2020年に取り上げるアルバム1枚目は、ジム・ブラック・トリオの新作『Reckon』
『Reckon』は、このグループとしては4枚目のアルバムになります。
【Jim Black Trio メンバー】
Elias Stemeseder (piano)
Thomas Morgan (bass)
Jim Black (drums)
みんな勝手にプレイする(ように聴こえる)ピアノトリオ
ジム・ブラックはドラマーとしてはTim Berne’s Bloodcount, Tiny Bell Trio, Pachoraなど、個人的に大好きだったグループに多く参加していて、ベスト5に入れても良いくらい好きなドラマーです
(Ranjit Barot, Bill Stewart, Tyshwan Sorey,Jim Black,吉田達也さんがベスト5、でもTom Raineyも入れても良いかな、、ベスト6になっちゃうけど)
このトリオはブラックがリーダーだけあって、かなりドラムの音がアグレッシブ。
変拍子という訳でもなくて、テンポや拍を常に高速でチェンジさせ、リズムが一定じゃない感じ。
音楽を聴く時は無意識リズムを取ろうとするものだと思いますけど、そういう安易な聴き方を拒否しているかのよう。
いろんな種類のスティックやブラシを頻繁に持ち替えたり、(超ゆるく張ったような)ベシベシ鳴る特徴的なスネアの音など、音響的にもかなり気をつかっていることもわかりますね。
基本的にドラムがトライアングルの頂点にいるようなグループで、まるでベース・ピアノともドラムを無視してそれぞれ勝手に演奏しているように聴こえるかも。
でもじっくり聴いてみるとお互いの意思が細い線でつながっているという感じ。
キース・ジャレットのスタンダーズのような、まるでひとりの人間が3つの楽器を演奏しているように緊密に絡み合うピアノトリオとはかなり違う印象ですね(ピアノトリオのほとんどはスタンダーズのようなスタイルを指向しているのだとは思うので、ジム・ブラック・トリオの存在はなおさら異質です)
Thomas MorganとElias Stemeseder
ベースのThomas Morganはビル・フリゼールとのデュオで評価が高めたプレイヤーで、アラフォー(38歳)なのですけど同年代の中では突出した存在とみられているよう。巨匠と呼ばれるプレイヤーになりつつあるとのこと。チャーリー・ヘイデンみたいなプレイヤー、と言えば良いのかな。
Elias Stemesederはオーストリア生まれでまだ20代後半。トリオへの加入時はまだ20代前半だったとのこと。若いです。
ジム・ブラック・トリオのアルバムはドイツのWinter-Winter、のちにスイスのIntaktというレーベルでリリースされたり、ライブなどの活動もヨーロッパが中心だったよう。
現在はニューヨーク移住していますが、Stemesederもずっとドイツで演奏活動を続けてきたようで、ドイツ時代のAnna Webber(Sax,flute)とアルバムをリリースしたりしているよう(こちら)。
これはStemesederとWebberのデュオ、2018年と最近の動画。
彼も当然クラシックをベースにしているピアニストで、たとえばAnna Webberのアルバム「Clockwise」のように、クラシック的(現代音楽的)な要素をフィーチャーした即興演奏は増えていくのだと思いますね。
そうなるとクラシックの歴史が長いヨーロッパ出身プレイヤーが増えていくのも当然の流れかなと。
そしてBagatellesへ
2018年から2019年にかけて、John Zornは第三期Masada Songbookの演奏を立て続けに発表しました(あぁそういえば、第三期マサダは全アルバムレビューすると言いつつ、あと数枚残っている、、)
近年はゾーンはほぼ作曲に専念しているようで曲のできあがりのペースが速く、2015年には第三期マサダに続くBagatellesという曲群をまとめ、ライブなどではすでに演奏しているよう。
ジム・ブラック・トリオもこのBagatellesを良く演奏しているようなので、このトリオでレコーディングも行われるかも。
ただ、Bagatelles演奏時はベースはThomas MorganではなくChris Tordiniだったりしていますね。ピアノはStemesederがそのまま。Tordiniは一時的なピンチヒッターなのか、BagatellesはTordiniがベースのトリオで行く!ということなのかちょっと不明ですが。
アルバムリリースは第三期マサダを優先させているのでBagatellesのリリースはまだなのですけど、Bagatellesのレコーディングはすでに一部行われているようです。(メアリー・ハルヴォーソン・カルテットなど)
次はBagatellesでジム・ブラック・トリオを聴きたいですね。