2020年6月にリリースされたTzadikの新作『Baphomet』は、ゾーン作曲、Simulacrum演奏による彼らの新作アルバム。
40分ぶっ通し1曲のみ。
『Baphomet』というタイトルは、黒ミサを司る山羊の頭を持つキリスト教の悪魔からとったようです。
こういうオカルト趣味をコンセプトにしたゾーンのアルバムはたくさんあるので、それにならったおどろおどろしくも神秘的な曲調になっていますね
Simulacrumについては今年2020年に入って、過去のライブ演奏を収めた「Beyond Good And Evil—Simulacrum Live」というアルバムがリリースしたばかりです(このライブアルバムについてはこちら)
そこから間髪をおかずに立て続けに2枚のアルバムをリリースしたことになりますね。
Personnel
John Medeski – organ
Matt Hollenberg – guitar
Kenny Grohowski – drums
Simulacrumの活動の中心は2015年から2017年の間で、この3年間でアルバム6枚をリリースするという多作ぶりでしたが、ゾーンの書いた曲もほぼリリースし尽くし、グループとしての活動は実質的に終了したとも思っていました。
ただこのアルバムは2020年の2月にレコーディングされているのですよね。新たに曲を書いたのかな?終わったと思っていたけど実はそうでもなかったみたい
Inside John Zorn’s Jazz-Metal Multiverse
ちょっと話は変わりますが、2020年の6月末にローリングストーン誌にゾーンのインタビュー記事が載っていました。
おそらくネイキッド・シティ30周年ということで企画されたインタビューで、ゾーンのハードコア的な側面にフォーカスした記事です。
8万字にもおよぶ膨大な量で、ネイキッド・シティやペインキラーなどのかつてのグループについて、結成した当時のエピソードレコーディング時の会話や雰囲気などをゾーン本人が詳細に語っていますね。
ゾーンがこういう形で長いインタビューを受けて掲載を許可することってあまりなかったと思いますので、かなり貴重だし必読ですね。
この記事の最後の方でアルバム「Baphomet」についても触れられています。
Simulacrumでのホレンバーグのクランチーでテクニカルなギターとグロウスキーの硬質なメタルドラミングは、ゾーンのハードコアな側面を体現していますね。ハードコアという点ではMoonchildの方が突き抜けていているかもしれませんが、Simulacrumの方がより柔軟でなんでもできちゃう感じはありますね。
「”バフォメット”が自身の作品の集大成であると考えているのか?」とインタビュアーに聞かれたゾーンは「その通りだ」と答えています。
「これまでの活動をすべてまとめて次の仕事へつなげるんだ。僕は加算的(additive)な人間だから。一度決めたことは、自分の一部になってしまえばそのまま残っていく。私は加算し続けている。私はこれを付け足したら他のものを捨ててしまうようなファッションマンじゃないよ」
記事中でSimulacrumの3人がゾーンについて語っているパートもありました。
Simulacrumの2人ホレンバーグとグロウスキーはエクストリーム・メタルバンドclericのメンバーですが、トレバー・ダンがゾーンに彼らのアルバムを聴かせたことから、ゾーンの目に留まったそう。
ホレンバーグ -
バンドとしてみんなステップアップしてきたけど、本当にハードワークだったよ。
彼はまるでボクシングのコーチか何かのようだ。彼はみんなをプッシュしつづけようとしている。
「Oh、おまえにそれができるのか?」「これならどうだ?」「これがアッパーカットだ」「これがボディブローだ」みたいな
みんなで一緒に演奏していると楽しいし ゾーン自身も自分たちから刺激を受けていると思うよ。
メデスキ -
ゾーンから電話がかかってきて「ヘイ」と言われたら、それが何か聞く前に「イエス」と応えるよ。どんな仕事かなんて聞かない。支払いについてももちろん聞かないよ。ただ「イエス」というだけ。ゾーンからの連絡はそれが素晴らしい仕事についてなのはわかっているから。