まずこのSNS投稿をご覧ください。
— Bombay Jayashri (@Bombay_Jayashri) January 26, 2021
ボンベイ・ジャヤシュリ(”Bombay” Jayashri)のアーティスト名で知られるインドの古典声楽家Jayashri Ramnathさんが、インド政府からパドマ・シュリー勲章を受章したという内容のSNS投稿です。
今回のブログで言いたいことはただひとつ、「ジャヤシュリさん、おめでとうございます」ということ。
この投稿が2021年の1月26日ですが、その後には受章をお祝いするメッセージがインド中のみならず世界中から届いていました。
たくさんのお祝いメッセージにジャヤシュリさんもできるだけたくさん返信をしていました。
非常に心温まるやり取りで、見ていてほっこりしてしまったのですが、こういうのがSNSの良さだな、と。
ジャヤシュリさんは個人的にもインド古典の女性ヴォーカリストの中でも大好きなひとりだったので、なんだか自分のことのようにうれしいです。
インドの古典声楽では、男性の声に近い低いキー(インド音楽でキーという表現が正しいのかわからないですけど)で歌う女性が多いのですけど、ジャヤシュリさんは割と女性が出す自然な高さで歌っています。
そういう意味でインド古典っぽさは希薄なのかもしれないですけど、そのナチュラルな感じの歌も良いですね。
パドマ・シュリー勲章
パドマ・シュリーという勲章は日本で言うと紫綬褒章とかにあたるのでしょうか。
今回の受章を聞いて「Bombay Jayashriさんってそんな勲章をもらうほどビッグネームの人だったんだね」と少しびっくりしました。
インド古典音楽は、自分のような日本に住んでいるリスナーにとってはミュージシャンの人気具合とか知名度とか、言ってみれば”格”みたいなのも良くわからないのですよね。
まあこういう勲章は別に音楽的に他の人より優れているから選ばれている訳でもないみたいですからね。社会貢献とか知名度とかそういったことも込みで送られるもののはずなので。彼女は古典声楽の教師でもありますし、「Voices Within」という本を書いたり、長編カーナティック音楽映画「Margazhi Ragam」に出演するなど文化的な貢献が認められたということのようです。
インド市民に送られる勲章
インドで市民に送られる勲章には、位が高い順に、バーラト・ラトナ(Bharat Ratna)、バドマ・ヴィブーシャン(Padma Vibhushan)、パドマ・ブーシャン(Padma Bhushan)パドマ・シュリー(Padma Shri)があります。
今回ジャヤシュリさんがもらうパドマ・シュリーは4番目に高い勲章ということになります。
今回は過去にインド古典音楽家に送られた勲章を紹介しますね。
バーラト・ラトナ(Bharat Ratna)
最も位が高いのはバーラト・ラトナ(Bharat Ratna)といい、これは日本で言う国民栄誉賞くらいの勲章ですかね。音楽関係では以下の5人のみ
M. S. Subbulakshmi (carnatic vocal)
Ravi Shankar (Sitar)
Bismillah Khan (Shehnai)
Lata Mangeshkar (playback singer)
Bhimsen Joshi (vocal)
シャハナイのBismillah Khanはこの並びに入るのはちょっと意外な気もしますね。
バドマ・ヴィブーシャン(Padma Vibhushan)
2番目に高い勲章であるPadma Vibhushanの音楽関係の受章者はこちら
Ustad Allauddin Khan (sarod)
Birju Maharaj (Kathak dance)
Ali Akbar Khan (sarod)
Hari Prasad Chaurasia (bansuri)
Shiv Kumar Sharma (Santoor)
Amjad Ali Khan (Sarod)
Kishan Maharaj (tabla)
Kishori Amonkar (vocal)
Ram Narayan (sarangi)
Ghulam Mustafa Khan (vocal)
Chhannulal Mishra (vocal)
Asha Bhosle (playback singer)
Allauddin Khanなどはもう伝説とも言える歴史上の人物というイメージでしたけど、1950年代くらいには高齢ながらまだ存命で受章していたのですね。
その他のメンバーは納得の人選かも。
タブラ奏者としてはキシャン・マハラジが最も高い勲章をもらっている形です。なるほど。
ちなみにシタールのVilayat Khanですが、Padma Vibhushanの受章を辞退しているようです。
自分以外に選ばれている音楽家の選考基準が気にいらなかったからとか、ライバル視していたラヴィ・シャンカルとの序列が気に入らなかったからとか、いろいろ言われているようですが。
ミュージシャンの組合の労働争議とかで行政と対立したみたいな話も聞きますし、政府にあまり良い印象を持っていなかったのかも。
当時首相のインディラ・ガンジーさん直々の受章連絡の電話を「いま練習中だから」と受け取らなかったからとか。まあ気難しい人だったという話は良く聞きますしね。
パドマ・ブーシャン(Padma Bhushan)
3番目に位の高いパドマ・ブーシャン。人数も多いのですが、もう全部リストアップしちゃいます。ほとんど自分のための備忘録でもあります。
リストの中で現役で活動している音楽家の人はだいたい名前を聞いたことありますが、20年~30年前の受章者はすでに亡くなっていたりして初めて名前を聞いた人も多くて、勉強になりますね。
この受章者一覧を見ても器楽奏者よりもヴォーカリストを多く、やっぱりインド音楽はベースが声楽にあるのだな、と再確認できますね。
Ajoy Chakrabarty (vocal)
Sultan Khan (sarangi)
Nookala Chinna Satyanarayana (carnatic vocal)
