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ヴィジェイ・アイヤーのピアノアルバム・ブラインドテスト

前回マイルス・オカザキのブラインドテストがSNSにポストされていて、紹介ブログを書いたのですが(こちら)、これってDownbeat誌でかなり昔からある企画だったみたいですね。全然知りませんでした。

過去のレジェンド級のミュージシャンもこの企画に挑戦しているようです(オーネット・コールマンとか)

紹介されているアルバムを聴いてみる良いきっかけにもなるので、音源を聴きながら記事を読むと楽しいですね。それにしてもこういう時にサブスクは役に立ちます。

今回はヴィジェイ・アイヤーが2018年に行ったブラインドテストの紹介。元記事はこちら

この時にテストに使われた曲はこの曲たち
(ティグラン・ハマシアンのみSpotifyには無し)

Cecil Taylor “Pots” / アルバム『Mixed』

Cecil Taylor(piano), Jimmy Lyons(alto saxophone), Archie Shepp(tenor saxophone), Henry Grimes(bass), Sunny Murray(drums)

これは当てちゃうけど、セシル・テイラーの“Pots”だ。“Bulbs” と “Mixed.”という曲も収録されているホットなアルバムだよ。

今年(2018年)の4月にはセシルは亡くなってしまった。彼は私に最も影響を与えたピアニストだよ。もう大ファンなんだ。会って少しだけ知り合うことができたのだけど。

彼のピアノの前のアクションを見てたくさん学んだよ。彼のソロは大好きだけど、このアルバムみたいに60年代のアンサンブルも好きだ。
これは彼が無くなった後にFacebookに投稿したのだけど、私たちはセシルの音楽を十分には理解しきれていないと思う。彼からはもっと学ぶべきことがあるんだ。

頭の固い人は「セシルはフリージャズだけを演奏していた」と言うけど、彼の音楽は緻密な規則(システム)について教えてくれている。
この曲のオーケストレーションされたポリリズムパートが良い例だよ。アンサンブルの中でのセシルのプレイはとても秩序だっている。全てがフリーという訳じゃない。でも不思議とシンクロしている。
みんながセシルの音楽をちゃんと理解しているとは思えないな。これから何十年もかけて彼の演奏をリサーチしたいと思っているよ。
彼の偉業をみんなが賞賛するけど、彼は偉大なコミュニケーターなんだ。彼の音楽はただのフリージャズじゃない。20世紀の偉大なアーティストの1人だよ。

Erroll Garner  “You Do Something To Me”  / アルバム『Closeup In Swing』

Erroll Garner(piano), Eddie Calhoun(bass), Kenny Martin(drums)

星9つ半。最初はオスカー・ピーターソンかと思ったけど、彼にしては生々しいね(Too raw)
エロール・ガーナーかアール・ハインズじゃないかな、という気もしてきたけど、この生々しさはエロールかな。とてもエモーショナル、グルーヴはとてもディープだ。

エロール・ガーナーがコール・ポーターの“You Do Something To Me”を表情豊かに演奏する様はとてもナチュラルだね。
オリジナルに無いような編曲はしていないね。足をタップしながら曲を聴いていたのだけど、イスから腰を浮かせるようなこのアップビートは良いね。セシル・テイラーかセロニアス・モンクのようなライブ感だ。

エロール・ガーナーが「ミスティ」のようなスイートな曲をプレイする時でも、彼はブルースフィールを曲にのせるだろう。彼は音楽学校で教えたりはしないだろうけど、エロールの音楽は人生そのものなんだよ。

Tigran Hamasyan “Shogher Jan (Dear Shogher)”  / アルバム『Red Hail』

Tigran Hamasyan(piano, keyboards), Ben Wendel(reeds), Sam Minale(bass), Nate Wood(drums).Areni Aghabian(vocals)

(即座に)ティグラン・ハマシアンだ。
彼のことはかなり前から知っていて、彼がモンク・コンペティションに優勝したくらいの時にレッスンをしたことがある。ちょうど彼が、彼自身のバックグラウンドをアメリカン・ミュージックに昇華させようとしていた時期だね。
彼の音楽は文化のハイブリッドだ。ただ安易なハイブリッドは止めるよう彼にはアドバイスしたよ。民族音楽メロディーをハーモナイズすると台無しにしてしまうこともあるから。
「メロディーはキープして、(ハーモナイズよりも)もっと興味深い演奏を行うべき」と言ったよ。

ティグランが本当の意味で評価されるようになったことは素晴らしいことだよ。彼はピアノを操るのが本当に上手いんだ、セシル・テイラーやエロール・ガーナーみたいに。
彼はヴァーチュオーゾだ。アゴが落ちるほどのピアノラインを演奏するし。

