セシル・マクロリン・サルヴァントは2022年にアルバム『Ghost Song』をリリースしました。このアルバムについてはこちらに書いています。
以下の文章は、以前に書いた彼女の紹介ブログ投稿になります。
現在のジャズミュージシャンの中でも、最も評価の高いアーティストと言えば Cécile McLorin Salvant
評価の高い「ヴォーカリスト」じゃないですよ。全ての楽器を含めても「最高」だと言えます。
彼女は2010年に若干21歳でセロニアス・モンクコンペティションで優勝したことを皮切りに、『For One to Love』(2016) 、『Dreams and Daggers』(2018)のアルバムでグラミー賞ジャズヴォーカル部門の受賞をしています。
ジャズ専門のダウンビート誌の批評家投票でも、並みいる楽器奏者を抑えて2018年に『Dreams And Daggers』でベスト・ジャズアルバム賞を、2019年にはJazz Artist of the Yearを受賞しており、(少なくともダウンビートの評価的には)ジャズシーンのトップにいると言っても良いでしょう。
2010年のモンクコンペからわずか10年足らず、若干30歳でジャズシーンのトップに立った本当に稀なミュージシャンです。
クラシックを学び、渡仏
彼女はハイチ出身の医者である父親と、フランス出身で教師の母親という環境で育ったそうです。彼女はフランス語ネイティブですね。
SNSもフランス語で書いています(アメリカで活動してるのに、、)残念ですけどちょっと書いているか良くわかりません。育ちはマイアミだそう。
彼女の生まれ育った家ではハイチの音楽やジャズなどが普通に流れていたようです。
ただ彼女はクラシックピアノを5歳の頃から習ったそうで、8歳から地元の聖歌隊でも歌い始め、このころから本格的なクラシックのヴォーカルレッスンを受けるようになったみたい。
2007年(18歳の時)にフランスに渡りDarius Milhaud Conservatory(※)で本格的なバロック声楽を学んだそうなのですが、クラシック音楽を学ぶタイミングで逆に彼女の音楽的な興味はジャズ・ヴォーカルにシフトしていったそうです。
※ダリウス・ミショーという作曲家はクラシックに疎くて良く知らないのですが(フランス6人組ってなに?)、デイブ・ブルーベックは数年にわたり彼から音楽理論を学んだそうです。ブルーベックの変拍子なども彼の影響らしく、リズムへのこだわりなどジャズフィールドにも近い理論なのかも(適当)
彼女がジャズ・ヴォーカルに活動をシフトさせた後に最も影響を受けたのはSarah Vaughanだそう。
彼女のヴォーカルはまるで、、ウィントン
彼女のヴォーカルの特徴はと言うと、
・クラシックからの影響を感じさせる「正確なピッチ」
・音数を減らし、その代わり細部まで完璧にコントロールするスタイル
・Sarah Vaughanという過去の偉大なミュージシャンへのリスペクト
こうやって書くとまるでウィントン・マルサリスみたいですよね。
実際に彼女はマルサリスのリンカーン・ジャズ・オーケストラとも共演していますね。
これはJazz in Marciacでサルヴァントがウィントンとの共演した際の映像。
地元フランスということで母語フランスで歌っています。めずらしい!
もはやカリスマの風格
今のジャズヴォーカリストで、サラ・ヴォーンやカーメン・マクレイのようなトラディショナルなスタイルで歌う人はむしろ少ないのだろうと思います。もっとフォーキーな、乱暴な言い方をすればジョニ・ミッチェルを通過したようなスタイルが多いかも。
そういう世の中の流れを意に介さず、圧倒的な実力でまわりを納得させる姿はカリスマ的な存在感も感じられます。
そういうテクニック的な面は別として、彼女のハイトーンでたまにキュートなところもある声質も個人的にすごく好みです。
グラミーの授賞式もすごく緊張してて、ひたすらサリヴァン・フォートナーと関係者への感謝を言う、すごくピュアな人柄が出ていて大好きになりましたよ♪
彼女のアルバムはあくまで彼女のヴォーカルがメインであって、どのアルバムから聴いても良いと思います。
選ぶなら「スタンダードナンバーやカバーで好きな曲が聴ける」アルバムで良いかも。
ただ本格的なレッスンを受けてきた彼女の作曲も聴きどころで、アルバムの中で過去の名曲に違和感なく馴染んでいますね。
最後はTiny Deskのライブ。今回はたくさん動画貼っちゃいましたね。