んー、ラリー・ゴールディングスは、「ジャズミュージシャン」であることに、もうあまり興味がないのかもしれない。
ピアノ/オルガン奏者のラリー・ゴールディングスが2021年11月に新アルバム『Earthshine』をリリースしたのですが、これまでのようなバンド形式ではなく1人で演奏・音処理を施したソロ作品。
打ち込み系のエレクトリック作品を作るジャズのキーボード奏者としてはマット・ミッチェルやクレイグ・テイボーンなどがいるのですが、ゴールディングスの作品は彼らのようなエレクトロニカ/アンビエントっぽいのとは全然違って、どういうジャンルか説明が難しいんですよね。
さまざまなSEやエフェクトがサンプリングされて使われていて、映画サントラとも違うチープさが、テレビ番組やコマーシャルのBGMっぽいかもしれない。
そんなわけでこの『Earthshine』に似たアルバムというのもかなり難しいのですが、強いて言えばDavid Slusserの『Delight At The End Of The Tunnel』にテイストが近いかも。
この『Delight ~』はTzadikレーベルのカタログの中でもトップクラスに好きなアルバムなのですけどね。
とにかくカテゴライズ不能でオリジナリティのあるアルバムですね。
ただ全編に意外性のある仕掛けがちりばめられており、素晴らしいです。
基本的はお気楽なエンタメ作品でシリアスに聴くタイプの音楽じゃないのですが、ゴールディングスがかつてリリースした(ある意味スノビッシュな)ジャズアルバムとは正反対という感じですね。
ある意味、彼はジャズのもっと先へと進んでいるということなのでしょう。
ゴールディングスに対して
「ピアノなんて良いからまたオルガン弾いてほしいな」
とか思っている人にこそ聴いてほしいアルバムです。
余談
SNSでもちょっと書いたのですが、ゴールディングスは去年にアメリカの政治集会での国会斉唱を使ったコメディ動画がバズっていたみたいです。
(国歌斉唱の伴奏者に扮して、音を外しまくるヴォーカリストに必死に合わせようとする動画)
この拡散したことをきっかけに、いろんなコメディっぽい動画をYouTube動画をアップしたりしているようです。
ジャズミュージシャン系ユーチューバーと言って良いかも。
オーストリア人ピアニストHans Groinerという架空のキャラクターに扮して、ピアノレッスンしたり、ジョン・スコフィールドにインタビューするとかね。(ちょっと「ボラットみたいな感じ)
彼のこういう活動について、彼の奥さんは「ブラッド・メルドーはそんな動画撮らないわ」と言っているという話には笑ってしまいましたが。
彼はScary Goldingsというジャズ・ファンクユニットで活動などしているのですが、西海岸をベースに活動しているようなので、(ニューヨーク/東海岸メインの)ジャズメディアにはあまり取り上げられないようですね。