「ジャズファンは なぜブームに流されやすいのか」
こんなこと書くと、サラリーマンが読むビジネス書みたいですね。
「なぜ、さおだけ屋は潰れないのか」みたいな。
たいていああいう本ってタイトルと中身が実はぜんぜん違うことも多いんじゃないかと思うんですけど、今日のわたしの投稿もまぁそんなものかもしれないですね。
カマシ・ワシントンは新しいジャズなのか
前回カマシ・ワシントンについての投稿を書いた時(こちら)に、引用元の記事に「新しいジャズとは」といった内容が書かれていました。
たしかに70年代くらいまではフリージャズやフュージョンなどの新しい音楽が次々に現れてはシーンがドラスティックに変化して、常に「新しいジャズ」が生まれていた時代でした。
こういった新しいスタイルは流行が落ち着いた後も、確実に後の音楽に影響を与えていたし、フリージャズ的なアプローチはいまとなってはメインストリームになっているとも言えます。
後の時代になって「あの時ジャズが変わった」ということは簡単なのだと思うのですけど、実際にその時代を生きていた人がどれだけそれを認識していたかは疑問です。
「これが未来の音楽だ」といって実は見込み違いだったことも多かったんじゃないでしょうか。
いま「新しいジャズ」と言われているカマシ・ワシントンやロバート・グラスパー、サンダーキャットなどの音楽が、本当に今後もジャズシーンに根付く音楽なのか?は素朴に疑問です。要は「一過性のブームじゃないの?」ということ。
(個人的にはカマシ・ワシントンは特に好みではないので、シーンに根付かなくてもかまわないのですが、、)
革新かブームか
そういうことを考えていると、ふと「これまでどんな音楽が”新しいジャズ”と言われてきたんだっけ?」と思って、ちょっとネットで調べてみました。
そもそも90年代・ゼロ年代以降になると、ジャズに限らずロックなどの全てのジャンルを含めて「新しい音楽は生まれなくなってきた」ようです。
そんななかでも、ジャズの世界ではゼロ年代以降も新たなブームというか、サブジャンルがけっこう話題になっていたようです。
代表的なところでは
ジャムバンド(Organic Groove?クラブジャズ?)
フューチャージャズ(=Nu Jazz?)
ですかね。
フューチャージャズなんて、まさに名前からして新しいじゃないですか!
わたしはリアルタイムにこの時の話題を経験している訳じゃないのですが、今でもよく名前は聞きますよね。
こういうブームって雑誌などの紙メディアでも盛り上がっていたと思いますし、
多くのリスナーは「これが”次世代の”ジャズなのか!!」とその当時は感じていたんじゃないでしょうか。
こういう話題って今になって振り返るとどう感じるんでしょうね。
本当に「次世代のジャズ」だったのか、一過性のブームだったのか、どっちだったのか。。
ジャム・バンド
たとえば、ジャムバンドとして紹介されて今でも活躍しているのはメデスキ・マーティン&ウッドくらいじゃないでしょうか。
他にもクリッターズ・バギンとかディープ・バナナ・ブラックアウトといったグループもいましたね。
いまでも彼らのような(MM&W以外の)グループ、を今でも聴いたり他の人にレコメンドする人なんていないんじゃないかな?
フューチャー・ジャズ
フューチャージャズもジャムバンドと似たような状況かも。
wikiを見るとたくさんの関連ミュージシャンの名前があがっていますね。知らない名前もたくさんあります。
ただ、今でも話題になったり聴かれているミュージシャンって、Nils Petter MolvaerとBugge Wesseltoftくらいでは?
Moalvearは個人的にはフェイバリットで、フューチャー・ジャズってただただ、Molvear人気に乗っかってただけな気もする。
この音源はFila Brazillia (みんな今でも聴いてる??)
Future of Future Jazz
少なくともジャムバンドとフューチャージャズを見てみると、それが「次世代のジャズ」とはならずに、一過性のブームで終わってしまったという評価が妥当なんじゃないでしょうか。
MM&Wやニスル・ペッター・モルヴェルなど、一握りのミュージシャンの人気に引っぱられたブームといった側面の方が強かったのかも。
当時話題になった多くのミュージシャンは泡と消えていって、当時のアルバムを聴き返すリスナーはほとんどない、というのが現実じゃないでしょうか。
そもそも誰が「流行ってる」って言い出しだんだっけ?
こういうブームって、だいたい雑誌や評論家が新しいリスナーを開拓したくてはじめるものだと思うんですよね。
ちょうど最近、ミュージックマガジンに「1969-2019:50年のジャズ・アルバム・ベスト 100」という、モダンジャズ/ハードバップ以降で歴史的に意義のあるジャズアルバムを選ぶという企画が話題になりました。
でもこのランキングって、ジャムバンドやフューチャージャズの中からなんてほとんど選ばれていないじゃないですか。
こういうのを見ると、雑誌などでこれまでさんざんプッシュしておきながら、
「いやさ、紹介はしたけどさ、オールタイムベストだとか歴史的な名盤だとか、そこまでのつもりじゃ無かったんだよね、へへへ」
って後で言い訳されているみたいじゃないですか?
SNSはジャズリスナーを幸せにするかも(しないかも)
ただ、もう今後はこういうわかりやすい形でのブームって起こらないんだろうと思いますね。
そもそも音楽リスナーの中で雑誌のプライオリティが下がっているし(そもそも雑誌も減ってるし)、みんなSNSの口コミとかを重視する人も多いですよね。
かつて雑誌などが持っていた影響力がSNSのインフルエンサーに移っただけと言えるかもしれないけど、サブスクやYouTubeで簡単に音源を聴けることで、リスナーの好みで無い音楽は淘汰されやすくなっているんでしょう、きっと。
ふたたびカマシ、グラスパー
カマシ・ワシントンやロバート・グラスパーの音楽が人気なのはわかるのですけど、彼らの突出した人気ぶりを見ると、彼らの音楽が「次世代のジャズか」というのは「ちょっと違うんじゃない」とは思うんですよね