『The Movers Vol 1: 1970-1976』

この『The Movers Vol 1: 1970-1976』というアルバムは(みんな大好き)Songlinesマガジンの新作レビュー記事で(こちら)紹介されていたアルバム。

1970年代を中心に南アフリカで活躍したバンドThe Moversのコンピレーションアルバムです。

The Moversは、1967年にノーマンとウパ・フロングワネというミュージシャン兄弟が中心となって結成されたグループ

サンキー・チュウニャン/Sankie Chounyane(オルガン)
ウパ・フロングワネ/ Oupa Hlongwane(ギター)
ノーマン・フロングワネ/Norman Hlongwane(ベース)
サム・タボ/Sam Thabo(ドラム)

このメンバーをベースに、曲によりヴォーカリストやコーラスが加わるようです。
参加ヴォーカリストのひとりであるブロンディ・マケネ(Blondie Makhene)は今でも現役なようで、音源も聴くことができますね。

彼らは最終的に約20枚のアルバムをリリースし、アパルトヘイト体制下の南アフリカで、初めて白人ラジオ局で曲が流されるなど、当時としてはトップクラスに人気のあったグループのようです。

バンドは1970年代半ばに頂点に達し、ソフィー・タペディが歌った彼らのヒット曲「ソウェト・イン」(今回のコンピレーションにも収録されています)にもは、アパルトヘイト政府への新たな抵抗を示す学生反乱と切り離せない存在となったそう。

ですが、1976年になると大手レコード会社が彼らの存在に目をつけ、結成当初にフロングワネ兄弟に楽器を買い与えバンドのマネージャとなったケネス・シファイ(Kenneth Siphayi)はグループの活動から締め出され、この年の終わりにはオリジナル・メンバーは一人も残っていなかったそうです。

つまりこのコンピレーションに納められている1970-1976年という期間は、The Moversという南アフリカの伝説的なソウルバンドである彼らの、オリジナルメンバーによる活動時期ということになりますね。
もしVol.2がリリースされるとしたら、それは全く別メンバーに変わった後の音源ということになります。

タウンシップ・ジャイブ

The Moversの音楽は「タウンシップ・ジャイブ」というカテゴリになるそうです。
wikiには「タウンシップ・ミュージック」の記事がありましたが、タウンシップ・ジャイブもタウンシップ・ミュージックも、ほぼ同じような意味だと思いますね。

簡単にいうと、ジャズやソウルなど西洋音楽の影響を受けた当時の南アフリカの都市型の音楽の総称のようです。

南アフリカの音楽としてムバカンバ(Mbaqanga)という名前はよく聞きますが、これも「タウンシップ・ミュージック」の1ジャンルなのだとか。

ただ、こういうカテゴリ分けは時代的・地域的な要素が大きく、あまり音楽そのものを表現したものじゃないと思いますね。

実際The Moversを聴いた印象としては、オルガンの音色が印象的な1970年代のソウルそのものです。例えとして1番わかりやすいのはStuffブッカー・T&ザ・MG’sかな。

なんといっても、ギター、オルガン、ベース、ドラムによるバシバシと決まるグルーヴ感が魅力です。なんというか「クセになる」音楽

アフリカ音楽にありがちな「気持ちいいサウンドは延々繰り返す」という伝統はこのアルバムでも受け継がれていて、ひたすらそのグルーヴに浸るためのアルバムといって良いかもしれません。

Analog Africa

このコンピレーションアルバムをリリースしたのはAnalog Africaというアフリカ音楽を中心にレア音源を発掘/復刻するドイツのレーベルです。

アフリカ音楽好きには有名なのかもしれないですね。わたしは今回初めて名前を聞きましたが。

このThe Moversの音源も、レーベル創立者のSamy Ben Redjebがムバカンバの音源を探している時に購入したカセットの中でたまたま見つけたのだとか。

世界の音源を探し回り、復刻してリリースする仕事は楽しそう。うらやましいです。