今回は、雑誌などで良く企画されている「2010年代ベスト」を自分もやってみましたので発表します。
以前のブログ投稿で「自分の好きな音楽はだいたい2000年くらいに固まっている」という話を書いたのですが、今回選んだ10枚のアルバムもそういう傾向が反映されている気はします。
ほとんどは2000年代から長く活動しているミュージシャンが2010年代にリリースした、という形のアルバムです。
ジャズやワールドミュージックの世界ではミュージシャンのキャリアが短いとそもそも注目されないので、メジャーになった場合はすでに多数アルバムをリリースしているということも多いですし。
順位付けはNo.1のみ、2位以下は順不同です。
ルールとして1ミュージシャンにつきアルバム1枚のみにしました。
【No.1】 Masada String Trio『Haborym』(2010)
Mark Feldman (violin)
Erik Friedlander (Cello)
Greg Cohen (bass)
1990年代から数えきれないほど多くのグループによって演奏されてきたジョン・ゾーンのマサダ・プロジェクトですが、第1期から続くオリジナルグループ、正典とも言えるのがこのマサダ・ストリング・トリオ
オーネット・コールマングループの編成でフリージャズイディオムで演奏するゾーン/ダグラスのマサダカルテットは、「ゾーンが書いたコンポジションこそがマサダ」というマサダのコンセプトからすると、むしろ異質でもありますね。
つまり、このマサダ・ストリング・トリオこそが最もピュアな形でマサダソングを表現できたグループだったのだと思います。(Bar Kokhba Quartetもバンドサウンドにフォーカスされていますし)
ゾーンがこのトリオのライブでステージ上からキュー出しするのは、ただ単にこのグループが最高なので参加したいだけなんだろうと勝手に思っています)
この『Haborym』は第2期マサダ(Book of Angel)シリーズのvol.16にあたるアルバム。
彼らは第2期マサダ Vol.2『Azazel』も担当していて、シリーズ2回目の起用になります。
この『Haborym』が彼らの最高傑作ではないかもしれないのですけど、それでも2010年代にリリースされた他のアルバムを圧倒しているように思います。
肝心の1位のみサブスクにないです。あしからず、、
Prince 『Art Official Age』(2014)
このアルバムは別にプリンスのキャリアの重要な作品でなくても最高傑作でもないのですよね。
でもベストアルバムというのはそういう意味付けじゃなくて「自分の好きなアルバム」を選ぶべきだと思うので、そうなるとプリンスは当然ランクインしますね。
Bonnie Pink『Back Room』(2011)
もう実質活動を休止しているBonnie Pinkさんが、自作曲をセルフカヴァーしたアルバム。
彼女のアルバムはリアルタイムで聴いた記憶はあまりないのですけど、彼女の声と歌い方はすごく好みです。
(うまい下手は別として)Superflyみたいにグイグイ来るのはちょっと苦手かも。
彼女は自分の演奏する音楽をはっきりと「J-Pop」だと言っていましたね。
国内の複数のプロデューサーと共同で作った、きっちりプロダクションされたアルバムも悪くないのですが、このアルバムのようなシンプルでフォーキーなアレンジが彼女の声にはマッチしています。。
ベスト的な選曲も良いです。
Bola『D.E.G』(2017)
「オウテカなんてただのヒップホップ」
「Bolaこそ真のエレクトロニカ!」
とつい言いたくなるほど好きなBolaなのですが、
BolaことDarrell Fittonは2007年を最後にリタイアしたと思われていたのが、2017年に突如シーンに復帰したのがこのアルバム。
10年経っても音作りの方向性はそんなに変わっていないのだろうと思いますけど、ソフトウェアの進化のおかげなのか、ナチュラルな音はよりナチュラルに、クリアな音はよりクリアに、音の精度があがってしているように思います。例えるなら、DVDからブルーレイになったみたいな。
その分、かつてのアルバムにあったメランコリックな雰囲気は後退している気も。
高円寺百景『DHORIMVISKHA』(2018)
吉田達也さん率いる高円寺百景の現時点での最新アルバム。
高円寺百景は細かいメンバー変更は多いのですが、現在のメインメンバーである小森慶子(サックス/クラリネット)、矢吹卓(キーボード)、AH/工藤亜紀(ヴォーカル)などは2008年からなので、このアルバムは固定メンバーで長く活動して培った鉄壁のアンサンブルが聴けます。
それにしても今のメンバーは性別も年代もバラバラなんだと思いますが、SNSなどで舞台裏を見ても、みなさん楽しそうで良い雰囲気ですね♪
Vijay Iyer Sextet『Far From Over』(2017)
2010年代のジャズシーンといえば、まさにヴィジェイ・アイヤーの時代でしたね。別にファンだから言っている訳ではないですよ。
このアルバムはその彼の2010年代の代表作と言って良いと思います。
3菅フロントで、ラージアンサンブル的な緻密なアレンジが聴けるのですが、なにがすごいのか良くわからないけどすごいことだけはわかる、かつてのデューク・エリントン楽団のような凄味がありますね。
このセクステットはパーマネントなグループでは無さそうなのが残念ですけど。
それにしてもアイヤーには『Tirtha』みたいなインド音楽テイストのアルバムをまた作ってほしいなぁ。
Crosscurrents Trio『Good Hope』(2019)
2019年のベスト1!
リリース告知から実際のリリース後まで、このブログとSNSを使って何度も紹介したのですけど、他の人でこのアルバムを2019年ベストに選んだ人は皆無でしたね。力及ばず無念です。。
唯一、Jazz Timesマガジンのみ年間ベスト2位に選んでしましたね(1位はブランフォード・マルサリス『Secret Between the Shadow and the Soul 』)
Hans Zimmer『OST:Interstellar』(2014)
ハンス・ジマーの映画スコアといえば、この『インターステラー』と『インセプション』の人気が高いみたいですね。
この2枚を2010年代のベストに選んでいるメディアもありました。
今年は『ブレードランナー2049』や『ライオンキング』など、あいかわらずジマーの活躍ぶりはすごかったですね。
Alim Qasimov『Morq-E Sahar』(2014)
このアルバムはデジタル配信のみだったようですね。
カシモフの『Awakening』も2019年のベスト10に選んだのですが、やはりこういうトラディショナルな伴奏の方がのびのび歌っている感じですね。
このタイトル曲『Morq-E Sahar』は、イラン古典声楽の定番曲のようで、シャジャリアンなど名だたる歌手がレパートリーにしているようです。
Pat Metheny『Orchestrion Project』(2013)
メセニーの2010年代といえば、クリス・ポッターらと組んだUnity Bandでの活動が印象的でしたけど、よりパット・メセニー・グループっぽい曲とアレンジの『Orchestrion Project』を選びました。
みんなこういうPMGみたいなアルバムがもういちど聴きたかったんじゃないですか?
話は違いますが、メセニーといえば彼が第2期マサダの曲「Tap: Book of Angels Volume 20」をリリースしたことは2010年代最大のサプライズだったように思いますね。