たした功績が過小評価されている」という主張もしており、(mRNAワクチン開発の1番の功労者とされる)カリコー・カタリン氏を非難するメールを送ったりもしてるらしいです(英文ですがこちら

まあいろいろ問題のある人であることは確かなようですね。

そもそもアメリカでは、新型ワクチンの存在に否定的で実際にワクチン接種を拒否する人って日本よりも多い気はしますね。
NFLのアーロン・ロジャースやNBAのカイリー・アーヴィングといったスター選手もワクチンを打たないことを表明し、その事でかなり非難されたりもしていました。

アメリカでは、特に新型コロナが猛威を振るった時がちょうど大統領選と重なったことで、コロナ対策が民主党にとっては共和党(トランプ)陣営を攻撃する材料になってしまい、それに反発した共和党支持者はことさら新型コロナを大したことじゃないと過小評価していたことも影響していると思います。

こういう話を聞くと「あー、トランプ支持者ってホントしょうがないな」と思うかもしれないですが、自分はあまりそういう印象は持っていなくて、イデオロギーの対立があるときには、いろんな意見の振り幅の中でこういう極端な主張もとうぜん出てくるのかな、と。

日本でもこれに近い話はいくらでもあって、例えば菅首相が福島原発のALPS処理水を放出するという方針を打ち出したときに、科学的な根拠のないデマや不安をあおる意見が(時には大手新聞から)飛びかったのはごく最近の話です。

ダニエル・エクという男

SpotifyとそのCEOのダニエル・エクという人物は、これまでも様々な批判にさらされてきました。

これもつい最近のことですが、軍事企業のヘルシングに1億ユーロの投資をしたことで批判を浴びたりもしています(こちら

それにしてもダニエル・エクの言動を見ていると、なんとなくテスラCEOのイーロン・マスクを思い起こしますね。

大企業のCEOなので当然かもしれませんが、利益優先で現実主義。
自社サービスのユーザーのことはあまり眼中になく、基本的には投資家がどう思うかといった点にしか興味なさそう。

彼の言いたいことは言うスタイルが、世間からは「パブリック・エネミー」だと印象づけている感じです。

ただ彼が受けてきた批判は、別に法律に違反しているわけじゃないし、的外れなバッシングも多かったかも。

例えば、日本でもかなり流布している「Spotifyは1曲あたりの支払額が低い」という批判は明らかなデマでもあります。
これは総再生数が多いので1曲あたりの支払い金額が薄まっているだけ。詳しくは過去記事(こちら

いずれにしても、彼のように普段から世間からの批判にさらされてそれをスルーしていると、今回のようなガチめのバッシングが来てもすでに耐性ができてしまっている感じです。

ビジネス・イズ・ビジネス

Spofityは、今回問題となった「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」の独占配信権に1億ドル(約113億9000万円)を支払ったそうです。
これはかなりの大金で、Podcastを成長戦略の大きな柱と考えるSpotifyの目玉コンテンツとして考えていたことがうかがえます。

それに対して、ニール・ヤングとジョン・ミッチェルの楽曲のストリーミング全体に対する再生回数の割合はごくわずかであり、たとえ2人が楽曲を引き上げると言っても、Spotifyがジョー・ローガンの放送をを止めることはおそらくないでしょう。

これはもう純粋に経営的なビジネス判断の話になってきているのだと思いますね。

ヤングの要求を受け入れることで、株価はどうなるか、契約者数はどれだけ減るのか、などなどを検討した結果だと思います
(ちなみにこの騒動の後に、Spotifyの株価は、時価総額にして約20億円分も下がったそうですが)

キャンセルカルチャーの功罪

今回の件でのヤングの行動は、
「著名人の言動に批判を行い、地位や権威を剥奪するように本人の所属機関に要求するような振る舞い」
であり、キャンセルカルチャー案件のひとつとも言えます。

キャンセルカルチャーは、弱者の持つ異議申し立ての手段として社会からその価値は認められつつも、その反面さまざまな問題点をはらんでいます。

今回の件に限って言えば、ジョー・ローガンようにオープンの場で不適切な発言を行った場合、(訂正・撤回を受け入れないなら)親会社が番組自体を辞めさせても良いのか、といった処分の妥当性の問題

他にも、批判の対象が発言を行ったローガン本人だけではなくSpotifyに批判が向いているという対象範囲の問題

またその批判がSpotifyやそのユーザーへの誹謗中傷になりかけている、いわゆる「正義ポルノ」の問題

キャンセルカルチャーの影響は常にメリットとデメリットを含むこともあり、ニール・ヤングの行動は「さすが、見直した」と手放しで歓迎するべき話でないと思います。

もし音楽ファンによる今回のアクションでジョー・ローガンをキャンセルできたとして、次に予想される反応は「エリック・クラプトンの曲は削除しろ」であり、さらには「共和党支持者のミュージシャンは全部削除しろ」といった反応じゃないでしょうか。
(近い話では、複数の女性や少年少女への性的虐待で有罪となったR・ケリーに対しても同じようなキャンセルアクションが起こりましたし)

「そんなのは飛躍しすぎ」と思われるかもしれませんが、自分には「ジョー・ローガンをキャンセルしろ」と「共和党支持者はキャンセルしろ」は地続きに見えるし、今回の音楽リスナーの反応は、そういう過激な方向に向きかねない危ういものだったとは思います。

Anything but Spotify(Spotify以外なら何でも)

今回の件を受けて、「SpotifyがなくてもApple Musicがあるじゃないか」という意見をSNSで良く見かけます。AmazonやYouTube Musicは代替え案としてはあまり現実的ではないようです。

実際にApple Musicに乗り換えたという人も見かけたのですが、ちょっと待ってほしい。

Appleだってトランプ氏の元側近のスティーヴ・バノンによる、(Foxニュースを過激にしたような)ポッドキャスト「War Room」をホストしているじゃないですか。

