David Krakauer(デビッド・クラカウアー)は1956年生まれのクラリネット奏者です。今日は彼の過去のアルバムをいっきに紹介。
クラカウアーは、クレズマーをベースに、ジャズやクラシック、アヴァンギャルドミュージックといった幅広いジャンルを高い演奏スキルで吹きこなすプレイヤー。
クレズマー・クラリネットプレイヤーとしてはすでにレジェンドクラスでしょうね。
1980年代のクレズマーリバイバルの代表的なグループであるクレズマティックスに、『Rhythm and Jews』『Jews with Horns』の2枚のアルバムで参加した後、自身のグループを組んで活動することになります。
ソロになってからはジャズやクレズマーだけでなく、クロノス・カルテットの共演、ラップトップによるビートの導入、JB’sのフレッド・ウェズリーとファンクテイストのグループの結成などなど、かなりバラエティ豊かな。
そんなクラカウアーのソロアルバムから5枚チョイスして紹介しますよ。
『Klezmer Madness!』(1995)
Michael Alpert(Accordion, Vocals)
David Krakauer(Clarinet, Bass Clarinet)
David Licht(Drums)
クレズマティックスを脱退してリリースしたソロ1作目のTzadik盤。
ほとんどの曲はクレズマーのトラディショナルソングで、かなりシリアスめな曲が並びます。
陽気なダンスチューンみたいなクレズマーを期待すると肩透かしかも。
また基本3人によるトリオ演奏なので、各メンバーのインタープレイの比重は高め。いや、もうとにかくかっこいいです。
Brave Old Worldのマイケル・アルパートと共演というのもかなり貴重です(たぶん)
『The Twelve Tribes』(2002)
Will Holshouser(Accordion)
Nicki Parrott(Bass)
David Krakauer(Clarinet, Horns [Shofar], Vocals)
Kevin O’Neil,Roger Kleier(Guitar)
Roger Kleier(Loops)
Kevin Norton(Percussion)
もしクラカウアーのアルバムを1枚だけと言われればこのアルバムを選ぶかも。
前作『A New Hot One』(←これも名作)でも聴かせてくれたノリが良いダンスチューンに、エレクトリックギター、エレクトリックベース、サンプラーによるループなどを加えて厚みを増し、よりダイナミックさを増しています。
クラカウアーの音楽はfestive(祝祭的、お祭り気分)と形容されることも多いのですが、このアルバムはもっともこの形容が似合っているかも。もう大音量でガンガン聴きたい音楽ですね。
クラカウアーのソロプロジェクトのコンセプトはこのアルバムでほぼ形になった感もあります。この後に一部メンバー変更もあり、シェリル・ベイリー(guitar)、Socalled(Loops)、Micheal Sarin(drums)が加入します。
このKlezmer Madness!のライブ映像はこちら
『Bubbemeises: Lies My Gramma Told Me』(2005)
このアルバムも、もう文句なく楽しい。
メンバーは『The Twelve Tribes』とほぼ同じと言って良いのですけど、サンプラーのSocalledを大きくフィーチャーしたアルバム。彼はかなりの曲でコンポーザーとしてもクレジットされています。
全編に渡ってサンプリングやヒップホップっぽい 打ち込みビートがフィーチャーされていて、祝祭感がさらに増しています。
それにしてもどんなバックトラックにも違和感なく合わせてガンガンに盛り上げるクラカウアーの引き出しの多さはさすがですね。
『The Big Picture』(2015)
ウディ・アレンやロマン・ポランスキーなど、ユダヤ系監督の映画で使われた曲を演奏した映画音楽集。Tzadikでやっていてもおかしくない感じの企画盤。
ウディ・アレンの『Midnight in Paris』でフィーチャーされていた「Si Tu Vois Ma Mere」のように、戦前から続く古き良きアメリカ音楽への愛情にあふれたアルバムですね。
クラカウアーのアルバムの中では最もクレズマーっぽさのないアルバムかも。
『Pruflas (Book Of Angels Volume 18)』(2012)
クラカウアーが第二期マサダに参加した時のアルバム。
マサダはふだんクレズマー/ユダヤ音楽とは接点のないジャズ系の人が担当することも多いです。その意外性がマサダシリーズの魅力でもあるのですけど、このアルバムはまさに本職のクラカウアーを起用していて、意外性よりも安定のアルバム。
シェリル・ベイリーのディストーションギターがかなりフィーチャーされている印象ですね。
このアルバムは第二期マサダでもトップクラスに良いアルバムだと思いますし、ゾーンも参加したくなったのか1曲(ノンクレジットで)参加していますね。