韓国のパンソリ奏者イ・ジャラムによる伝統的なパンソリアルバム『赤壁歌(Jeokbyeokga)』がリリースされていました。
彼女のプロフィールなどについては過去投稿に詳しく書いたのでそちらを参照ください
伝統的なパンソリで、現在も完全な形で残っているのは「春香歌(チュニャンガ)」、「沈清歌(シムチョンガ)」、「興甫歌(フンボガ)」、「水宮歌(スグンガ)」、「赤壁歌(チョッピョッカ)」の5つだそうです。
彼女は2022年にはその中の水宮歌をレコーディングしているのですが、今回は赤壁歌(チョッピョッカ)
この演目は三国志をもとにしており、劉備、関羽、張飛3人の兄弟の誓いから赤壁の戦いでの勝利までをモチーフにした曲のようです。
(私は赤壁の戦いというと、ジョン・ウーの映画『レッド・クリフ』でしか知らないのですが)
原作である『三国志演義』はより史実に基づいたストーリーで、後になって読み物として面白いように『三国志』は創作されたそうです
パンソリの『赤壁歌』も同様に『三国志演義』から派生して、パンソリとして観客を飽きさせないために軍のユーモラスなエピソードなどが加えられて今の形になっているそうです
ストーリーは赤壁の戦いを再現した英雄物語で、壮大で力強く、ドラマチックな演目ですね
細やかな恋愛模様の描写などが多いパンソリにしては珍しいかもしれません
そもそも韓国って三国志の話ってみんな知ってるんだろうか?(日本はマンガとかでゲームでけっこう知られているんじゃないかと思いますが)
そういった点も、赤壁歌があまり歌われない理由なのかもしれませんが
こちらの動画はライブで赤壁歌を歌うイ・ジャラム
登場人物も男性がほとんどのためあまり女性が歌うパンソリではなく、wikiによると壮大な発生能力が求められ、最も難しいパンソリと言われているそうです。
やっぱりパンソリは身振り手振りや表情なども含め、ライブで観た方がしっくりくるとは思います
音楽を原語で聴くということ
『赤壁歌』については、あくまで伝統的なパンソリのフォーマットにのっとった歌唱であり、ストーリー自体も三国志。アルバムの背景についてそれ以上は語れることはないかもしれません
話は変わるのですが、パンソリを聴いていていつも思うのが、パンソリを韓国語ネイティブじゃない自分が聴いてもほんとに理解できているのかな、という疑問です
ネイティブじゃないヴォーカルを聴く音楽というと、例えばイタリア語で歌われるオペラを聴くようなものかも?
何かの映画で、ロバート・デ・ニーロがオペラの観客席でむせび泣くシーンを観たような気がします(ゴッドファーザー?)
パンソリも同じように、何かの動画でパンソリ演奏会の観客席を映したのを見た時に、同じように女性が号泣していたりもしました(『春香歌』のクライマックスのシーンでしたが)
今回の『赤壁歌』を聴いても掛け値なしに素晴らしいと思うのですが、きっと韓国語ネイティブの人たちと自分では全然聴いた印象が違っているんだよなとは思います
やっぱりパンソリは歌詞がわかった方が絶対良いと思うのですけどね
イ・ジャラムさんは海外で公演する時はイヤホンで翻訳したストーリーを流すなどしていたようです。それだけストーリーが重要
さきほど『赤壁歌』の動画をあげましたけど、YouTubeだと自動翻訳ができるので大まかには話の雰囲気がわかりますね
パンソリは字幕ON必須だと思います
SNSとかでも、たまにこういう類の話ってありますけどね
「英語もわからないのに洋楽聴いてたのしいの?」みたいな
でもどうなんでしょうか?
たとえば原文の歌詞を読んで意味を理解したうえで洋楽を聴くと感動が倍増するか?というと別にそうでもないような(体験談)
逆にプリンスの曲の歌詞などを読むと、「こんなんネイティブじゃなくて良かったー」とか思ったりすることもあります
ネイティブだった方が良いのはラップ/ヒップホップくらいですかね
ラップのリリックは別にたいしたことは言ってないとは思いますが、ネイティブでないとあのフィーリングはわからないのかも