彼は他のプレイヤーとも、特にドラマーとヴォーカリストと上手く共演しているね。特に私の友人でもあるAreni Aghabianとね(彼女は正確なピッチとクリーンな声を持つ素晴らしいシンガーだ)

この曲はティグランが到達した素晴らしい成果だよ。

Fred Hersch Trio “Skipping” / アルバム『Live In Europe』

Fred Hersch(piano), John Hébert(bass), Eric McPherson(drums)

これは誰だろう?まったくわからない。オープニングのコンポジションは好きだね。
対位法とハーモニーが次にどう展開していくか興味深い。

でもソロパートは、曲を形作ることができていないようだ。左手の8度の音と、右手のソロは他の多くのピアニストと同じように聴こえるね。
もっとピアノをフルレンジで演奏してどうなるかを聴きたいな。あとはドラムとのインターアクションをもっと細かく聴いてみたい。自分にとってはそれこそがジャズの核心部だと思っているからね。
この曲ではドラムはより装飾的なプレイだね。

(答え合わせ後)
あぁ、この曲はフレッドだった? それならもう自分にはこれ以上何も言えないな。彼はピアノのマスターだよ。この作曲はすごく好きだ。あとでもういちどチェックしてみるよ。

Misha Mengelberg “Four In One” /アルバム『Four In One』

Misha Mengelberg(piano), Dave Douglas(trumpet), Brad Jones(bass), Han Bennink(drums, percussion)

モンクの“Four In One”、ドラムはアンドリュー・シリルみたいだ。シンバルがそう思わせる。シリルはヨーロッパのミュージシャンともたくさん共演している。

ピアニストが誰かわからないけど、想像力豊かなプレイヤーだね。良くモンクの曲はタイムとハーモニーをバラバラにされるのだけど、彼はグルーヴとリズムとハーモニーをうまく処理している。

この曲は最初好みだと思ったが、リズムセクションは少し停滞させられているみたいだ。このピアニストはモンクのフィールに付いたり離れたりしているみたいだ。

(答え合わせ後)
ドラマーはハン・ベニンク?じゃあピアノはミシャ・メンゲルベルグか。この曲はマスター(モンクのこと)へのリスペクトだね。彼はシリアスには考えていないだろうけど、でも重要な音楽をプレイしていることはわかっていると思うよ。

いちどミスター・メンゲルベルグとデュオ演奏をお願いしたことがあるんだ。その時は「たぶん5分くらい演奏したら帰るよ」と言われたのだけど、
でも結局は45分もデュエットしたんだ。たぶん私のことを嫌っていたんじゃないと思うよ。素晴らしい経験だったよ。

Geri Allen “Portraits And Dreams” / アルバム『Timeless Portraits And Dreams』

Geri Allen(piano), Ron Carter(bass), Jimmy Cobb(drums)

この演奏、もっと続きが聴きたくなるね。誰の演奏だろう? 素晴らしい曲だけど、ストレッチアウトするスペースはないね。

ジェリ・アレンかな?”Timeless Portraits And Dreams”からの曲?このアルバムは持っているんだよ。4ヶ月前に聴いたんだ。この曲をどう発展させるか聴きたかったね。短いエピソードみたいな曲だ。

彼女と彼女の音楽を知ってもう30年以上になるけど、知れば知るほど虜になるよ。もっと聴きたいという気にさせる。
彼女の曲を聴いていると、彼女はまだ亡くなっていないという錯覚に陥るね。人生の最期に、ジェリは豊かな音色とリズムの高揚感で悲しみを表現していた。
この曲から彼女の強さを聴くことができる。早すぎる死だった。

Sylvie Courvoisier  “Eclats For Ornette” / アルバム『D’Agala』

Sylvie Courvoisier(piano), Drew Gress(bass), Kenny Wollesen(drums)

これは誰だろう?冒頭はすごく好きだ。メロディーとスパイラルが良いね。リズムセクションも良い。バンド全部良いね。

これは女性?男性?
とてもオープンマインドだ。スタジオレコーディングの短いテイクだけど、どういう展開になるかもっと聴きたいね。

(答え合わせ後)
あぁ、これはシルヴィー?彼女は知ってるよ。マーク・フェルドマンとのデュオを昔のニッティング・ファクトリーとトニックに聴きに行った。

この曲の少し乱れた感じが引き込まれるね。彼女は曲をパーフェクトに仕上げることには興味は無さそうだ。
彼女は活発なインプロヴァイザーだね。彼女の演奏はすごく好きだし、このアルバムもすごく楽しめたよ。

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