コロンビア出身、現在はバルセロナ在住のシンガーソングライターであるマルタ・ゴメス(Marta Gómez)の新作『Bajo & Voz』
このアルバムはベーシストのAndres Rotmistrovskyとのデュオによるアルバムです。
新作『Bajo & Voz』の話をする前にちょっとマルタ・ゴメスの話をしますと、、
わたしがマルタ・ゴメスの名前を聞いたのは、もう忘れてしましたがラテン音楽のディスクガイドか何かで、彼女のアルバム『Cantos de agua dulce』が紹介されたのを読んだのが最初かも。
このアルバムは2004年の Billboard Latin Music Awardsにノミネートされたそうです。この年の受賞者の名前を見るとリッキー・マーティンとかフアネスとか時代を感じさせますね。
『Cantos de agua dulce』カテゴリとしてはラテン・ジャズ・アルバム部門でノミネートされていたのですけど、アルバムを聴いてもあまりジャズっぽくはないのですよね(受賞したのはアルトゥーロ・サンドヴァル)
彼女はコロンビアで地元の合唱団に入って音楽的な基礎を身につけ、ボゴタのハベリャーナ大学で音楽教育を受けた後、アメリカに渡りバークリーで学びました(しかも奨学金をもらい優等で卒業したそう)
もしかすると「バークリーに行ったんだからジャズなんだろう」と思われたのかも。
「ラテン」のイメージも人によって微妙に違うと思いますけど、わたしが思う「ラテン音楽のヴォーカル」というと彼女のような感じ。
最近ではジャズミュージシャンがラテン曲を歌ったりしますけど、マルタ・ゴメスのようなフィーリングはやっぱり出せないんだと思ってるんですよね。
彼女のアルバムでは『Cantos de agua dulce』のシンプルで透明感のある歌もようですが、よりラテンのニュアンスの強い次作『Entre cada palabra』(2006)がファイバリットかも。
バルセロナ
この『Entre cada palabra』あたりでゴメスは、ワールドミュージックのジャンルでのトップクラスの知名度になりつつあったようですが、2009年にバルセロナのポンペウ・ファブラ大学で文学の修士号を取得し、同時にバルセロナに移り住むことになります。
その後も音楽活動は続けているのですが、どういう訳か子ども向けの童謡のアルバムをリリースしたりと、謎のイメージチェンジを行っていました。(この童謡を収録したアルバムでグラミー賞を受賞したりもしていますが)
前作『Filarmonico 20 anos』ではフルオーケストラをバックに歌うなど、マルタ・ゴメスという人はありあまる才能があるばかりに一所にとどまることができないのかな、とも思ったりもしますね。
正直、バルセロナに移住してから以降の彼女の音楽は、「自分が聴くような音楽じゃないな」と思ったし、このブログは基本は新作をの感想を書いているので、正直マルタ・ゴメスのアルバムを取り上げることはないだろうなとも思ってたのですよね。
そんな感じだったので、今回『Bajo & Voz』を聴いた時は予想外に良質のアルバムで、良い意味で期待を裏切られたかたちです。
ベースと歌というシンプルな編成ながら、心地良くチャーミングな曲とマルタ・ゴメスの優しい歌声が魅力的なアルバムです。
伴奏にラテンっぽさはあまりないのですが、そのぶん曲の雰囲気とヴォーカルのフィーリングでラテンっぽさをほのかに演出している感じです。
共演者のAndres Rotmistrovskyという人は6弦ベースを演奏しフュージョン系ジャズっぽい界隈にいるプレイヤーみたい
ベースのみの伴奏というとかなり異色な感じですが、アルペジオっぽいフレーズでギターのような豊かな伴奏をベースで実現しています。
アルバムとしては初出だと思いますが、かなり前から、古いものでは2016年くらいからこのデュオでライブは行っているようですね。
マルタ・ゴメスについては、もう「昔みたいなアルバムをもう一度つくってほしい」というのが希望なのですが、でも次作は次作でまったく違うアルバムになるんでしょうねー。