現在のジャズ界で最も著名と言っても過言ではないドラマーのブライアン・ブレイドが、自身のグループであるブライアン・ブレイド・フェローシップを率いてリリースした新作『Kings Highway』
日本では彼らのアルバムはかなり評価が高くて、特にセルフタイトルの1stアルバム『ブライアン・ブレイド・フェローシップ』(1998)と2ndアルバム『Perceptual』(2000)はガイド本などでも頻繁に紹介されていた印象です。
彼らのアルバムはあまり好んで聴いてこなかったのですが、今作はもう素晴らしい出来ですね。もうグループの印象が180°変わりました。
ブライアン・ブレイド・フェローシップがデビューしたのもう25年前で、この間メンバーをほぼ変えることなく続いていますが、彼らの活動を振り返ってみると、評価の高かった初期2枚と、それ以降のアルバムとで大きく印象が違いますね。
初期2枚の印象がその後のアルバムと違うのは、1stのジェフ・パーカー、2ndのダニエル・ラノワ(とDave Easleyというペダル・スティール奏者)というギタリストの存在が特徴的だったからでしょう。
アンビエント・ギター的な装飾音も効果的に使い、フォーキーな面もありつつ映画音楽風のドラマチックなアルバムだったと思います。
いま聴くと明らかに「ジャズではない何か」であり、まさにそこが評価されていたのかも。
リアルタイムで聴くと違う印象だったのかもしれませんが、後追いで聴いたこともあり、あまりピンと来ませんでした。
自分でアルバムレビューを書いているといつも感じるのですが、作品の印象を伝えるのに「他といかに違っているか」ということを重視しがち。ほかと違っているアルバムについては圧倒的に文章を書きやすいのですけど、本来それは音楽の良し悪しとは関係のはない話ですので。
その後、8年の期間を経てリリースされた3rdアルバム『Season of Changes』(2008)以降は、グループとして別のフェーズに入った印象です。
メンバーはほぼ同じなのですが、ギターがカート・ローゼンウィンケルのみになったのがやはり大きいのかも。
2ndまではさまざまな要素をブレンドした「フェローシップ風」とでもいえるような独自の音楽を作っていた印象ですが、3rd以降は、グループのカラーを残しつつ、曲ごとに、アメリカーナ風、フュージョン風、いわゆるコンテンポラリー・ジャズ風と、既存のジャンルをうまくアクセントとしてブレンドするようになったと思います(誤解をおそれずに言えば「普通の」グループに近づいた印象ですが)
今回のアルバム『Kings Highway』もそうした3rdアルバム以降のコンセプトを踏襲しているようですが、これまでに比べて早めのテンポと爽快感のある曲が心地よいアルバムになっていました。
一瞬パット・メセニー・グループかと思うようなちょっと70年代風のラテン・フュージョンっぽい展開も聴けるのですが、このあたりはローゼンウィンケルの好みが反映されているのかもしれません。
他にもフェローシップというグループにしては珍しい長めのギターソロがあったりと、今作はとりわけローゼンウィンケルが目立っていた印象でもあります。