M. S. Gopalakrishnan (violin)
T. V. Gopalakrishnan (vocal)
Abdul Rashid Khan (vocal)
Begum Parveen Sultana (vocal)
T. H. Vinayakram (ghatam)
Gokulotsavji Maharaj (vocal)
Sudha Ragunathan (carnatic vocal)
Vishwa Mohan Bhatt (indian guitar)
Arvind Parikh (sitar)
Budhaditya Mukherjee (sitar) ※以前ブログで取り上げた大好きなシタール奏者
L. Subramaniam (violin)
Shobha Gurtu (vocal) ※トリロク・グルトゥのお母さんですね。
Zakir Hussain (tabla) ※ザキールはパドマ・ブーシャン
P. S. Narayanaswamy (carnatic vocal)
T. V. Sankaranarayanan(carnatic vocal)
Umayalpuram K. Sivaraman (mrighandam)
Sabri Khan (sarangi)
Ustad Ghulam Mustafa Khan(vocal)
Jasraj (vocal)
Samta Prasad (tabla) ※こうやって並べてみるとプラサドはかなりのビッグネームなんだね、と再確認
Basavaraj Rajguru (vocal)
Debu Chaudhuri (sitar)
T. N. Krishnan (violin)
C. R. Vyas (khayal)
Sundaram Balachander (veena)
Khadim Hussain Khan (vocal)
V. G. Jog (sitar)
Jnan Prakash Ghosh (harmonium,tabla)
Nikhil Banerjee (sitar) ※ニキル・バネルジーはもっと高い勲章あげなくて良いのかな?
Ahmed Jan Thirakwa (tabla) ※ティラクワももっと高い勲章あげなくて良いの?
Amir Khan (vocal)
Nissar Hussain Khan (vocal)
Krishnarao Phulambrikar (vocal)
Krishnarao Shankar Pandit (vocal)
Begum Akhtar (vocal) ※彼女は大ファンなんです。
Mallikarjun Mansur (vocal)
Kumar Gandharva (vocal)
K. S. Narayanaswamy(veena)
Hafiz Ali Khan (sarod)
Bade Ghulam Ali Khan (vocal)
Rahimuddin Khan Dagar (Drupad Singer)
Semmangudi Srinivasa Iyer (carnatic vocal)
Kesarbai Kerkar (vocal)
Mushtaq Hussain Khan (vocal)
Ariyakudi Ramanuja Iyengar(carnatic vocal)
パドマ・シュリー(Padma Shri)
そして4番目に位の高いパドマ・シュリー。
Ulhas Kashalkar (vocal)
Gundecha brothers (vocal)
Suresh Talwalkar (tabla)
Vijay Ghate (tabla)
Shahid Parvez Khan (sitar)
Tripti Mukherjee (vocal)
Purna Das Baul (vocal)
Vijay Kichlu(vocal)
R. N. Tharanathan and R. N. Thyagarajan (vocal)
Shubha Mudgal (vocal)
Mani Krishnaswami (carnatic vocal)
Shafaat Ahmed Khan (tabla) ※はじめて聴いたタブラ奏者。インド音楽好きにしてくれた恩人かも。
Kadri Gopalnath (sax)
Hariharan (vocal)
Sikkil Sisters (vocal)
Neyyattinkara Vasudevan (carnatic vocal)
Ghulam Sadiq Khan (vocal)
Mehmood Dhaulpuri(harmonium)
Pankaj Udhas (ghazal)
Rashid Khan (vocal)
Gayatri Sankaran (carnatic vocal)
Sirkazhi G. Sivachidambaram(carnatic vocal)
Aruna Sairam (vocal)
Maharajapuram Santhanam (carnatic vocal)
Ghulam Mustafa Khan (vocal)
Hafeez Ahmed Khan (vocal)
U. Srinivas (mandolin) ※シュリニヴァース!シュリニヴァース!
Namagiripettai Krishnan (Nadaswaram)
Sharafat Hussain Khan (vocal)
Mavelikara Krishnankutty Nair (Mridangam)
Ram Chatur Mallick (vocal)
Lalgudi Jayaraman (violin) ※彼はジャヤシュリさんの師匠にあたります。
Ramanathapuram C. S. Murugabhoopathy (Mridangam)
Manik Varma (vocal)
K. V. Narayanaswamy (vocal)
Sheik Chinna Moulana (nadhaswaram)
Alla Rakha (tabla)※アラ・ラカもPadma Shri