ブルガリアからニュー・オリンズへの旅路

Blato Zlatoはニュー・オリンズを拠点に活動する、バルカン音楽グループで、2019年の年末に1stアルバム『In The Wake』をリリースしています。

新作というほど最近ではないのですが、ワールド系は新人グループのアルバムがいきなり話題になることも少ないし、このアルバムもじわじわと海外のワールド系チャートなどで話題となったようです。

Personnel
Lou Carrig – Accordion, Vocals
Ian Cook – Violin
Ruby Corbyn-Ross – Vocals, Riq
Janie Cowan – Upright Bass
Annalisa Kelly – Vocals
Boyanna Trayanova – Tapan (Percussion)

この1stアルバム以前には、2017年に『Swamp Gold』というEPをリリースしているようです。
ちなみにグループ名のBlato Zlatoという名前は、ブルガリア語で“Swamp Gold” (沼にあるゴールド?)という意味みたい。

このグループはブルガリアのフォークソングをベースにしたオリジナル曲を演奏していて、中心となるのは女性3人によるコーラスです。
クレジット上は、この3人のコーラスにアコーディオン、ヴァイオリン、ウッドベース、タパン(ブルガリアのパーカッション)などが加わります。
とはいえ、あまりバンドサウンドはしないですね。目立つのはアコーディオンくらいで、ベースやパーカッションは割と控えめでシンプル。あくまで3人のコーラスによるハーモニーが売りのグループみたい。

ブルガリアにはエスニックな音階をもとにした不協和音が特徴的な合唱の伝統があるのですが、3人という小編成によるハーモニーワークは(かつてこのブログでも取り上げた)トリオ・ブルガルカなどに近いイメージかもしれません。

トリオ・ブルガルカは、リードシンガーのヤンカ・ルプキナなどブルガリア全土から選ばれた歌手たちで構成されていたこともあり、技巧的にハイレベルなヴォーカルが聴けました。自在に変わるテンポにばっちりと合わせ、美しいコーラスと不協和音を行き来しつつなめらかにつなぐさまは脅威でした。

それに対してBlato Zlatoの3人の歌はよりシンプルでフォーキーな感じですね。バック演奏とのアンサンブル重視なのでしょう。。
あとフォークソングっぽいですけど実はオリジナル曲ということみたいですけど、曲の良さはこのグループの特筆すべき点ですね。東欧的なメロディーを効果的に使った、印象的で耳に残る曲が多いですね。

それにしても1stアルバムをリリースしたばかりだからなのか、ニュー・オリンズでバルカン音楽というニッチなジャンルを演奏しているからなのか、このグループの情報は思いのほか少ないですね。
ジャンル的にはわたしの好みにピッタリだしすごく良いグループだと思いますが、ガンガン売れてるとはとても思えないので、2ndアルバムを出す前にこのままフェードアウトしてもおかしくないかも、とも思います

あとプロモーション動画やインタビューなども少しチェックしたのですが、ちょっとエコロジー系な感じもしますね。
「温暖化による気候変動など、いま地球が危ない!」 みたいな。
こういうのはどうなんでしょうね?こういうイメージがあるとディープ・フォレストとか聴いてるファン層が買うのかな?