女性初のグナワマスターとなった、Asmâa Hamzaoui(アスマ・ハムザウィ)
今回は、彼女が2019年にリリースした1stアルバム『Oulad Lghaba』に続くセカンドアルバム『L´bnat』について
以前このブログでグナワアルバムについてまとめて紹介したのですが、その時にちょうどリリースされた彼女たちの1stアルバムについても触れていました
そしてこちらは1stアルバムリリース後の動画
デビュー時は女性でグナワという話題性から注目されたのかもしれませんが、あれから今回の2ndアルバムにいたるまでに、各地のフェスのパフォーマンスで人気を固めてきたようです。
彼女たちはデビュー以降、Les Amazones d’Afriqueと共演し2024年の夏にはWOMADにも出演するなど、「注目すべき若手ミュージシャン」「次世代のスター」とでも言えるくらいワールドミュージックの世界というかコミュニティで強力にプッシュされている気もします
ハムザウィの音楽は、パッと聴いた感じではトラディショナルなグナワなのですが、海外のメディアなどを見るとTinariwenとかMdou Moctarみたいな、いわゆる「砂漠のブルース」と呼ばれるようなグループと比較されることが多いですね
うーん、音楽的にはかなり違いがあると思うのですけど、ちょっと不思議ですね。地域的に近いから?という理由ならずいぶん雑な気も
もともとグナワは、時間の経過で刻々と変化していく音楽ではなく、ムードというか言ってみれば雰囲気を楽しみもの(だと思います)
彼女の音楽を「パッと聴いた感じではトレディショナルなグナワ」と書きましたけど、実際のところはけっこうテクニカル、というか音楽的に変化を付けようとする意識がかなり強いような気もします。
伝統的なグナワのフォーマットに、シンコペートされたリズムや楽器のフレージングとか、ハムザウィとコーラスのかけあいといった、言ってみればグナワ以外の音楽の要素を巧みに取り入れている気もします。
(特に2ndアルバム『L´bnat』を聴いて感じたのですが、グループのコーラスワークはこのグループの最良の部分じゃないかな、と)
そもそもワールド系のミュージシャンは、実は古くからの伝統に無頓着な部分もあります
砂漠のブルースでギターを使うのもそう。いかにギターのような西洋の音楽を取り入れてきたか、その課程こそが伝統になっている。
そういう彼ら/彼女らは、割とイージーに打ち込みを使ったりすることも多いのですけど、ハムザウィはこのあたり慎重で、トラディショナルなグナワの雰囲気を壊すことなくいかに自分のカラーを出すことに注力しているようで、そしてそれはかなり高いレベルで成功しているんじゃないかと思います
それにしても20代そこそこ、デビューから数年で、ここまで音楽的な高みと世界レベルでの評価を両立させるというのはすごいの一言ですね
これから何十年、世代にわたって聴かれることになるグループだと思います
余談
『L´bnat』のアルバムジャケットは、色使いとかあえてチープなデザインが、古き良きアフリカ音楽のアルバムの雰囲気でカッコ良いですね。