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シャバカ『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』聴いてみた

えー、まず最初に今回のブログ投稿ではアルバムについて批判的な意見も書いているので、そういう文章を目にいれたくない人はブラウザバックをお願いします

UKジャズの顔役(らしい)シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)が、シャバカ(Shabaka)と名前を変え、ソロアルバム『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』をリリースしました

パフ・ダディ(Puff Daddy)は、P・ディディ(P. Diddy)やディディ(Diddy)みたいに名前をコロコロ変えていますが、名前を変えると何か良い事あるんですかね?
サブスク上でアーティストが別々だと、アルバムも別々のページに分かれてちょっと不便な気もしますが、、

さてこの新作は、彼のこれまでの活動とはガラリと印象を変え、ニューエイジとスピリチュアル・ジャズを融合させたアルバムになっています

タイトルからして
”Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace” (美しさを感じ取り、その優美さを認めよ)
という「いかにも」な感じ

やはりシャバカは人気なのかこの『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』について書かれたレビューは多いのですが、そのほとんどでアンドレ3000のアルバム『New Blue Sun』との類似点をあげています

シャバカはアンドレ3000はお互いのアルバムに出演していましたし、他にもカルロス・ニーニョ、Surya Botofasina(アリス・コルトレーン一緒にアシュラムで育ち、アリスのアシュラムの音楽監督となったキーボード奏者)など、2枚のアルバムにともにクレジットされているミュージシャンは何人もいます

ジャズ的な楽器のソロを廃し、スペイシーなシンセ音を多用するなど、音の肌触りはかなり似ていますね

強いていうならシャバカのアルバムの方がボイスやドラム音など、ニューエイジ一色ではなくてバラエティがある音作りかもしれませんが、2枚のアルバムのインストパートをブラインドテストで聴き分けられるかというと正直なところ自信はありません

シャバカは、このアルバムリリースより以前の2023年末に、サックスを吹くことをやめてしまったそうです
このアルバムでもサックスは1箇所のみに使われているだけです

止めてしまった理由は、簡単にいうと繰り返しの稽古と激しいツアーによる燃えつき感(バーンアウト)だそうだ
年間数百ステージに立ち、ほぼ毎晩「Cold Sweat」を演奏するメイシオ・パーカーのような、そんな音楽活動はゴメンだということなのかもしれません

彼がサックスを止めて今作でフルートを使用したことについて、The Quietus誌では記事冒頭にこう書いていました

Pivoting to flute is on trend right now(フルートへの転向が今のトレンド)

この「トレンド」というキーワードは、自分もシャバカ・ハッチングスの活動を眺めていると頭をよぎることがありますね

もしかすると「UKジャズ」もある意味ではトレンドだと言えるかもしれません

トレンドは過ぎ去るものだし、「ジャズすぎる」サックスはもはや「トレンドではない」、とシャバカは考えたのかも

「UKジャズ」ではなく次は「スピリチュアルジャズ」
「サックス」ではなく次は「フルート」

そういう「トレンド指向」なイメージは、シャバカ・ハッチングスの他のグループ(Sons of Kemet, the Comet Is Coming, and Shabaka and the Ancestors)や、Ezra Collective、GoGo Penguinなどにも感じてしまいます

このブログでは、好みじゃない音楽についてはそうとわかるように割とはっきり書いているつもりですが、そこまで分量は多くないとは思います

そんな中で、このブログで批判的に取り上げた(数少ない)ミュージシャンであるFloating Pointsと、Andre 3000の2アーティストがこのアルバムに参加しているというのは、さすがに偶然とは思えないですね

Floating Pointsの『Promises』もアンドレ3000の『New Blue Sun』も、普通にこの2枚のアルバムを好きだという人もいましたが、議論を呼ぶアルバムだったのは確かだと思いますね
ジャズミュージシャンは、あまりこういう形で話題にはならない気がします

もしブラッド・メルドーがチャレンジングなアルバムを作ってその出来栄えに賛否が分かれることはあっても、この2枚のような「議論」を呼ぶことはなさそう

今回の投稿は、タイムカプセルのように5年後10年後に読み返すと面白いのかもしれないですね

Shabaka,Floating Points,Andre 3000もこれから何枚もアルバムを出していると思いますが、彼らの活動を振り返ってみて、今回取り上げたアルバムが「議論を呼んだけどいまだに聴くべき価値があるアルバム」というステータスを保っているのか、興味がありますね