アナンディ・バッタチャリア(Anandi Bhattyacharya)は、インド古典音楽のスライドギターの巨匠、デバシシュ・バッタチャリアの娘さんで、インド古典声楽のヴォーカリスト。
彼女は2018年にアルバム『Joys Abound』を発表したのですが、このアルバムはワールドミュージック系のwebメディアで軒並み高評価で、その年のベストアルバムにも選ばれていたりもしました。
Debashish and Anandi
スライドギターを演奏する父親のデバシシュは、インド古典音楽の巨匠とも言えるミュージシャンで、もともと欧米で(特にインド系住民の多いイギリスなどで)人気が高いミュージシャンですね。2008年の『Calcutta Chronicles』ではグラミー賞にもノミネートされています。
海外での活動が長く、ブルーグラスのジェリ・ダグラスやジョン・マクラフリンと共演したアルバムをリリースしたりもしています。
デバシシュが演奏するのはスライドギターなのですけど、ハワイアンのペダルスティール・ギターを聴いて自ら楽器をインド音楽用に作成したようです。
ペダルスティール・ギターのように膝の上に乗せてスライドバーを使って弾くのですが、基本的にはシタールと似たような音色を出すようです。ギターといっても共鳴弦もいれると22本もの弦が張ってあり、豊かな倍音が出せます。
かなり辛そうな姿勢で弾くシタールなどと違い、自然な姿勢で演奏できますし、スライドバーを使った弾きやすさを生かした豊かな表現力が魅力です。
動画はTiny Desk Concert。
このプログラムに出ているところからも欧米での人気がわかりますね。娘さんのAnandiも共演しています。
『Joys Abound』
このアルバムはアナンディのファースト・ソロアルバムであり、このリリースした2018年当時、アナンディは22歳。いや若い!
ただ彼女は3歳から叔母のSutapa Bhattacharyaに、12歳からShubhra Guhaに古典声楽のトレーニングを受けてきており、小さなことから神童と言われたようです。
10代後半から父親について世界中をツアーでまわっていて、すでにかなり長いキャリアを持つヴォーカリストでもあります。
父親のデバシシュはたまにエスニック・フュージョン風のアルバムを作ることもありますし、このアルバムもバックは純粋な古典ではないのですね。
バックの演奏は基本的にはデバシシュのギターと、叔父であるスバシシュ(Subhasis Bhattacharya)のタブラが基本で、途中にタブラ以外のパーカッションや、Carola Oritzという女性ミュージシャンのクラリネットが参加する曲もあります。
1曲目はギターとタブラをバックに純古典でスタートし、曲が進むにつれて徐々にいろんな楽器を使った凝ったアレンジに移り変わっていく感じ。
そして最後の数曲は、エモーショナルな曲とドラマチックなアレンジで、なんとなくフェイルーズとかの中東ポップスを思わせるところもあります。
なかなかアルバム構成は凝っていて、こういうアルバム全体で飽きさせない工夫は古典のインド音楽にはない良さですね。
バックの演奏はかなりスタジオで作り込まれているなという印象で、パーカッションを多層で重ねるところなども新鮮です。
使われる楽器もあくまでアコースティックで、安易に打ち込みっぽくなるようなダサいことはやってないです。
いま風のバック演奏なのですけど、彼女のヴォーカルはあくまで古典声楽に根ざしたもの。
バックがどんなアレンジでも彼女の歌はブレなくて、終始輝きを放っていますね。
まだ22歳なので、これからもっと素晴らしいミュージシャンにステップアップしていくかも。