セロニアス・モンクの70曲
10月10日はセロニアス・モンクの誕生日だったそうで、彼を紹介するネット記事などがちらほらとアップされていました。
セロニアス・モンクは作曲家としても有名で、デューク・エリントンに次いで最も曲をレコーディングされた作曲家とのこと。しかもエリントンが1000曲以上のナンバーを書いているのに対して、モンクは書いたのはたった70曲なのに。
それにしても、そこそこの活動期間があって、ジャズの世界で最も偉大な作曲家と言われている割には70曲というのは意外に少ないですよね。
ギタリストのマイルス・オカザキさんが『Work Volumes 1-6 (The Complete Compositions Of Thelonious Monk)』というアルバムをリリースしていましたが、これは「モンクの曲を全曲ソロ・ギターで弾く!」というもの。
70曲のタイトルを眺めても聴いたことある曲ばかりという感じですよね。
今回、これまで聴いたことあるものも含めてトリビュートアルバムをいくつか聴いてみました。
V.A 『That’s The Way I Feel Now』
ハル・ウィルナーのプロデュースによるオムニバス・アルバム。
参加ミュージシャンなどはこちら
ジャズ・フィールド以外のミュージシャンの参加も多く、アレンジが斬新だったということで有名なアルバムですよね。
このアルバムは雑誌ダウンビートの批評家投票でも1985年の年間ベストに選ばれていました。
それにしても、このアルバムはCD盤だと1枚に収めるために曲がカットされているというのは、ひどい話ですね。CDだとジョン・ゾーンの曲がカットされて聴けないです。
しょうがないからわたしはLPを買って業者さんにCDにコピーしてもらうという面倒なことをしちゃいましたよ。
アルバムの印象派というと、まぁオムニバスだしどれもこれも名演というアルバムではないと思いますね。
その中でベストトラックはやっぱりドナルド・フェイゲンとスティーブ・カーンの『Reflections』かな。
T.J.Kirk 『T.J.Kirk』
Scott Amendola (drums)
Charlie Hunter, John Schott, Will Bernard (guitar)
セロニアス・モンクとジェームズ・ブラウンとローランド・カークの曲しか演奏しないバンド。いさぎよい。
ほぼお遊びではじめたプロジェクトだろうと思うのですけど、楽しすぎてアルバムを3枚も出しちゃったんでしょうね(とはいえ途中からカークの曲はあまりプレイしなくなるのですけど)
ドラムにギター3人という変則ですけど、チャーリー・ハンターがオルガンっぽい役割を担当しているので普通のオルガンカルテットのような印象。
Spotifyには『Talking Only Makes It Worse』というライブ盤しかないのですが、キレが悪くてあまり良い演奏とは思えず、スタジオアルバムを聴いた方が良いかも。
アップテンポでとにかくテンションのあがるアルバムですね。
MAST 『Thelonious Sphere Monk』
こんながCDあったんですね。生誕100年のタイミングで2017年にリリースされたアルバムみたい。
「カマシ・ワシントン、サンダーキャットらが活躍するLA・ジャズシーンで注目を浴びるMASTはティム・コンリーによるソロプロジェクト」のようです。
このアルバムは、普段だとおそらく自分のアンテナには引っかからないアルバムだと思うのですが、ピアノにBrian Marsellaが参加しているという事で聴いてみようと思いました(Marsellaは現在のTzadikではファーストチョイスピアニストなので)
ティム・コンリーはジャズ・ギタリストとしてのキャリアもあり、同じフィラデルフィア出身のMarsellaとは共演していた仲間だそう。地元愛。
曲のテーマとそれ以外のパートの印象が違いすぎる気がして、モンクの曲である必要性があまりないような気はするのですけど、キャッチーでなかなか聴いていて盛り上がるアルバムかも。
Steve Lacy 『Reflections: Steve Lacy Plays Thelonious Monk』
Steve Lacy (soprano sax)
Mal Waldron (Mal Waldron)
Buell Neidlinger (bass)
Elvin Jones (drums)
今回初めて聴きましたけど、有名なアルバムなのかな?
美しい名曲に美しいソプラノの響き。いわゆるオーソドックスなモダン・ジャズアルバムだと思うのですけど、こういうフォーマットの演奏は安心して楽しめます。エルビン・ジョーンズもおとなしめ。
Wynton Marsalis 『Marsalis Plays Monk』
ウィントンのこのアルバムも初めて聴きますけど、「ウィントンにはモンクの曲はこんな風に聴こえてるんだ」というのが第一印象。
シンプルで耳にしたことのある名曲が、ガラッと印象を変えて複雑で緻密な管楽器のアンサンブルにアレンジされています。
これまでと全く違ったカラーで演奏されていて斬新ですね。ウィントンにはわたしたちの聴けない曲の何かが聴こえているのかも。
そういうコンセプトだからなのか、ウィントンは全然吹いていないですね。ソロも抑えめでアンサンブルの中のひとりという感じ。
次のアルバムではジェリー・ロール・モートンを取り上げて、ひたすらノリの良いニューオリンズ音楽を演奏するのですが、この落差がすごいですよね。
アルバムのスタイルですら戦略的な気がしますが、そういうところがウィントンが(一部から)嫌われる理由なのかも、、