ヴィブラフォン奏者のパトリシア・ブレナン(Patricia Brennan)の2ndアルバム『More Touch』
彼女はMary Halvorson(メアリー・ハルヴォーソン)が今年2022年にリリースした『Amaryllis』でも印象的なプレイを聴かせてくれましたね。
この『More Touch』は発表からずっとリリースを心待ちにしていたアルバムだったのですが、そういうアルバムってそんなに多くなくて、年に10枚もないくらいだと思います。
このブログでは、彼女の1stアルバム『Maquishti』をリリースした時にも投稿していて、彼女の簡単な経歴などはそちらで紹介しています。
『Maquishti』というアルバムはソロ・アルバムであり、足元でエフェクトを操ることでヴィブラフォンの音を過激にモジュレートしながら演奏するという、かなり特異なアルバムになっていました。
それに対して今回のアルバム『More Touch』はカルテット編成ということで、メンバーはこちら
Marcus Gilmore(drums)
Mauricio Herrera (percussion)
Kim Cass (bass)
Patricia Brennan (vibraphone with electronics, marimba)
こちらもラテン・パーカッション(コンガやシェイカー)を含むカルテットというかなり変わった編成ですね。これと全く同じ編成って他では聴いたことないです。
実はこのアルバムがリリースされる前に、今回とほぼ同じカルテットでの2021年のライブ動画が公開されていました。
ドラムのみマーカス・ギルモアでなくノエル・ブレナン(パトリシアさんのパートナー)が担当
この時のライブでは、複雑な構造を持つ曲をクールかつ緻密に演奏するという印象でしたね。
今回のアルバムはおそらくこのライブのような演奏だと思っていたのですが、実際に『More Touch』を聴いてみると予想は全く外れていましたね。
『More Touch』を聴くと、なんといってもマーカス・ギルモアのドラムが印象的(というか意外な)なアルバムとなっています。
ジャズ的なマナーからはかなり外れていて、ごく短いドラムパターンをループさせて演奏をドラムで埋めつくすというスタイルで、ジャズでもないラテンでもないアグレッシブなリズムになっていました。
そしてヴィブラフォンも、1stアルバム以上にヴィブラフォンにエフェクトをかけるようになっていましたね。
1st時点ではまだエフェクトのかけ方もさりげなく、アンビエント/音響的なスパイスとして使われていた感じもありますが、今回はエフェクトをかけて無調楽器のような使い方をしていたり、「ヴィブラフォンのような何か違う楽器」のような錯覚も起こさせます。
ヴィブラフォンのフレーズも、クリシェのようなスムーズなものではなく、ひとつひとつの音を完璧にコントロールしようと試みる、緊張感のある演奏ですね。
このアルバムのコンセプトは、「スタジオアルバムはライブとはまったく違う演奏にする」という意図なんですかね?
それともこれからこのアルバムをベースにしたライブなども行われるのか。
とにかく、リスナーの「たぶんこんな感じだろう」という予想を見事に裏切ってくれる、「新しさ」を感じるアルバムです。