2015年にウィントン・マルサリス率いるJazz at Lincoln Center Orchestra (JLCO) はウェイン・ショーターのトリビュートコンサートを3夜に渡って行い、その時の模様は『The Music of Wayne Shorter』というタイトルの2枚組ライブアルバムとして2020年にリリースされました。
ショーター本人もゲストで参加しています(この時81歳)
収録された曲はすべてショーターによる作曲で、ショーターの作曲家としての側面にスポットをあてた作品と言えるかも。
もう81歳なのでかつてのようなサックスを吹けるわけではないですけど、
このアルバムは、ショーターにとって初のラージ・ブラス・アンサンブルによるアルバムですね。(『Emanon』(2018)では弦楽器オーケストラとの共演などもありますけど)
アルバム収録曲はこちら
オリジナル曲が聴けるプレイリストを作りましたので、聴いてくださいね(こういう時はサブスク便利)
1. Yes or No (from 1964’s Juju)
2. Diana (from 1975’s Native Dancer)
3. Hammer Head (from 1964’s Free for All)
4. Contemplation (from 1963’s Buhaina’s Delight)
5. Endangered Species (from 1964’s Atlantis)
6. Lost (from 1979’s The Soothsayer)※オリジナル録音は以前にあるかも、、
7. Armageddon (from 1964’s Night Dreamer)
8. The Three Marias (from 1964’s Atlantis)
9. Teru (from 1966’s Adam’s Apple)
10. Mama G (1959’s Introducing Wayne Shorter Quintet)
ジャズメッセンジャーズ時代と70年代くらいまでのソロ作を中心に、偏りなくいろんなアルバムから選んでいますね。
「Yes or No」「Endangered Species」「Armageddon」などは、一度聴いたら耳から離れないマスターピースだと思いますね。
ジョン・ゾーンはかつて「News for Lulu」でソニー・クラークやケニー・ドーハムなど、バップ期のミュージシャンの曲について再評価していましたけど、このアルバムのように曲に注目して聴いてみるとジャズミュージシャンにしか書けない曲ってこういう感じなのだろうな、と思うんです。
ウィントン・マルサリスのショーター評
このコンサートの前に行われたウェイントンのインタビューを読んでも、ウィントンのショーターへの評価はすごく高いですね。
「ウェイン・ショーターは最もハイレベルなジャズミュージシャンだ。誰も彼よりも高い位置に行くことなんてできないよ」
とも。
ウィントンは誰とでも共演する人じゃないし、同業のジャズミュージシャンに厳しい人だと思いますが、そのウィントンがもう最大級の賛辞ですね。
ウィントンは、マイルス・デイビスについては「マイルスはショーターやハンコックのプレイしている内容を理解できていなかった」みたいなことを言って辛口なのとは対照的ですね。(ウィントンはマイルスのライフスタイルが性に合わないだけかもしれないですけど)
このアルバムのライナーノーツはクリスチャン・マクブライドが書いているらしいのですが、ショーターの面白エピソードが載っているようです。
(ショーターは普段から発言が哲学的というか宗教的というか、なに言っているのか良くわからない人らしいのですが、、)
マクブライドがショーターと共演することになった時に、ショーターはリハーサルじゃなく、リドリー・スコットの映画「エイリアン」を共演者に観させたということです。
共演者みんな意味がわからず困惑していたのですが、映画でエイリアンが宇宙船乗組員の腹を食い破って出てきて金切り声をあげる有名なシーンが流れると、ショーターは立ち上がってVHSテープの一時停止ボタンを押し、「これ!こういう音がこのバンドに欲しい音なんだ!」と言ったとか。
マクブライドがどういう反応をしたかは興味ありますねー。
番外編:ブランフォード・マルサリス選によるウェイン・ショーター曲集
ウィントンによるアルバムがリリースされた後に、兄のブランフォードも雑誌でウェイン・ショーターのベスト曲集のプレイリストを公開していました。
ウェイントンとかぶっている曲もありますけど、ウェザー・リポートからマイルス・グループでの曲まで、たっぷり26曲、3時間のプレイリストです。