ネイト・チネンという方は、WBGOラジオ局のエディターを務めていてる著名なジャズライター。
WBGOはアメリカのニュージャージー州にオフィスがあり、ニューヨークなどでも聴ける公共のラジオらしいです。
そのネイト・チネンが2018年に発表した『Playing Changes: Jazz for the New Century』という本があって、年末にこの本に関する話題をwebで読んだこともあり、アマゾンでダウンロードしてみました。Kindle本で1300円。
アメリカ人批評家による「21世紀を代表するジャズミュージシャン」
この本は簡単に言うと、21世紀になってジャズがどのように変化しているか、現代を代表するミュージシャンを紹介しながら解説するという本。
(日本もそうですが)本国アメリカでも「ジャズを聴く」というとジョン・コルトレーンやセロニアス・モンクみたいな過去のレジェンドの音楽ばっかりを聴く人も多いようなので、そういう人向けにいま現在のアップ・トゥ・デイトなミュージシャンを紹介しようという試みなのだと思います。
この本では、2000から2018年までという年代のくくりで、チネン氏が重要と思う131枚のアルバムをセレクションしています。
Spotifyにはそのプレイリストが約100曲あり、きちんと年代順に並んでいますね。30枚くらいはサブスクでは聴けないアルバムということですね。
これって、なかなか良く練られたセレクションだと思いませんか?
細かいアルバムのセレクションにいろんな意見は出るとは思います。(どうしてPat Methenyのアルバムが『The Way Up』?とか)
ですが「21世紀のジャズ」を語るうえで押さえておくべきミュージシャンは網羅されているように思います。
まだ読んでいないのですが、ざっと各章のイントロなどを読んだ感想でいうと、ネイト・チネンの考える21世紀の(現在の)ジャズをかたちづくったキーパーソンとしては
■スティーブ・コールマン
■ジョン・ゾーン
■クエストラブ(ソウルクエリアンズ)
という風に考えているように思いますね。(全文ちゃんと読んでいないので間違っていたらすみませんが)
彼らが重要な点として、
スティーブ・コールマン
カサンドラ・ウィルソン、ジェリ・アレン、ヴィジェイ・アイヤーなど重要なミュージシャンを輩出し、後進のミュージシャンが活躍する場を与えたメンターとして重要な存在だったのですね。
またジャズの理論的なブレイクスルーを試みる姿勢が、現在のシーンに深くリンクしているということ。
コールマン自身は難解な音楽ということで(特に日本の)ジャズファンには愛されていなかったように思いますけど。
ジョン・ゾーン
ゾーンの音楽はこの本ではジャズとみなされていないのか、「21世紀のジャズ」として彼のアルバムはチネン氏のセレクションに入ってはいないのですけど、本の中の1章を割いて彼が与えた影響について書かれています。
ゾーンはその折衷主義でジャンルレスな作風と、TzadikやStoneの運営などアーティストの自由な創作を支援し、シーンの醸成に大きな役割を果たしています。
また、現在音楽やクラシック系のミュージシャンの活躍が増えたのも、ゾーンの功績が大きいのじゃないでしょうか。
クエストラブ
1997年から2002年の5年間のあいだに、コモン、モス・デフ、エリカ・バドゥ、ディアンジェロ、ビラル、Jディラらといったミュージシャンたちと実験的なセッションを行い多くの傑作アルバムを発表し、ソウルクエリアンズと呼ばれました。
クエストラブらは当時からスティーブ・コールマン、グレッグ・オズビー、リヴィング・カラーのヴァーノン・リード、ロイ・ハーグローヴらと親交があり、オフビートリズムや高度なハーモニーなど、ソウルクエリアンズの音楽はジャズと親和性が高かったようです。
この時の彼のサウンド(たとえば、エリカ・バドゥ『Mama’s Gun』、ディアンジェロ『Voodoo』)がR・グラスパーやカマシ・ワシントンなどの作品に影響を与えているという指摘ですね。
このあたりの話は日本ではわりと多く語られているように思います。
カマシ・ワシントンやロバート・グラスパーのエピソード満載、ではない
2018年に『Playing Changes』が発表された時は、日本でも「カマシ・ワシントンやロバート・グラスパーといった新世代ジャズ」 について書かれた本という紹介をされたみたいですね。
確かに書籍でカマシやグラスパーについて大きく取り上げた書籍はあまり無かったので貴重かもしれないです。
ですが、こちらの記事みたいなカマシ・グラスパーの話題ばっかりを期待して読むと肩透かしをくらうかも。この記事でデビッド・ボウイの『Black Star』について言及されていますけど、チネン氏の本の中ではボウイのアルバムについての話題は出てきませんからね。
ともあれ、英語の勉強もかねて少しづつ読んでいきたいですね。
中身についてどこかで紹介するかも。