「The Book Beri’ah」全11作の第2作目は、グラインドコア/メタルグループのClericが担当です。
Personnel
Dan Kennedy (bass)
Larry Kwartowitz (drums)
Nick Shellenberger (keyboards, vocals)
Matt Hollenberg(guitar oud)
ClericというグループはTzadikレーベルからアルバムを出すのは今回が初めてですね。
ただ、ギターのMatt Hollenbergはかなり多くのアルバムに参加しています。
こちらはCleric名義のアルバム『Retrocausal』
Matt Hollenberg on Tzadik Labels
『Simulacrum』
John Medeski: Organ
Kenny Grohowski: Drums
Matt Hollenberg: Guitar
Matt Hollenberg参加でいちばんレコーディングが多いのはSimulacrum Trioですね。
このグループで6枚ものアルバムをレコーディングしています(アルバムによって追加ゲストメンバーあり)。
同じ編成で6枚というのはTzadikレーベルではかなり多い数字ですね。
Mike PattonがヴォーカルのMoonchildとともに、一時期このグループがJohn Zornのハードコアな部分を一手に引き受けていたとも言えます。
Insurrection Project
Trevor Dunn (Bass)
Kenny Grohowski (Drums)
Matt Hollenberg (Guitar)
Julian Lage (Guitar)
その他、Julian LageとのツインギターのInsurrection Projectで、『Insurrection』『alem, 1692』の2枚のアルバムをリリースしています。
このグループはSimulacrum Trioより少しハードコアテイストが薄めで、メロディアスでクリーンなギターの音色を聴かせるような曲も多いですね。
この2グループどちらともドラムはKenny Grohowski で共通です。Trevor DunnはSimulacrum Trioの2枚のアルバムにも参加していたり、Matt Hollenberg参加のアルバムは枚数が多い割に参加ミュージシャンは重複しています。Hollenbergはけっこう共演者を選ぶタイプなのかも。
あえてのCleric
この『Chokhma』でも、これまでのようにSimularcam Trioに演奏してもらうこともできたと思うのですけど、ここでZornがあえてClericオリジナルメンバーでのレコーディングを選択したのには何かしら意図があるのでしょう。
Masadaはミュージシャンにとっては制約の多い「やりづらい」プロジェクトだと思います。あらかじめカッチリ作曲されているし、ユダヤ旋法を使うことでクレズマー風のカラーが付いてしまいますし。
ClericみたいなグラインドコアなグループはMasadaのイメージとは全くかけ離れたところにいるので、彼らを起用することで今まで聴いたことのないMasadaを表現できるとZornは考えたのかも。
Simularcam Trioのメンバーだと、各メンバーのMasadaプロジェクト参加も多くて、おそらく「ちゃんとした」演奏になると予想してあえて今回は見送ったのでしょう(ここらへん適当な推測)
チャレンジ企画というか1度きりのセッション的な扱いで、結果的にいまいちハマらなくてもそれはそれでしょうがないとZornは考えたような気がします。
肝心のClericの演奏はというと、Masadaメロディーは基本的にギターのMatt Hollenbergに担当させています。
ヴォーカルはスクリーミングをひたすら続け、ドラムとベースはテクニックよりもノリ重視でバシバシでかい音でいつも通りのClericサウンドを聴かせてくれます。
HollenbergによるMasadaのメロディーも違和感なくアレンジされていて、大音量で聴くと盛り上がってカッコよいです。
ただもしTzadikから次のアルバムに起用されたとしても、今回のアルバムで聴かせた以外の演奏のヴァリエーションは無さそうな気もしますね。