アラブ音楽 × サイケ・ロックAl Qasar

ヒゲ、サングラス、革ジャン、長髪。

テストステロン満載でマッチョな「まだこんな風貌のミュージシャンいるんだ?」と思わないでもない、「男のロック」を感じさせるバンド、アル・カサル(Al Qasar)のデビューアルバム『Who Are We?』

フルアルバムをリリースしたばかりですが、2022年のWOMADフェスに出演するなど、すでに注目を浴びる存在となっているようです。
このアルバムは(みんな大好き)Transglobal World Music Chartの2022年10月版のチャートで、初登場1位となっていました。

日本盤のライナーには

「もはや向かうところ敵無しのキング・オヴ・ワールド・ミュージック・レーベル“Glitterbeat”から、本年最高に注目すべき中東音楽のグループが登場しました」

という紹介がされていました。

Glitterbeatが「向かうところ敵無し」かというとはなはだ疑問なのですが、Altin GunとかGaye Su Akyol、またこのブログにも投稿してAvalanche kaitoとか、トラディショナルな民族音楽というよりもミクスチャー系のバンドが多いレーベルのようです。

それにしても、Transglobal World Music ChartはGlitterbeatレーベルに対して採点甘い気はしますね。

Al Qasar

Al Qasarは、アメリカ西海岸でバンド活動やスタジオエンジニアをやっていたトマ・アタール・ベリエ(Thomas Attar Bellier)を中心に結成されたグループ。ベリエはギターやエレクトリック・サズを担当しています。

彼がフランスのバルベス地区に移り住んだ後に、モロッコ人ボーカリストのジャウアッド・エル・ガロウジなどアラブ系のミュージシャンを集めて作ったのがアル・カサル。
ヴォーカルは固定という訳じゃなくてゲストヴォーカリストによる曲もありますね。

音としてはサイケ・ロック、ガレージ・ロックをベースにアラブ楽器やアラブヴォーカルがミックスされる、という感じ。

こういう感じの、押しの強いベースとドラムの音とアラブメロディーの組み合わせというのはありそうであまりなかったと思うので、レアというか新鮮な響きですね。

ベリエ本人がインタビューで答えているように、エレクトリック・サズーやギターのファズトーンが多く使われていて、その歪みと不安定なピッチでズルナやミズマルのような効果を出すなど、細かいところは良く考えられているなあ。

トマ・アタール・ベリエの西海岸時代のツテで、リー・ラナルド(ソニック・ユース)やジェロ・ビアフラ(デッド・ケネディーズ)が参加していますね(純粋にゲストで別にどうということはないのですが)

と、いう訳でTransglobal World Music Chartでデビューアルバムが初登場1位ということでアルバムを聴いてみました。

「うーん、確かにこれはカッコ良いし売れそう」と思う反面、例えるなら「アラブ世界の外からみたアラブ音楽」という感じで、若干カリカチュアされているアラブ音楽だな、とも思いましたね。

Al Qasar

Thomas Attar Bellier: electric saz, guiters, keys
Jaouad El Garouge: vocals, awtar, karkabou, tbila, bendir, claves, caxixi, cowbell
Guillaume Théoden: bass, sub bass
Nicolas Derolin: darbuka, daf, bongos, bendir, shakers, saget
Paul Void: drums