2020年ももうすでに2ヶ月も経とうとしていますね。
2020年にリリースされたアルバムの中で、ジャズのカテゴリで最もメディアで取り上げられた新譜は、ポストロックを代表するグループであるトータスのメンバーであるジェフ・パーカーのアルバム『Suite for Max Brown』じゃないかと思います。
このアルバムはジェフのお母さんに捧げられたアルバムということ(ブラウンはお母さんの旧姓)なのですが、父親に捧げた前作『The New Breed』と対になるアルバムとのこと。
ジェフが参加したトータスはいまだに多くの人に聴かれているいて、このアルバムもやっぱり人気というか注目度の高いですね。やっぱりロック/ポップスのリスナーの数って、ジャズとは桁が違うんだなと肌で感じます。
ただ自分自身は、いわゆる「シカゴ音響派」と言われるグループの音楽はいまひとつピンと来なかったんですよね(isotope217とか)「何が楽しいのだろう?」って。リアルタイムで聴いた訳じゃないですけど。
でもまぁ「シカゴ音響派」もはるか昔の話。
このアルバムではパーカーはギターの他にサンプラー、シーケンサー、シンセなど多くの楽器を自ら演奏しています。
ヴォーカル(パーカーの娘さんが前作に続き参加)やサンプリング音を効果的に使ってアルバム全体を通して緊張感を持続させることに成功しており、リスナーを飽きさせません。
母親が生きた時代へのオマージュなのか、時折聴こえる古き良きアメリカン・ブラック・ミュージック的な雰囲気が効果的に使われています。
曲ごとにいろんなメンバーが参加していますが、ドラマーとしてMakaya McCravenが参加しているのも話題ですね。
ジェフのギターも全く弾かないパートも多いのですけど、ところどころで効果的に使われています。
全曲パーカーの曲で、コルトレーンの「After The Rain」や、Joe Hendersonの「Black Narcissus」をモチーフにした「Gnarciss」という曲もあるようです。
ウェスト・コースト・ジャズ
このアルバムはInternational Anthemというのはシカゴの新興ジャズ・レーベル、McCravenは『Suits for Max Brown』をリリースした〈International Anthem〉というレーベルのレーベルメイトのようです。
ただ、パーカー自身は現在はロサンゼルスをベースに活動しているようです。
今も昔もジャズの聖地はニューヨークなのですが、西海岸を中心としたジャズシーンというのもかなり前から存在しているようなのですね。たとえば8弦ギタリストのチャーリー・ハンターとか、ドラムスのスコット・アメンドラなどはずっと西海岸で活動を続けています。
情報化のいまの時代、メディアの中心としてのニューヨークの重要性というのはそこまででもないのでニューヨークを離れていくミュージシャンも多いですね。
ニューヨークのジャズシーンはシリアスなスタイル、フリーフォームなスタイルに偏りすぎているし、ああいうエスタブリッシュメントな雰囲気を嫌うミュージシャンも多いでしょう。
単純に(地価の高騰など)ニューヨークが暮らしづらいということもあるのかも。
ジャズ・ギタリスト、ジェフ・パーカー
このブログを書きはじめたのは2019年の夏ごろなのですが、その初めての投稿はサンフランシスコを拠点とするオルガニストWill Bladesとドラマーのスコット・アメンドラの共演の話題でした。彼らも西海岸をベースに活動するミュージシャンなのですが、Will Bladesのライブでは、ジェフ・パーカーは良く共演しているようです。
ジャズギタリストとしてのパーカーの実力が聴けるフォーマットだなぁと思ってWill Bladesとの共演動画を観ていました。
ただ、ジェフ・パーカーは別に(いわゆるジャズ・ギター的なテクニックという見方で)ギタリストとしては「上手くない」のだと思いますね。たとえば同じくBladesと共演しているWill Bernardみたいなプレイができる訳ではない。
まぁBladesは(ギター無しの)ドラムとのデュオの演奏も多く、オルガントリオ編成でギタリストはあまりテクニカルなプレイは求めていないようですね。ギタリストにはエフェクターなどを使ったスペイシーなバッキングを演奏してほしいのかも。
ジェフ・パーカーが入ったオルガン・トリオも新しいサウンドでなかなか新鮮なのですけど、ライブという環境ではあまり効果的ではなかったような気はしますね。
こういうサウンドだとやっぱりスタジオ録音で聴きたい気はしますね。
Will Blades(org),Jeff Parker(g),Scott Amendola(ds)のトリオによるアルバムだったらすごく楽しそう