アメリカの老舗ジャズ雑誌であるダウンビート誌の2019年の批評家投票が発表されていましたね。
最優秀アルバムにウェイン・ショーターが選ばれるなど「いつの時代の投票?」と思わせるセレクションなのですが、ここで紹介したいのはギター部門の最優秀に選ばれていたメアリー・ハルヴォーソン(Mary Halvorson)です。
彼女はこれで3年以上連続で受賞しています。
ハルヴォーソンは1980年生まれで2019年時点で39歳。
メガネに細い小柄な女性で、見た目はとてもジャズギタリストには見えない感じですね。
そんな彼女ですが、同世代では最も重要なギタリスト・作曲家と言われていて、ジャズの世界ではレジェンド級のミュージシャンになりつつある、という評価のようですね。
彼女は学生時代にアンソニー・ブラクストンにレッスンを受けたらしいのですが、演奏はフリー/アヴァンギャルドっぽく、いわゆるジャズを感じさせるブルースっぽさとは無縁です。
ギタリストとしてもあまりガンガン弾きまくる訳じゃなくて、作曲・アンサンブル重視のアルバムが多いですね。
Mary Halvorson アルバム3選
Mary Halvorson Quartet『Paimon: The Book of Angels Volume 32 』
Mary Halvorson (guitar)
Miles Okazaki (guitar)
Drew Gress (bass)
Tomas Fujiwara (drums)
彼女のアルバムの中で、まず1番に紹介したいアルバムがこれ。
Masadaシーズン2の最後となったこのアルバム。ハルヴォーソンはTzadikレーベルとはあまり接点がなさそうなので、レーベル側からの依頼なのでしょうか。
メンバー編成も(ドラムスのトマス・フジワラ)を除いて、ハルヴォーソンがあまり共演することのないメンバーが集められていて、セッション的なアルバムのようです。
ツイン・ギターの片方であるマイルス・オカザキも2019年のダウンビート批評家投票で「ライジング・スター・ギタリスト」に選ばれていた注目のギタリストですね。
このアルバムでは2人で同じような音色のギターを弾くのでどっちがどっちかよくわかりません。。
このアルバムは、従来のハルヴォーソンの演奏が持つ魅力とはちょっと違う気はするのですけど、ハードバップ風のスピード感と熱量の感じられる演奏で必聴です。
Mary Halvorson’s Code Girl 『Code Girl 』
Michael Formanek (bass)
Tomas Fujiwara (drums)
Mary Halvorson (guitar)
Ambrose Akinmusire (trumpet)
Amirtha Kidambi (voice)
Code Girlはいちおうグループ名でもあるようです。
このアルバムが彼女の最新アルバムなのですが、2枚組1時間半の大作です。
ギター、ベース、ドラムスの3人はThumbscrewというトリオで長く演奏していることもあり、Code GirlはThumbscrewのメンバーを拡大させた派生グループと言えるのかも。
雑誌「Wire」のインタビューで、Code Girlを作る際にインスピレーションを受けたアルバムをリストアップしていて、web上で聞くことができます。
ロバート・ワイアット、エリオット・スミス、ジョニ・ミッチェルなどなど、、見事なまでにジャズアルバムはを挙げていないのですねー。
このCode Girlでは、フォークっぽいリラックスして聴けるアルバムを作りたかったのでしょうね。長いソロなんかはほとんど聴けません。
Tom Rainy Trio『 Camino Cielo Echo 』
Mary Halvorson (guitar)
Tom Rainy (drums)
Ingrid Laubrock (sax)
このグループは、ティム・バーンとの共演で知られるドラマーのトム・レイニー(Tom Rainy)がリーダーのトリオ。
サックス、ギター、ドラムという変則編成ですが、リズムを担うベースがいない分、ビート感が希薄なフリーフォームな演奏が続きます。
このアルバムはグループ3人それぞれが作曲を担当しているようです。
演奏は基本的に3人のインタープレイの応酬なのですが、サックスのイングリッド・ラウブロック(Ingrid Laubrock)の引き出しの多さは感心します。彼女のサックスがメロディの良さを生かしながらフリーな演奏も同時に行い、トリオ演奏を1段上のレベルに引き上げているように感じます。
以上、メアリー・ハルヴォーソンの必聴アルバム3枚のご紹介でした。