えー、今日ウェブを見ていたところ、ダウンビート誌の2020年批評家投票が発表されていました。
今日のブログはその投票結果を読んだ感想ですね。もう完全に雑談です。
ダウンビート 2020年批評家投票
2020年の投票結果はこちら
誌面上では詳細なランキングなども読めるようですね。ウェブ版では投票の1位のみです。
2020年の投票結果なので、2019年後半~2020年前半の活動により判断されています。
ちなみに去年2019年の批評家投票の結果ですが、総合2部門については
Jazz Artist: Cécile McLorin Salvant
Jazz Album: Wayne Shorter 「Emanon」
という結果でした。2019年以前の投票結果については以前のブログでも感想を書いています(→こちら)
で、肝心の今年2020年の投票結果ですが、
Jazz Artist: Terri Lyne Carrington
Jazz Album: Terri Lyne Carrington & Social Science「Waiting Game (Motéma)」
ということで、ドラマーのテリ・リン・キャリントンが総合2冠を獲得という結果でした。
Social Science is:
Terri Lyne Carrington (Ds, Per, Vo)
Aaron Parks (P, Key)
Matthew Stevens (guitar)
Morgan Guerin (Sax, EWI)
Kassa Overall (MC, DJ)
Derrick Hodge (bass)
Nicholas Payton (tp)
Esperanza Spalding (bass)
その他大勢….
テリ・リン・キャリントンのこのアルバムはリリースされた当時は豪華メンバーということもあって話題になっていましたけど、正直あんまり「自分が好んで聴くアルバムじゃないな」とは思っていました。
ジャズというよりも、R&Bというかブラックミュージック寄りですし。
ただロバート・グラスパー以降(笑)、こういうアルバムは流行りというか無視できない潮流ということなのでしょうかね。
キャリントンは近年ではミュージシャン活動よりも、ジャズの教育機関である「IAJE」での教育者としての活動や、女性ジャズミュージシャンの権利向上といったアクティビストとして知られているのかもしれません。
2011年にアルバムもリリースしたMosaic Projectや2013年くらいのGeri Allen、Esperanza Spaldingとのツアーなどが最もわかりやすい例ですね。
そういった活動は評価されてしかるべきだと思いますけど、それとリスナーとしてのアルバムの評価は別ですしね。
そういった活動の印象が強いため、キャリントンの音楽は(特にリベラル寄りだと感じるダウンビートからは)過大評価されている気はしています。
その他投票結果
アルトサックス部門;ルドレシュ・マハンサッパ(Rudresh Mahanthappa)
これはうれしい。アルトサックスは他の楽器と比べても絶対王者みたいなミュージシャンはいませんね。
2020年にリリースした「Hero Trio」はおそらく評価に入っていないと思うので、アルバムの評価というよりも現時点でのミュージシャン本人の評価で選ばれたということなのでしょうね。
「Hero Trio」について過去に書いたブログにも書きました。
ピアノ部門はKenny Barron とKris Davis(同票で首位)
それにしてもダウンビート誌のケニー・バロン好きは異常ですね。他の雑誌ではさすがにこういうところにケニー・バロンの名前は出てこないと思います。
クリス・デイビスは2019年リリースの「Diatom Ribbons」の評価が高かったということなのでしょうね。
ギター部門:Mary Halvorson
ハルヴォーソンも2019年は主だったアルバムのリリースは無かったのですが、その中での受賞。
ハルヴォーソンは(ダウンビートの評価的には)ギターの第一人者とみなされてきていますね。もう常連です。たとえばクラリネットのAnat CohenとかフルートのNicole Mitchellのような感じ。
それにしても、ハルヴォーソンはオリジナルアルバムを早くリリースしてほしいですねー(ジョン・ゾーンのBagatellesはまだ?)
パーカッション:Zakir Hussain
いきなりザキールジーが入ってきていますけど、ダウンビートの批評家投票にパーカッション部門なんて無かったような、、
まぁこの選出はこれはクリス・ポッター、デイブ・ホランドとのトリオでのアルバム「Good Hope」を意識しての選出でしょう
「Good Hope」リリース後のブログ投稿はこのアルバムについてはこちら
ライジング・スターたち
2020年は特にその傾向が強かったですが、批評家投票はその年に目立って活躍した人というより、今のジャズシーンでの第一人者を選ぶという意味合いが強いように思います。
そうするとどうしても同じ人がずっと受賞しちゃう。1年でミュージシャンの実力の順列が大きく変わることって無いですし。
そういう意味では「今年活躍した人」ということを知りたい場合はライジングスター部門を見る方が良いのかも。
2020年のライジングスター部門ですが、目立ったところでは
Rising Star–Jazz Artist: Shabaka Hutchings
Rising Star–Jazz Group: Shabaka & The Ancestors
シャバカ・ハッチングスが2020年3月にリリースした『We Are Sent Here by History』が評価されての選出ということなんですかね。
うーん、ゴー・ゴー・ペンギンズとかもそうなんですが、個人的にはUKジャズというのにあまり馴染めないので「そうですか、、そうなんですか、、」という印象なのですが。
他に目についた結果としては
Trumpet: Jaimie Branch
Organ: 敦賀明子(Akiko Tsuruga)
Guitar: Lage Lund
Bass: Ben Street
Drums: Makaya McCraven
Flute: Anna Webber
Female Vocalist: Veronica Swift
こういうところでしょうか。
2019年に活躍した人というと、ここに名前が上がっている人ということになるのかなと思います。ジェイミー・ブランチとか、ラーゲ・ルンド、アンナ・ウェバーとか。
そもそもみんなかなりのキャリアを積んでいるので、「ライジング・スター」という名称を変えた方が良いのかも、、
オルガンの敦賀明子さんはアメリカのウェブ記事でもたびたび名前を聞きますし、ジャズシーンで確固たる支持を得つつあるのだなと思いますね。
女性ヴォーカリスト部門ではVeronica Swiftが選ばれていましたが、彼女はハンコック・コンペで2位になった人ですね(1位はジャズメイア・ホーン)