マディソン・カニンガム『Revealer』レビュー

2019年にリリースした前作『Who Are You Now』がグラミー賞の「最優秀アメリカーナ・アルバム賞」にノミネートされた、ロサンゼルスを拠点に活動するシンガーソングライター/ギタリストのマディソン・カニンガム

今回、彼女の新アルバム『Revealer』がリリースされていました。

前作の『Who Are You Now』はかなりお気に入りだったアルバムで、当時ブログにも書きました(こちら

当時は彼女に関する日本語の情報はほとんどなく「グラミーノミネートと言ってもこんなものかな」と思った記憶がありますね。

『Who Are You Now』リリース後のカニンガムは、2021年にレーベルメイトのS.G.グッドマンとのツアーを行い、マディソン・スクエア・ガーデンではハリー・スタイルズのショーのオープニングアクトを務めたことで話題となっていました。

また彼女は2021年に、ジョン・メイヤー、レディオヘッド、トム・ウェイツ、ビートルズのカバーで構成された『Wednesday』というタイトルの4曲入りEPをリリースしています。このアイデアは、カニンガムが自身のYouTubeチャンネルで展開している「Weekly Wednesday Covers」から生まれたもの。

この『Wednesday』は、2022年に行われた第64回グラミー賞に最優秀フォーク・アルバムにノミネートされています。
(カバー曲を集めたEPがグラミー賞にノミネートというのは異例かも。ちなみに受賞はRhiannon Giddens With Francesco Turrisi 『They’re Calling Me Home』)

また今年2022年にはTiny Desk Concertに出演したり、Lake Street Diveの前座としてツアーを行っています。

本国アメリカでは徐々に彼女の存在が認知され、人気と知名度をあげているところじゃないかなと思いますね。

『Revealer』

いきなり他人の言葉を引用してしまいますが、今回のアルバム『Revealer』について書かれた記事の中で、読んでていちばんしっくり来た表現は、

「暗くそこまでファニーじゃない時代の、暗くファニーな歌」
(These are dark, funny songs for dark, not-so-funny times. )

というもの

SSWの歌詞って、世の中や人間関係の辛さや悲しみを歌うのですが、そこにポジティブな要素を混ぜ込むもの
そのポジティブさが「女性のエンパワメント」みたいなニュアンスを持つと(そういうの多い)、なんとなく引いちゃうのですが、彼女の歌のポジティブさは自然体で聴いていてすんなり受け入れられる感じです。

実際のところ彼女のような音楽は、全くのオリジナルってことは無くて、「どこかの誰かの音楽」にどうしても似るものです。

前作『Who Are You Now』はエイミー・マンのようだと(わたしは)感じたのですが、今回のアルバムは『Revealer』はもう少しバンドサウンドっぽいアレンジで、ちょっとシェリル・クロウっぽいかも。

でもまあカニンガムの歌とギターを聴いていると、「誰々と似ている」とか「誰々と比べてどう」とか、そういう音楽の聴き方が少し無意味にも思えてきます。
なんといっても音楽はコンペティション(=競争)じゃないのだし。

アルバムはほとんどバンドメンバーの4人で演奏されているみたいです。
カニンガムは曲ごとにギターを変えて違う質感のギターサウンドを聴かせ、バックバンドも曲のテンポやリズムを頻繁に変え、ワンパターンにならずにバラエティに富んでいて、バンドとしてのまとまりを感じさせます。

「産業ロック」っぽくなりそうなところをギリギリのところで踏みとどまっていて、このへんのバランス感覚はプロダクションとしても秀逸ですね。

MUSICIANS
Madison Cunningham: vocals, guitar
Kyle Crane: drums
Philip Krohnengold: keys
Daniel Rhine: bass