マンボ革命! オルケスタ・アコカン『16 RAYOS』

2021年のキューバ音楽を代表するアルバムはこれに決まりかな。

2018年にデビューアルバムをリリースし、グラミー賞のベスト・トロピカル・ラテン・アルバムにノミネートされた16人編成キューバン・ビッグバンドであるオルケスタ・アコカン(ORQUESTA AKOKÁN)

彼らのセカンドアルバム『16 RAYOS』の紹介

いや、デビューアルバムもすごく好きなアルバムでしたけど、このセカンドアルバム最高じゃないですか。

ORQUESTA AKOKÁN

簡単にグループの紹介

オルケスタ・アコカンは、ニューヨークを拠点にラテン音楽レーベルChulo Recordsを運営するプロデューサーのジェイコブ・プラッセ(Jacob Plasse)を中心に、ピアニスト・作曲家のマイケル・エクロス(Michael Eckroth)、そしてボーカリストのホセ・”ペピート”・ゴメス(José “Pepito” Gómez)の3人で発案して結成されたグループ。

プラッセはもともとはオルケスタ・アコカンというグループを作るつもりではなく、アルセニオ・ロドリゲス、ペレス・プラド、ベニー・モレなど、1940年代から50年代にかけてキューバで爆発的に広まったソンモンチュノやマンボの魅力をレコーディングするためのセッションから偶然生まれたグループとのことです。

プラッセはニューヨークでキューバ音楽のミュージシャンを集めてリハーサルをしたのですが満足した結果が得られずにいたところ、知り合いであるホセ・”ペピート”・ゴメスが自身のグループ、ロス・ケ・ソン・ソンの仕事でキューバに行くと聞き、彼と共にハバナと向かいました。

この時にホセ・”ペピート”・ゴメスらが中心になって行った現地ミュージシャンとのセッションが行われ、この時に呼ばれたのロス・バン・バンやイラケレのキューバ人奏者やニューヨークで活躍する演奏者を加えた一流のオールスタープレイヤーたちが、オルケスタ・アコカンの母体となりました。

この時のセッションを経験し、プラッセたちはこの時のメンバーを1回限りのプロジェクトではなくパーマネントなバンドにすることを決意したそうです。

そうしてオルケスタ・アコカンとしてレコーディングをすることになったのですが、この時のレコーディングは、アリエト・スタジオ(Arieto Estudio)というハバナの伝説的なスタジオで録音されたそうです。
アリエト・スタジオは1997年に発売されたブエナビスタ・ソシアル・クラブの録音でも使われており、1964年にカストロが当時大きな影響力のあったレコードレーベル「Panart」を吸収し国有化して作られたEGREMレーベルが使用していた、まさにキューバ音楽のレコーディングを独占していたスタジオです。

マンボ革命

プラッセが目指したのは、マンボの伝統に敬意を表したものであると同時にマンボの伝統を拡大したもの、ということのようです。

実際のところ、オルケスタ・アコカンのどの辺が「モダンな」マンボなのかは良くわからないのですけどね。正直、マンボという音楽についてはほぼ知識ゼロで、腕にフリフリ(ワラチェーラというらしい)を付けて演奏するみたいなイメージしかないので。

オルケスタ・アコカンを聴いた印象では、早めのテンポとキレの良いリズム、あたりが「モダン」なのかな?
いずれにしてもオルケスタ・アコカンは、古き良きキューバ音楽にありがちなエモーショナルでウェットな、聴いていてノスタルジーを感じるような音楽では無いですね。
細かい点で言うと、ファーストアルバム『ORQUESTA AKOKÁN』の分厚いホーンアレンジが前面に出ていて、それがなんとなくマンボ感を強調していたのですが、今回の『16 RAYOS』はそのあたりは控えめかも。

ちなみに、今年2021年にジェイコブ・プラッセがオルケスタ・アコカンの次にはじめたOkuteというグループがあるのですが、こちらは割とストレートなキューバ音楽へのオマージュという感じです。

もうひとつ、オルケスタ・アコカンの魅力はなんと言ってもホセ・”ペピート”・ゴメスのヴォーカルですね。
なんというか”華”があるんです。いつも真っ白のスーツを着ていて、アーティストというよりはエンターテイナーなんですね。

オルケスタ・アコカンのライブ映像を観ると、老若男女問わずステップを踏んで踊り出したりしているのも良いですね。音楽ファンが椅子に座って聴くジャズのラージアンサンブルとはちょっと違う客席の雰囲気です。