パリで結成された ペルシャ伝統音楽を演奏する女性5人組 アティネ

今回は、ワールド系音楽を聴く人はみんな大好きTrans Global World Chartにランクインしていた、ペルシャ伝統音楽を演奏する女性オンリー5人組のグループ、アティネ(Atine)のアルバム『Persiennes d’iran』の紹介

アティネは2019年に結成されたグループということでまだグループの歴史は浅くて、このアルバムについてもwebにはあまり情報はない感じですね。
このアルバムは国内盤もリリースされているということで、国内盤の解説では(もしかすると)詳しいプロフィールが読めるのかも。

グループの結成の経緯を簡単に書くと、まずアティネのメンバーが初めていっしょにステージに立ったのは2019年のこと。モロッコの首都ラバトで開催されたマワジン・フェスティヴァル(Mawazine Festival)のステージです。
ペルシャ古典舞踊家のシャールフ・モシュキン・ガーラム(Shahrokh Moshkin Ghalam)が、自らのダンスの伴奏のために、パリを拠点に活動しているペルシャ音楽の演奏家を集めたことがきっかけ。

このマワジン・フェスティヴァルでのパフォーマンス動画もありました。

ペルシャ古典舞踊ってこういう感じなのですね。優雅な腕の動きと細かなステップはカタックに近いのかも。
これを観ると、ヒンドゥスタニ音楽も起源はペルシャにあるということが、ビジュアルではっきりわかりますね。

ちなみにマワジン・フェスティヴァルは、メインステージではトラヴィス・スコットやデビッド・ゲッタなどのポップスターが数万人を前にパフォーマンスするかなり大規模なフェスのようです。
全部で6つステージがあって、メジャー・マイナー含めたくさんのジャンルのミュージシャンが出演しているようです。
ちなみにこの動画と同じ日に、他のステージではカマシ・ワシントンと、スタンリー・クラーク・バンドが演奏したりしていました。

このフェス当時のアティネのメンバーは4人。
テヘラン出身のヴォーカリスト、アイダ・ノスラット(Aïda Nosrat)、
タール奏者でソルボンヌ大学で民族音楽も研究していたというソゴル・ミルザエイ(Sogol Mirzaei)
パレスチナ出身のカーヌーン奏者クリスティーン・ザイード(Christine Zayed)
パーカッショニストのサガル・ハデム(Saghar Khadem)
※このライブの後に、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のマリー・スザンヌ・ド・ロイエ(Marie-Suzanne De Loye)が新たに加わり5人組になっています

女性オンリーという編成はステージ映えを考えてのことですかね。

グループの顔であるヴォーカリストのアイダ・ノスラット(Aïda Nosrat)はAIDA & BABAKというユニットで活動しており結成当時は最も知名度のあるミュージシャンで、彼女が中心となってメンバーを集めたようです。
そのため、デビューアルバムとはいえ、他のメンバーもすでにローカルで長く演奏活動や音楽研究をしてきたテクニシャンのベテランプレイヤーたちばかりですね。

ちなみにAIDA & BABAKはフランスのAccords Croisésというレーベルに所属しているのですが、このレーベルの幹部がアティネの演奏を聴き、一回限りのライブで終わらせず自分たちのレーベルでデビューさせることにしたようです。
Accords Croisésって今回初めて名前を知ったのですが、カッワーリのFaiz Ali Faizや、ペルシャ古典ヴォーカルのAlireza GHorbaniといったけっこう有名アーティストのアルバムもリリースしているみたい。

『Persiennes d’iran』に収録されている曲は、19世紀末から20世紀初頭の歌謡曲をアレンジしたものが中心で、アリ・アクバル・シェイダやアレフ・ガズビニなどの著名人の詩が使われてるそうです。
ハデさはないですが、伝統に忠実というか全体的に落ち着いた良い演奏です。すっきりと淀みがなくて、個人的には中東の音楽はこういう感じの演奏が大好き。
個別の楽器でいうと、特にカヌン奏者のクリスティーン・ザイードが最も目立っていて、音楽的には中心的な役割なのかも。

アイダ・ノスラットさんの歌も、イラン古典のアクロバティックなヴォーカルテクニックをそこまで聴かせる訳でもなく、かなりポップスっぽい歌い方ですね。
彼女が参加しているAIDA & BABAKというユニットも、イベリア半島のミクスチャーポップっぽいグループなので、こういうサラリとした歌が彼女の持ち味なのかも。

こういうグループって、アルバム1枚をリリースして終了となってもぜんぜん不思議じゃない気はしますけど、できることなら今後も活動を続けていってほしいグループですね。