「まるでシャーデー」なキャンディス・スプリングス

先日、David Sanbornをフィーチャーした”スーパーセッション”というプロジェクトがSNSでニュースになっていました。
このプロジェクトはサンボーンと彼の率いるバンドが、さまざまなゲストを加えセッションを行うというもの。

そのサンボーン・セッションの第一回のコラボレーションとして選ばれたのが、キャンディス・スプリングス(Kandace Springs)というヴォーカリストです。

彼女がリリースした2018年のアルバム『Indigo』はなかなか良かったアルバムですね。

キャンディス・スプリングスはノラ・ジョーンズに憧れてピアノと歌をはじめ、地元のホテルの駐車場で働きながら夜になるとそのホテルのバーで歌い、デモテープがプリンスの耳に入り「素晴らしい才能」と絶賛され、オーディションでブルー・ノートのドン・ウォズに認められて契約を勝ち取り、憧れのノラ・ジョーンズとレーベルメイトになったそう。
もうどこまでホントの話なのかわからないほどのサクセスストーリーですね。

ニューアルバム『The Women Who Raised Me』

彼女は今年の3月にニューアルバム『The Women Who Raised Me』をリリースするようです。

タイトルから推測できるように、彼女が敬愛する女性シンガーの曲をとりあげたカバーアルバムです。
選曲はかなり王道な(ベタな?)気もしますが、彼女なら説得力をもって歌えそう。
ノラ・ジョーンズの他にも、クリスティアン・マクブライド、デビッド・サンボーン、アヴィシャイ・コーエン、クリス・ポッターと超豪華です。(日本盤には山崎まさよしとの共演なども)

アルバム収録の曲名とそれを歌ったシンガーはこちら

1. Devil May Care (feat. Christian McBride) – Diana Krall
2. Angel Eyes (feat. Norah Jones) – Ella Fitzgerald
3. I Put a Spell On You (feat. David Sanborn) – Nina Simone
4. Pearls (feat. Avishai Cohen) – Sade
5. Ex-Factor (feat. Elena Pinderhughes) – Lauryn Hill
6. I Can’t Make You Love Me (feat. Avishai Cohen) – Bonnie Raitt
7. Gentle Rain (feat. Chris Potter) – Astrud Gilberto
8. Solitude (feat. Chris Potter) – Carmen McRae
9. The Nearness of You – Norah Jones
10. What Are You Doing the Rest of Your Life – Dusty Springfield
11. Killing Me Softly With His Song (feat. Elena Pinderhughes) – Roberta Flack
12. Strange Fruit – Billie Holiday
日本盤ボーナストラック
13.Lush Life – Sarah Vaughan
14.You Got a friend(feat.山崎まさよし) – Carol King

このカバー曲のオリジナルバージョンを集めたプレイリストを作りましたよ。
良かったら聴いてくださいね。カーメン・マクレーのSolitudeのみサブスクにありませんでした。

その名はシャーデー

キャンディスはどんなジャンルでも器用に歌いこなすこともあり、2014年のデビュー当時はR&B/ソウルっぽいヴォーカルスタイルだったようです。
バックの演奏もヒップホップっぽかったりして、なんとなく時代を感じさせます。

こうした方向性は、おそらくレーベルの戦略的なものだったと思うし、新人ヴォーカリストのマーケティングとしてはあながち間違いではなかったのだと思います。

ただ、彼女が歌いたいジャンルはちょっと違ったんだろうな、と。

彼女はインタビューでもシャーデーのファンを公言していて、『The Women Who Raised Me』の1stシングルでもシャーデーの「Pearls」を選んでいます。
おそらく彼女が歌いたかったのはおそらくシャーデーみたいな曲だったんじゃないかと思うんです。
ミディアムテンポの都会的でクールに洗練された曲であり、かつアコースティックさも残っているような。

『The Women Who Raised Me』はカヴァーアルバムで企画盤のようなものだと思いますが、2018年リリースの前作『Indigo』は、まさにそのシャーデーのようなアレンジの曲が並んでいて、彼女としても理想的なアルバムだったのだろうと思います。

『Indigo』を聴いた瞬間に「あ、シャーデー!」と思いましたし、なんといってもわたしはシャーデーが大好きですし。例えばこんな曲


シャーデーのサウンドって不思議ですよね。
聴けばすぐそれとわかるのですが、どういうサウンドがシャーデーっぽくさせるのかはぜんぜんわからない。シンセ音?ドラムの音処理?コード進行?良くわかりません。

ただブルーノートのバックミュージシャンたちはその秘密がわかっているようです。
「こういう感じで演奏して!」と決めたら、それにマッチしたクオリティの高い音を作り出せるブルーノートのレーベルパワーはやはりさすがです。