音楽にジャンルによる優劣はない、はず
「音楽には二種類しかない。良い音楽と悪い音楽だ」
これはジャズ・ピアニストであるデューク・エリントンの言葉で、音楽のジャンルについての話題で良く引用されます。
たいていは「音楽の良し悪しにジャンルなんて関係ないよね」という意味で使われることが多いです。
たいていの人はこの意見に同意してくれるはずで、「〇〇のジャンル、サイコー!」みたいなことを言うと、「いやいやいや、ちょっと待ってよ。じゃあ〇〇はどうなのよ?」とジャンル戦争がスタートしてしまいます。
つまりたいていのリスナーは、ひとそれぞれ好き嫌いあるとしても、音楽の価値にジャンルごとの優劣に差はないと考えているのだと思います。
もし「どんなジャンルの音楽を聴きますか?」ときかれたとして、「洋楽も邦楽も聴くし、どんな音楽もノンジャンルで聴きますよ!」とまで言い切っちゃう人はさすがに多くないと思いますが、「でもまぁオールジャンル聴くほうが良いよね」と考えている人は多いんじゃないでしょうか。
SNSでも「オールジャンル聴く方が良い」と実際にコメントするひとも実際にいるのですけど、そういうのを読むと、「でもさ、民族音楽とクラシックは聴くの?聴かないんでしょ?オールジャンル聴くんじゃないの?」と、底意地の悪いツッコミを入れたくなります。
これってなぜなんでしょうか?民族音楽もクラシックも、聴くべき音楽のカテゴリには入っていないのでしょうか?
「ノンジャンルの音楽」という言葉の違和感
そもそも音楽のジャンルじたいがあいまい。
ポピュラー音楽のジャンル(ロック/ジャズ/HIP HOP/R&Bなど)の違いを説明できる人っているんでしょうか?
たとえばロックとジャズは何が違うのか?インストならジャズ?もしそうならジャズヴォーカルはジャズじゃない?
ソウルとR&Bってけっきょく何が違うの?
リスナーが意識するほとんどの音楽ジャンルって、「なんとなく違う」だけで、実際はただメディアが「〇〇はこのジャンル」みたいにラベリングしているだけの話じゃないんでしょうか。
こういう風に書くと、
「いまや音楽はお互いに影響しあっていてボーダレスだし、ジャンルの境界なんてあいまい。だからこそなおさらジャンル分けなんて意味ないし、個人が好きな音楽を聴けば良いんだ」
と反論する人もいるでしょう。
ただ、ワールドミュージックを良く聴いて個人的に感じることは、
ロック/ジャズ/ヘビメタ/ヒップホップなどのポピュラー音楽は、「違いよりも共通点の方が多い」音楽だし、違いよりも共通点の方が多いと感じます。
ロック/ジャズ/ヘビメタ/ヒップホップも、ぶっちゃけ「ぜんぶ同じカテゴリの音楽」でしょ、ということ
そういう包括的なジャンル名がある訳じゃないですが、あえて呼ぶならロックもヒップホップもすべて「ポピュラー音楽」というひとつのカテゴリに含まれるんじゃないかと。
「ポピュラー音楽というジャンルってなに?そんなものあるの?」と思う人もいると思いますが、わたしがちょっと思いついた定義を書くと次のようになります。
広義のポピュラー音楽
音階/コード進行
メジャー・マイナースケールやコード進行みたいなメソッドはポピュラー音楽の特徴ですよね。
民族音楽などはコードがなかったり、独自のスケールや微分音を使う場合も多くてポピュラー音楽とは構造から違います。
2の乗数分割のテンポ(4/8/16ビート)
8ビート、16ビートといった考え方もポピュラー音楽の特徴ですね。
例えばインドのターラ、アラブリズムなど、韓国のチャンダンなど、民族音楽のリズム体系とは全く異なります。
ドラムセット使う
ドラムセットを使うということも、ポピュラー音楽の特徴ですね。これはまさにポピュラー音楽のイノベーションであり、いちばんの特徴かも。
民族音楽ではポリフォニックな打楽器はあまり使われず、ドラムセットによるリズムはすごく特殊に聴こえます。
さらにいえば、かならずドラムとベースをセットで使うことも特徴的。
シラビックな歌詞
ポピュラー音楽の歌詞は基本的にはシラビック(syllabic)
言葉で説明は難しいですが、1音節(シラブル)にひとつの歌詞を当てること。
例えば「ド~レ~ミ~ファ~」という4音のメロディーがあるとすると、「あーなーたーにー」と4つの言葉をのせるみたいなこと。
民族音楽は、1音節に複数の音をあてる(いわゆる”こぶし”のような)メリスマティックな歌も多いですね。
クラシックと民族音楽を聴かない理由がわかった
多くのリスナーは、こういう「広義のポピュラー音楽」が大好きなのだと思います。
「ノンジャンルで音楽は聴くけど、民族音楽やクラシックは聴かない」という人は、ただ単に自分が好みの音楽(広義のポピュラー音楽)を選んで聴いている
こういうふうに書くと「それはただのあなたの意見」「意味ないカテゴリ分けだ」と感じる人もいるでしょう。まぁそれはその通りです。
別に偏った音楽を聴くことをディスってる訳じゃないですから。
だからこそ聴いてほしいワールドミュージック
今回の投稿でなにが言いたいかというと、
デューク・エリントンの「音楽には二種類しかない。良い音楽と悪い音楽だ」という言葉にもし共感するなら、たまには自分がいつも聴いている好みのジャンル以外の音楽にも耳を傾けてほしいということです。
そういう人のうち、少しでも 「ワールドミュージックや民族音楽に興味を持ってくれるとうれしい」ですね。