こういう話になると、音楽ビジネスにおいてAppleが聖人だったことなんてあったのか?という、そもそもの疑問も湧いてきます。

かつては「ミュージシャンとレコード会社がCDをリリースしそれをユーザーがレコードショップで買う」という、シンプルで(少なくともアーティストにとっては)今よりずっと幸福をもたらしていた音楽業界のエコシステムが存在していました。

その楽園を破壊したのはmp3を広めたiPodであり、著作権を無視したNapsterだったはず。

音楽リスナーにとっては、スティーブ・ジョブスもダニエル・エクも、なんならジェフ・ベゾスも「全員悪人」ですよ。
(「Appleにもうジョブスはいない」という事実が気休めになるなら、それを採用しても良いとは思いますが)

そう考えるとCEOの人柄や企業の姿勢でストリーミングサービスを選ぼうとすることは、どうしても「誰が/どこがいちばんマシなのか」という話になってしまいそう。
まるでロクな候補がいない地方選挙で義務として投票先を決めなければいけないような気分になるし、はっきりいってあまり楽しい作業ではないと思います。

今回の騒動のあとに、Apple Musicは、プッシュ通知でニール・ヤングの楽曲を宣伝し、「We Love Neil」と「We Love Joni Too」という公開プレイリストを作成した。
かつてのAppleがCMで競合会社であるWindowsをネタにしたのと同じだと思うのだけど、今回のような案件に絡められると、見ていてあまり気分の良いものじゃないです。

これまでも「Spotifyはアーティストへの支払いが少ない」という世間の非難に乗っかって、Apple社はSpotifyを攻撃してきた。「アーティストへの公平な分配を求めるなら我が社へ」とAppleはいろんなメディアを使ってアピールしてきました。
実際のところはアーティストへの分配は各社ほぼ横並び(売り上げの3割)であり、Appleのああいうネガキャンは不当だし「品がない」とは思うんですよね。

踏み絵

今回の件はSpotifyがこれまで受けた批判の中ではかなりのインパクトがあったと思いますが、その余波はどこまでの範囲なのかは今のところよくわかりません。

いちばん考えられる事としては、アーティストや著名人に「踏み絵」を迫る事くらいでしょうか。

例えば、テイラー・スウィフト、ハリー・スタイルズ、ビリー・アイリッシュとか、特にSpotifyの収益に大きく寄与しているメジャーアーティストに対して「あなた達はSpotifyから楽曲を引き上げないのか」とファンが詰め寄る姿はたやすく想像できます。

実際のところ今回の件は「保守 vs リベラル」「共和党 vs 民主党」といった政治的な色合いも帯びているので、トランプ不支持を打ち出したようなアーティストは、この件にもスタンスを明確にする必要はあるのだと思います。

Spotifyから楽曲を引き上げることは、ほぼノーリスクのトランプ大統領批判とはわけが違ってアーティストにとっては痛みを伴うのですが、だからこそメジャーアーティストの主張に説得力が出るはずですから。

ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)、さすがにスルーは許されないんじゃないかな。

今回の件が、誰の何のアクションも引き起こさず、Spotifyの長い炎上リストに新しく項目が付け加わるだけで終わり、時価総額も程なく元に戻って、でもヤングとミッチェルの音源は削除されたまま、という未来はさすがに悲しすぎるとは思います。

それでもSpotifyを削除してくれない人たちへ

どうでしょうか?
ここまで書いたらSpofityユーザーはアカウントを削除してくれる気になったでしょうか?

正直、このブログを読んで「削除しよう」という人もいるかもしれませんが、「別にそのまま使い続けるよ」という人もいるのだと思います。

ただその一方で、そもそも現実的な話として音楽ユーザーがSpotifyにこだわる理由はほとんどないはずです。

ストリーミングサービスはコモディティ化(汎用品化)していて、ほとんどのユーザーは検索ボックスにお気に入りのアーティスト名を入れて、そのアーティストのアルバムを聴くだけだと思います。
サービスごとにライブラリの充実度に差はありますが、それも些細な違いでしょう。

確かに今回のジョー・ローガンの件からも分かるように、近年のSpofityはポッドキャストに力を入れており、それはSpotify Japanにも同じことが言えます。
英会話番組などで利用している人もいるのかもしれませんが、少なくともSpotify Japanのの音楽関係のポッドキャストで、聴くべき番組はただのひとつもないと言ってよいです。
これは断言しても良いです。

サービス乗り換えはプレイリストを作り替えるのが面倒だという人もいるかもしれませんが、プラットフォーム 間でプレイリストを共有できるようなSongShiftといったようなアプリもあるらしい(こちらに詳しい)。
そうでなくても休日の数時間を使えばなんとかなる話でしょう。

今回の件はSpotifyが受けてきた批判では近年では最も大きなもので、ここまでたくさんの「Spotify解約した」「みんなも解約しよう」という声があがったのは記憶にありません。

すでに「Spotifyユーザーであること」がネガティブな色味を帯びてきており、Spotifyユーザーは喉元に刺さった魚の骨のようにずっと今回の件の後ろめたさを抱えていく必要がありそう。
「いやいや、たかがサブスクアプリの話だからw」と思う人はそれはそれで幸せだとは思いますが。

今回の件について思うところのある人は多いと思いますが、知らぬ存ぜぬでは済ませられないし、何かしらの態度を決めることを迫られているのだと思います。

「サイは投げられた」ということなんですよね。

でもそのサイを投げたのは、Spotifyでもニール・ヤングでもなくわたしたち音楽ファン自身でもあるのです。

追記

あ、私は以前からApple Music ユーザーで、このまま継続の予定です

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