今回の投稿は新譜でもなんでもないのですが、最近はじめて聴いたジョン・オズワルドの『Mystery Tapes』について
たまたまtwitterでこちらのツイートを見かけ、リンク先からダウンロードして聴けました。
John Oswald – Plunderphonic (1989) / Mystery Tapes (c. 1980) [MP3]: https://t.co/Ef8YZ5N6U9 pic.twitter.com/C47ifQTd3h
— UbuWeb (@ubuweb) May 13, 2018
UbuWebというのは1996年に詩人ケネスゴールドスミスによって設立された、インターネット上で利用可能な資料のWebベースのアーカイブ。今回初めて知りましたが、けっこう有名なサイトのようです。
主には本などの著作物を自由にダウンロードできるのですが、近年では音楽や映画も扱うようになったとか。
このサイトは、著作権については ”あえて” 無視するというスタンスを取っているようです。
「略奪音楽/プランダーフォニックス」と呼ばれる音楽を1970年代からはじめていたジョン・オズワルドですが、彼のキャリアの中で純粋に「プランダーフォニックス」と呼べるアルバムは『Plunderphonics』『Discosphere』『Plexure』くらいで、非常に数が少なかったんですよね(『Plexure』以降はサックスによるフリー・インプロなどが大半になります)
そんな中オズワルドは1980年に「ミステリー・テープ・ラボラトリー」を設立し、音楽と音のコラージュ作品を出典も説明も書かれていないカセットテープに入れて『Mystery Tapes』として作成し配布していたそうで、その音源を今回このUbuWebで聴くことができたという訳です。
『Mystery Tapes』じたいは多くの(おそらく10以上の)バージョンがあるようですが、ここで聴けたのは『Kissing Jesus in the Dark』『X1 Version』『X2 Version』の3バージョン。
あらためて調べてみるとこの音源は、今ではBandcampにもアップされているようです。
いやー、それにしてもこの『Mystery Tapes』が普通に聴けるようになっているなんて全然知りませんでしたよ。
プランダーフォニックスの当初のコンセプトは、本人いわく「曲をテープで加工し、好きなところだけを聴けるようにする」とのこと。
今回聴けたアルバムのうち『X1 Version』『X2 Version』などは、この方法論に最も忠実な音源と言えるかもしれません。
インド音楽や日本の怪獣映画をサンプリングしたり、いま聴いても「オッ!」と思わせる音の選び方ですね。
『X1 Version』『X2 Version』はアーカイブ的な音源かもしれないですが、今回聴けたアルバムの中では『Kissing Jesus in the Dark』がいちばん貴重でアルバムの完成度も高いアルバムかもしれない。
『Kissing Jesus in the Dark』はカットアップによる独特のグルーヴ感・クスッと笑わせるユーモア作られたなどが散りばめられており、作られた時期が近いこともあり『Plunderphonics』に近いイメージ。
ただそれだけじゃなく、『Discosphere』のアンビエント風味や『Plexure』のめまぐるしく変化する音の洪水といった後のアルバムでクローズアップされる新たな手法・要素も、すでに『Kissing Jesus in the Dark』で聴くことができます。
わたしは『Plunderphonics』を個人的な「オールタイムベスト10アルバム」に選んでも良いくらい好きなアルバムなのですが、それに近いコンセプトで作られた『Mystery Tapes』(特に『Kissing Jesus in the Dark』)もやっぱり最高ですね。
カセットでリリースされてはいましたがアウトテイク/デモテープ的な音源では全くないです。
何はともあれ、今回『Mystery Tapes』を初めて聴けたのは衝撃のひとことでした。それはもうビートルズファンが、彼らの未発表アルバムを新たに聴くようなものと言って良いかも。