NO WAR, STOP PUTIN

ロシアのウクライナ侵攻

2022年の2月末からロシアによるウクライナ侵攻がはじまり、このブログを書いている時点ではまだ戦闘が続いている状態です。

ロシアが常任理事国であるため有効な手が打てない何も国連や、加入国ではないウクライナへの軍事介入に及び腰のNATOなど、毎日のニュースを見ても歯がゆい状況です。

西側諸国においてはロシアへの批判一色ですが、音楽・芸術の世界においては、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者であるロシア出身のワレリー・ゲルギエフ氏が解任されたり、ソプラノ歌手であるアンナ・ネトレプコ氏がメトロポリタン・オペラから出演を拒否されたりもしています。

どちらのケースも、プーチン氏と距離を置くような発言を周りから求められ、それを拒否したことから起こった解任のようです。
いわゆる「踏み絵」を踏むことを拒否したのですね。

これまでの社会には「音楽と芸術は別のもの」という大前提が(それが多少はきれいごとだとしても)あったと思うのですが、今回のような緊迫した状況では、そういった声は完全にかき消されてしまっている感じです。
ロシアへの批判は当然のこととしても、彼ら/彼女らにもそれぞれ立場や人間関係、守るべきものがあるわけで、こういう個人への干渉が幅を利かすのはあまり良い気はしませんね。

その一方で、セルビア出身の映画監督であるエミール・クストリッツァは、国防相のシュグ将軍からロシア陸軍学術劇場の監督に任命されるという、ウクライナ侵攻の支持とも取れる行動をとっていましたね。
(エミール・クストリッツァはクリミア侵攻の時もロシアを支持する声明を出していたりもしましたしね)

No War, Stop Putin

そんな状況下にあって、いろんなメディアで取り上げられている音楽グループがウクライナのキエフをベースに活動するダカ・ブラッカ(DakhaBrakha)

女性3人と男性1人で構成され、ヨーロッパの主にワールド系の音楽フェスなどに出演するなどウクライナ出身のグループとしてはトップクラスに知名度があるグループです。
Bonnarooフェスに出演したこともあるみたい。

彼女たちは、何年も前からライブの最後に「プーチンを止めろ!」「戦争反対!」と訴えています。

この動画のサムネイルにもなっているイラストをライブ会場でも掲げていましたね。

この抗議行動は、直接的には2014年から続くウクライナ騒乱(=マイダン革命)とそれに続くクリミア併合といったウクライナを取り巻く情勢に対してのアクションでした。

ですが今回のロシアのウクライナ侵攻で、彼らが抗議してきたことが現実のものとなった形です。

彼女たちはロシア侵攻後の現在もまだキエフに住んでいるということです。当然、音楽が演奏できる状況では無いということですね。

マルチ・インストゥルメンタリストで男性メンバーであるマルコ・ハラネヴィッチもキエフに残り「地域の防衛に力を貸す」とメディアのインタビューに答えていました。

ダカ・ブラッカ

ダカ・ブラッカ(DakhaBrakha)は、キエフにあるDAKH現代美術センターのハウスバンドとして、演劇ディレクターであるウラジスラフ・トロツキーによって2004年に結成されました。

演劇との関わりはグループのパフォーマンスに強く影響を与えていて、彼らのコンサートもシアトリカルな舞台効果が特徴。
3人の女性メンバーの、白いウェディングドレスに背の高い黒いアストラカン帽をかぶるという衣装も印象的です。

メンバーは
Iryna Kovalenko ( vocal, djembe, bass drums, accordion, percussion)
Marko Halanevych (vocal, darbuka, didjeridoo, accordion, tro)
Nina Garenetska ( vocal, cello, bass drum)
Olena Tsibulska (vocal, bass drums, percussion, garmoshka)

メンバーがみんな多くの楽器をこなすところが特徴で、これも演劇のシーンに合わせてグループの演奏を合わせるためだと考えられます。
演奏を聴いていると、おそらくピアノ(=キーボード)やチェロなどクラシック系のトレーニングを積んできた人たちのようですけど、あまり楽器演奏のテクニックを聴かせるタイプのグループでは無いですね。

またメンバーは、民族音楽学者としてウクライナの民謡のメロディーとリズムを研究してきたそうです。遠征先の村々で地元の老人女性を訪ね、民謡を歌ってもらい、それを元に曲を作っているそうです。
そのウクライナ民族特有の素材をもちいて、ジャンベ(=アフリカ)やダルブッカ(=中東)などをミックスさせながら、彼ら独自の現代的でワイルドな音楽を創造していますね。

特に女性メンバー3人によるコーラスが特徴的で、胸を締め付けるような東欧特有のメロディーとあいまって非常に魅力的です。

その音楽性は地域的なものも大きいと思いますが、(ロシア支持の話題をあげた)エミール・クストリッツァの映画音楽で知られる、ゴラン・ブレゴビッチに近いかも。
ハデに盛り上がるブレゴビッチの音楽よりも、もっと抑制された「静かな情熱」みたいな雰囲気を持つ音楽ですね。

男性メンバーであるマルコ・ハラネヴィッチは今回のロシアによる侵攻について

「ウクライナ人が国家として消滅し、ウクライナの文化が消滅する危険性がある」

と訴えており、それも現実的な話となっています。

彼らはSNSで近況をアップしており、状況が好転することを願うばかりです。