日本のシティポップが海外で人気沸騰
今日の投稿は、Web記事やSNSなどで前からちょっと気になっていた「シティポップ」の話題。
音楽関係のインターネットメディアで、「日本のシティポップが海外で話題」という記事を読んだ人も多いんじゃないかと思います。
個人的には「〇〇がいまアツい」みたいな記事を読むと「ホントに流行ってんの?」と疑ってしまう性格なので、シティポップ人気についてもいつか確認しようしよう思っていて、今回調べてみました。
シティポップとは?
シティポップというと、山下達郎らに代表される70~80年代に発表された日本のポップスのこと。
今年2019年7月に、シティ・ポップのディスク・ガイド『シティ・ポップ 1973-2019』という本が、ミュージック・マガジンよりリリースされました。
日本のweb記事などでシティポップについての話題が多くなったのは、ちょうどこの本のリリース前後なのだろうと思います。
この当時、いろんなメディアのいろんな記事があふれていましたが、シティポップの海外人気については、このローリングストーン誌の記事にだいたいまとめて書かれています。
シティポップの海外人気について書かれていることをざっくりまとめると
・シティポップが海外で人気沸騰している
・シティポップはVaporwave/FutureFunkの元ネタとして再注目されている
・竹内まりやの「Plastic Love」は今のシティポップのアンセムになっている
ということみたいですね。
ほとんどのweb記事の内容は基本的にこのローリングストーン誌と同じことしか書いていないと思います。
シティポップは ”どの程度” の人気?
このローリングストーン誌のような記事を読んで気になるのは
「どれくらいの数の」海外リスナーがシティポップに夢中なのか?
「世界中のリスナーが虜になっている」というのは本当なのか?
ということ。
ローリングストーン誌の記事にも「シティポップが”世界中のリスナーを虜”にしている」ことのソース情報は書いていないんですよね。
唯一、「シティポップが海外でブーム」という根拠として、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」の動画が2000万回以上再生されて拡散した、という出来事があげられています。
竹内まりやの「プラスティック・ラブ」
このローリングストーン誌の記事では、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」についてこう書いています。
昨年、極めて優秀なYouTubeのリコメンデーション・アルゴリズムによって、竹内まりやの1984年作「プラスティック・ラブ」は何百万という再生回数を記録した。こういった現象について、Redditのユーザーquippedはこうコメントした。「シティ・ポップ、またの名をyoutuberecommendationcore」
https://rollingstonejapan.com/
要は「プラスチック・ラブ」に代表されるシティポップは、YouTubeという新たな拡散ツールによってメインストリームとなったと言いたいのだろうと思います。
こうやって書くと確かに竹内まりやの曲が全世界で認知されたように思ってしまうのですけど、実際のところは少し違うようです。
Googleトレンドで「Takeuchi Mariya Plastic Love」の検索ワードを調べると、数多く検索されている国は、韓国、フィリピン、香港、シンガポール、インドネシアだそうです。
そんな話、知ってました?
韓国での拡散
こちらの文春の記事に詳しく書かれているのですが、実際のところシティポップがブームになっているはほとんど韓国のようです。
もともと韓国では”シブヤ系”に代表される日本のイージーリスニング音楽のニーズがあったそうで、そういう日本の音楽を好む層の興味が、いまは「シティポップ」にスライドしているとの指摘です。
「プラスティック・ラブ」が驚異的にバズったのも、韓国のあるソロアーティストの曲が「プラスティック・ラブ」に似ているために発禁になった、といった話題があってのことだそうで、曲の魅力以外にバズる要因があってのことではあるようです。
2000万回という再生数はもちろん韓国以外も含まれているのですが、おもに韓国から火がつき閲覧数が増えることでフィリピン、香港、シンガポールなどにも飛び火した、という事情はありそうです。
こういった数字を見ると「プラスティック・ラブ」が「世界的」なブームとなった訳ではなさそうです。
そうなると、そもそもシティポップの「世界的」ブームという話にも疑問符がつきそうです。
(だってプラスチック・ラブ以外に具体的なブームの例はどこにも出てきませんし)
もしシティポップの人気について、なにか確実に言えることがあるとすれば
・シティポップと呼ばれる音楽は韓国では以前から人気があった
・竹内まりやの「プラスティック・ラブ」は韓国発でバズった
ということくらいです。
Night Tempoさんという韓国人DJがシティポップを元ネタにしたFuture Funkをプレイするのも、こういった韓国の音楽事情を考えると自然なことじゃないでしょうか。
「シティポップが世界中で人気」の嘘
つまり「シティポップは世界中のリスナーを虜にしている」というのは、もうタイトル詐欺じゃないかな?とは思うんですよね。
実際には、この記事にもこのように書かれています。
「恐らくヨーロッパやアメリカには、“数千人”の(シティポップ)ファンがいるんじゃないかな」
つまり、少なくとも欧米に限定するとシティポップファンの数はかなり少ないと考えたのが妥当です。
「プラスティック・ラブ」みたいな特殊な例を引き合いに「シティポップ世界中で人気」とタイトルを付け、続けてタイラー・ザ・クリエイターが山下達郎をサンプリングしたみたいなエピソードにつなげたりすると、読んだ人は「あぁ、欧米の人たちにシティポップが人気」と勘違いしちゃいますよね。
こういうのは、簡単にいうとシティポップを流行らせたい人が結論ありきで作ったミスリードなのだと思います。
こういう作られたブームにすごく違和感を感じるのは、記事を書いている人に「欧米に認められるモノが価値が高い」という前時代的な考えがあるからじゃないかと思いますね。
終わりに
日本のシティポップがめぐりめぐって韓国、フィリピン、香港、シンガポールなど東南アジアで聴かれ続けることはステキなことだと思いますし、Future Funkといった形でリミックスされるのも(個人的には好みの音楽ではないですけど)斬新だと思います。
『シティ・ポップ 1973-2019』が話題になったり、ここで取り上げられている旧作の売り上げがアップしたりしたのかもしれませんけど、やっぱり「シティポップが世界中で(欧米で)人気」みたいなあおり文句はやめた方が良いんじゃないかな、と思うんです。