ギタリスト、パスクァーレ・グラッソ(Pasquale Grasso)の新作『Pasquale plays Duke』がリリースされました。
いやー、このブログで初めて彼のことを取り上げたのは2019年の9月なので、もう2年も経つのですね。
本国アメリカでの知名度はまだまだという気はしますが、2021年は新人ヴォーカリスト、サマラ・ジョイのアルバムへの参加など、徐々に活躍の場を広げているようには思います。
ここ半年くらいで、【パスクァーレ・グラッソ】の検索ワードから辿ってわたしの以前のブログ投稿が読まれることも多くて、日本では彼の人気はじわじわあがって来てるんだな、と実感してはいたのですけどね。
コロナ禍もありライブなどに制限されていた2020年からずっと、彼はソロギターでスタンダードを演奏するアルバムを出していました。2020年に3枚、2021年に1枚をリリースしていて、かなりハイペースでですね。
今回のアルバムはデューク・エリントン曲集ということで、昨年から続くシリーズの新作とも言えるのですが、これまでと大きく違う点はギタートリオでレコーディングされているということ。
彼のギタートリオアルバムというとこれまではドラマーRenaud Penantの『In the Mood for a Classic』(2017)くらいしかなく、彼自身の名義では初ということで、それだけでもレアなアルバムと言えますね。
アルバムの先行シングルのビデオはこちら
これまでのパスクァーレのプロモーション動画というと、基本カメラの前でただただギターを弾くというものでしたけど、今回は「ギタリストのパスクァーレが彼女と一緒にライブハウスに連れだって向かい、颯爽と演奏する」というちょっとドラマ仕立ての動画になっていますね。
単純に「あ、俳優を雇っている!」「ちゃんとカット割りとか編集してる!」と驚いてしまったのですけど。
レコーディングメンバーは
Pasquale Grasso(guitar)
Ari Roland(bass)
Keith Balla(drums)
guest
Samara Joy(vocal)
Sheila Jordan(vocal)
共演メンバーも、パスクァーレが最も多く共演してきた気心の知れたミュージシャンたち。Ari RolandとKeith Ballaはサックス奏者クリス・バイアーズのグループでずっと一緒にヨーロッパをツアーで廻ったりもしていました。
特にベースのAri Rolandなどは、パスクァーレが共演するベーシストはすべて彼と言っても良いくらいです。
このアルバムはトリオ演奏がレアだし注目なのですが、実際にはすべてトリオ演奏だけではなく、パスクァーレのギターソロ、ギターとベースのデュオ、サマラ・ジョイとシーラ・ジョーダンがそれぞれヴォーカルとして参加した曲など、バラエティーに富んだ編成の曲がバランス良く収録されている感じです。
スタンダード集だからということもあるのでしょうけど、全体的にトラディショナルなビバップ演奏。淀みのない疾走感のある演奏で、聴いててただただ楽しい。
これまでの彼のソロギター演奏はけっこうルバートっぽく崩すことが多かったのですけど、今回は(たぶんトリオ演奏とバランスを考えて)ソロでもイン・テンポでスイング感あふれる演奏になっていますね。いつもと違う雰囲気ですけどこういう演奏も良いなー。
アメリカの、特にニューヨークのジャズメディアではオールドスタイルのビバップが取り上げられることはないですね。そういうリスナーはたいてい50年代とか60年代とか古いアルバムを聴き続けているのでなかなかニュースにはしづらいみたいだし。
今回の『Pasquale plays Duke』のようなアルバムを好むリスナーは潜在的にはたくさんいると思うので、そういう人にアピールして彼にはもっとビッグになってほしいところです。
最後に2人のヴォーカリストが参加した曲について
サマラ・ジョイは、パスクァーレが教鞭を取っているニューヨーク州立大学パーチェス校の元生徒で、今年リリースされた彼女のデビューアルバム『Samala Joy』ではパスクァーレのトリオが伴奏として参加していました。ライブなどでもパスクァーレとサマラ・ジョイは良く共演しているみたいですね。
サマラ・ジョイのアルバムについて書いたブログはこちら
シーラ・ジョーダンはどういう経緯で参加することになったんだろう?ニューヨーク在住のジャズミュージシャンは、みんな何かしら面識があるのかもしれないですが。
彼女は(今年2021年時点で)92歳ということですが現役でライブも続けているようです。すごいですね。さすがに声はぜんぜん出ないのですけど、チャーミングなヴォーカルで良い雰囲気の演奏になっていますね。