今年2020年は、ジョン・ゾーンのグループ、ネイキッド・シティの1stアルバムがリリースされてちょうど30年という節目の年です。
1stアルバム「Naked City」は、現代音楽からハードコア/スラシュメタルまで、ジャンルごとの垣根を横断してしてめまぐるしく移り変わるゾーンの音楽スタイルのまさに原点といえるアルバムですね。
その後のゾーンは、マサダという新しい活動の軸を加えつつ、それぞれのジャンル要素を解体して、信頼するミュージシャンに演奏させていくというスタイルを取っていくことになります。
そんなゾーンのめまぐるしくハイスピードでハイテンションなハードコア/スラシュメタルな面を引き継いだのが、かつてはペインキラーというグループであり、その後はマイク・パットン(vo),トレヴァー・ダン(b),ジョーイ・バロン(ds)によるトリオ・Moonchildだったわけです。
ただ、どちらのグループもそれぞれメンバー自身の活動もあり継続が難しくなったこともあり消滅してしまっているのですが、最後にゾーンのハードコア・メタル路線を引き継いだのはここで取り上げたSimulacrumということになります。
Simulacrum『Beyond Good And Evil』
Personnel
John Medeski – organ
Matt Hollenberg – guitar
Kenny Grohowski – drums
Grohowskiと、hollenbergというメタルな2人がいることで(単調になりがちだったミック・ハリスに比べて)格段にプレイの幅の広いドラムが入っていますね。ドラムの音が格段にタイトになっています。
Simulacrumの曲は、ゾーンが2015年から2017年の間に集中的に書いたようです。
そして3年間でアルバム6枚というかなりのハイペースでアルバムをリリースしたことになります。
この濃密なリリーススケジュールからも、ゾーンがこのプロジェクトをかなり気に行っていたことは間違いないですね。
「The True Discoveries Of Witches And Demons」(2015)
「Simulacrum」(2015)
「Inferno」(2015)
「49 Acts Of Unspeakable Depravity In The Abominable Life And Times Of Gilles De Rais」(2016)
「The Painted Bird」 (2016)
「The Garden Of Earthly Delights」(2017)
サウンドはというと、もともと緻密なスタジオワークを得意とするグループでもないので、スタジオレコーディングもライブアルバムも基本的には同じスタイルの音で飛ばしてくれます。
おそらく6枚のアルバムで曲はひと通り収録されたと想像でき、新曲のレコーディングは終了したのですが、そんな中でライブ盤というのはこのプロジェクトの振り返る総括的なライブ盤であるような気はします。「いままでお疲れさま」というごほうびリリースなんでしょうか。
彼らのようにメタル的な轟音の心地よさをキープしつつ、ここまでタイトでテクニカルなプレイをしていたグループって他になかったし、そういうワン・アンド・オンリーなグループが(おそらく当初から予定されていたとはいえ)活動が無くなっていくのは寂しくもあります。
まさにラスト・ダンスなのですけど、ヘッドホンのボリュームをあげこのタイトな轟音に包まれていると、そういうメランコリックな感情を微塵もみせないところも彼ららしいです。