Klezmerson『Tiferet』 /「The Book Beri’ah」を全部聴くVol.6

https://www.youtube.com/watch?v=UNCrQ1TOuRg

Klezmersonはメキシコでヴァイオリニスト/ピアニスト/作曲家であるBenjamin Shwartzによって2003年に結成されたグループ。
これだけ大人数のグループを海外からスカウトしてくるというのはジョン・ゾーンにしてはちょっと珍しい例ですね(Muna Zulとか、数えるほど)

彼らは今回のMasada3のレコーディングの様子をちゃんと動画に撮って公開してくれてる。真面目かっ!

これぞ ” ミクスチャー ”ミュージック

彼らの音楽はロック/ファンクをベースにしているのですけど、クレズマーや東ヨーロッパの音楽や、チャランガ、ノルティーノ、チャチャ、ソンなどのラテン音楽の要素もあり、果てはクラブミュージックまで出てくる、まさに「ボーダーレス」な音楽だと思いますね。

※たまにミュージシャンの紹介文に
「ジャズ、ロック、ファンクやR&Bなど、さまざまな音楽をひとつにまとめ上げた唯一無二の才能」
みたいな書かれることも多いのですが、
「そんな似たような音楽ばっかり並べて、なに言っちゃってんの?」
とか思いませんか?

演奏はとにかくエネルギッシュでパワフル、細かいことは言わずノリ一発で盛り上げるパーティーミュージックとしても聴けますね。
Masadaファンの友達たちとドライブに行くには最高のチョイスかも

 

これだけ大編成のグループで分厚い音を出すアレンジだと、メンバー間のインタープレイや魅力的なソロパートはほぼありません。
そのぶん原曲をカッコよくアレンジして鳴らすのが聴きどころなので、曲が魅力的なことが大前提。彼らの過去のアルバムを聴くと、曲が地味で損しているところもあるのかな。
そう考えるとこのアルバムはフックの効いたMasada曲を演奏することで、彼らの良さがひきだされていると思います。

ゲームピース的展開を聴かせるKlezmerson

彼らは『book of angel:Amon』でもMasadaを演奏していたのですが、今回はちょっとアレンジを変えているように思います。
これまではラテンやロック、クレズマーの要素を渾然一体にミックスして演奏していたのですが、今回のアルバムでは「最初はラテン、ここからはクレズマー」といったように、1曲の中でスタイルを次々に切り替えています。
曲が表情豊かになりぜんぜんリスナーを飽きさせない。まさにアイデアの勝利ですね。

なんとなくゾーンの「コブラ」のようなゲームピースでの急展開をヒントにしている気もします。

基本的にMasada3は、みんな変化よりも安定を選んだ感がある(けなしている訳じゃない)にあって、新機軸を打ち出してきた数少ないグループですね。
前作よりも数段レベルアップしていて、傑作と言って良いかも。

ちょっとファンになりそう。