今回は、UKの雑誌Songlinesの新作レビューで知ったコカーニャのアルバム『Puput』の紹介
コカーニャ(Cocanha)というグループは、パーカッションのみをバックに南フランスのオクシタンシア地方の伝統音楽を(現地のオック語で)歌う3人の女性によるコーラスグループ。
コーラスやクワイアの伝統は世界中にさまざまなスタイルがありますよね。
このブログでも取り上げたブルガリアのトリオ・ブルガルカなどもそうですし、RealworldからアルバムをリリースしたTenores di Bitti、メキシコのMuna Zulなどなど、聴くべき音楽はたくさんあります。
そんな中でも、南フランスは特にこういったコーラス+パーカッションの伝統があるらしく、このコカーニャもそういう伝統音楽を現代的なスタイルで歌うグループのひとつです。
ちなみにフランスには他にもSan SalvadorやLa Mal Coiffee、Barrutといった多くのコーラスグループがあり、Womexなどのワールド系フェスなどで活動しているみたいですね。
で、このコカーニャはというと、微妙に東欧を思わせるような不協和音をうまく取り入れたコーラスもあれば、各メンバー間の言葉遊びのかけあいのような展開もあり、教会で歌われる荘厳な雰囲気の他のグループとはかなり違ったオリジナリティがありますね。
聴きようによっては(例えがマイナーですみませんけど)吉田達也さんのZubi Zuvaみたいな雰囲気もあるかも。
このグループのもうひとつ特徴としては、パーカッションの使い方が印象的ということですかね。
楽器以外の物もパーカッションとして使い、その音をさりげなく音響加工することで全体のまとまりを生んでいるところですね。
ヴォーカルの3人が歌いながら叩いているのですが、専門ではないので決して上手な演奏ではなく、ミキシングの技術と音選びのセンスで勝負しているみたい。
これがもしプロのフレームドラム奏者などがメンバーにいたとしたら、演奏のレベルはあがってもいまのコカーニャのようなオリジナリティと良さは出ないのかも。
まあ、単にプロのパーカッショニストを雇う金銭的余裕がないだけかもしれませんけど。
彼女たちはPVらしき動画も公開しているのですけど、かなり手作り感覚溢れるというか、まるでスマホで撮った動画を自分たちで編集したようなチープな作りのようです。
「さすがにYouTubeに音源あげるのに動画なしはマズいかも」くらいのノリで作ってる?
まあこういう面を見ても、おそらく彼女たちはワールドワイドに成功しようという気なんてさらさらなく自分たちのコミュニティへ向けて良い音楽を届けようとしているだけなのですよね。
もともとこういう種類の伝統音楽はすごくパーソナルな音楽で、たとえば家事をしながら歌ったり酒場盛り上がった時にみんなで歌ったり、自分の知り合いの間だけで歌われる音楽だったのでしょうし。
そういった伝統音楽が彼女たちみたいなコマーシャルな成功とは無縁の活動を通して受け継がれていくのってすごく貴重だし、それを遠く日本から聴けるということも幸せなことですね。