オルガン奏者ジョーイ・デフランセスコ(Joey DeFrancesco)の新作『More Music』の紹介
ジョーイ・デフランセスコについてはジャズファンならおなじみと思うので、今回はプロフィール的な話は無しで、アルバムを聴いた感想をつらつらと書く投稿になります。
デフランセスコですが、前作『In the Key of the Universe』ではグラミー賞にもノミネートされていましたね。
このアルバムはジャケットのアートワーク、「Awake and Blissed」「The Creator Has a Master Plan」といったタイトル、アルバム全体を覆う曲調からもほんの少しだけスピリチュアルというか宗教的な雰囲気が感じられるアルバムでした。
デフランセスコは、少し前の2018年にはヴァン・モリソンのアルバム『You’re Driving Me Crazy』『The Prophet Speaks』に参加してプロデュースもしていて、もしかすると彼の宗教観みたいなことがモリソンとの共演のきっかけなのかな?とか思ったり。
ヴァン・モリソンといえば、(彼の信仰に関係していたのだと思いますが)コロナ陰謀論のような発言をし、ロックダウンに反対する曲をリリースしたりして、完全に世間から見放されてしまったかたちです。
まあそれもこれも音楽そのものとは関係ない話ではありますが。
そうした近年の作品の中でリリースされたデフランセスコの『More Music』ですが、これはなかなか良いアルバム。
個人的にはデフランセスコのこれまでのアルバムの中でもいちばん好きなアルバムかも。
「ジャズオルガン」はR&B/ソウルやブルース、ファンクなどジャズ以外の要素も強くて、そのブレンドの具合が演奏者の個性なのだと思いますけど、デフランセスコはちょいR&B寄りの演奏している時がいちばん良いですね。
これまでのアルバムでいうと D・サンボーンと共演した『Enjoy The View』みたいなタイプのアルバムかな(あのアルバムは主役はサンボーンでしたけど)
今回『More Music』はオルガントリオ編成なのですが、ギターのルーカス・ブラウンという人が新メンバーのようです。もうひとりのドラム担当Michael Odeはここ最近ずっとデフランセスコと共演しているプレイヤーなのですが。
このルーカス・ブラウンというギタリストは、どうも本職はオルガン奏者みたいですね。
このアルバムでは基本はギターを弾き、デフランセスコがトランペットを吹く時には彼に替わってオルガンを弾く、というかなりユニークなやり方をとっています。
動画だとこんな感じ。
これアルバムの1曲目ですからね。いきなりこの変則トリオからスタートするという攻めた構成です。
レコーディングであれば、トランペットを吹く時はデフランセスコが自分でオルガンを弾いてオーバーダビングしても良さそうなのですけど、これはライブで演奏することを想定してのことなんでしょうね。
以前のデフランセスコのライブ映像では、トランペットを右手で吹きながら左手でオルガンでバッキングするという荒技を使っていましたが、さすがに演奏しづらそうでした。
そういう意味ではこのルーカス・ブラウンの起用というのはなかなか上手い解決法かも。
デフランセスコのトランペットといえば、ジョン・マクラフリンとのグループ「Free Spirits」の時にすでに吹き始めていましたみたいです。
それだけじゃなくて彼は歌もけっこう歌っていて、この『More Music』でも「And If You Please」という曲で彼のヴォーカル曲があります。
正直「オルガンだけ弾いてればいいのに」と思わなくも無かったのですが、このアルバムでは彼のトランペットも歌もアルバムの雰囲気にマッチしていて、けっこう好きになりましたよ。
「Free Spirits」が1993年くらいなので、そう考えるともう30年以上もトランペットを吹いていることになるので、「継続は力なり」ということですかね。
「今回のトリオはライブ向け編成かも」という話で思い出したのですが、デフランセスコの演奏はスタジオ盤よりもYouTubeなどで聴けるライブの方が好きなんですよね。
ライブの方がジャムセッション風というかエネルギッシュな演奏が多いです。
今回の『More Music』も彼のライブ演奏に近いアルバムと言えるかも。
Personnel
Michael Ode – Drums
Lucas Brown – Guitar, Organ, Keyboards
Joey DeFrancesco – Vocals, Organ, Trumpet, Tenor Saxophone, Keyboards, Piano