A Happy New Year!
去年2022年の年間ベストもこのブログで選んでいて、選んだ10枚に関しては文句なしに素晴らしいアルバムだったのですが、去年1年間を思い返すと(自分がふだん聴いているタイプのジャズやワールド系の音楽に限って言えば)2022年はどちらかというと「スロウ」な年だったと言えるかもしれません。
年末年始は実家に帰っていたのですが、ミュージシャンもお休みで新作リリースもなくて少し前のアルバムを聴いたりしていたのですが、今日はお正月に聴いた旧作の中から気に入った作品について投稿します。
チャーリー・ヘイデン『American Dreams』
ベーシスト、チャーリー・ヘイデン『American Dreams』(2002)というアルバムは、実はこれまで聴いたことが無かったのですよね。
クレジットを見ると超豪華メンバーなのですが、なぜかこれまでアンテナに引っかかってみませんでした。
Charlie Haden (bass)
Brian Blade (drums)
Brad Mehldau (piano)
Michael Brecker (tenor saxophone)
メンバーはカルテットに加えて、34人のオーケストラ演奏が加わるという(お金のかかったという意味で)豪華なアルバム。
いかにもVerve!という感じかも
チャーリー・ヘイデンはカルテット・ウェストというグループのリーダーでもありますけど、この『American Dreams』はカルテット・ウェストの延長線上にあると言っても良いと思いますね。
(カルテット・ウェストのピアニストであるアラン・ブロードベントは『American Dreams』にも参加していて、オーケストラの指揮を行い、曲を提供し、アレンジなども行っています)
カルテット・ウェストというグループは既存曲のカバーも多いし割とポップスっぽいアレンジが多かったですが、『American Dreams』はオーケストラを入れてよりゴージャスに拡張高く仕上げてきた感じ。
収録曲の多くはカバーなのですが、キース・ジャレットやパット・メセニー、オーネット・コールマンなどの曲も含まれていたり。
アルバムタイトルとジャケットからわかるように、アメリカの特に中西部の田園風景を思わせるスローナンバーが並んでいます。
チャーリー・ヘイデンは、パット・メセニーとの共作で『ミズーリの空高く』という作品もありましたが、コンセプトとしてはこの作品に近いのかも。
こういうアルバムは、大きなくくりとしてはジャズというよりも、(ジャズミュージシャンの演奏する)アメリカーナと呼ぶべきなのかもしれません。
初期のパット・メセニー・グループから、ビル・フリゼール、現在進行形ではジュリアン・ラージといった風に、(細々とではありますが)過去から連なる一連の作品群のひとつという位置づけになるのかも。
ただこういうアメリカーナなアルバムは(ピュアな)ジャズファンからは高く評価されているような気はしないですけどね。シンプルに「軟弱」だと思われているのかも。
自分も(軟弱とは思わないですが)「単調で飽きちゃう」と感じることも多いのですが、この『American Dreams』はほどよい緊張感があるところが良いですね。
このアルバムが特別なのは、やはりマイケル・ブレッカーのサックスによるところが大きいです。
過去のweb記事やブログなどを読んでも「マイケルのプレイはソロアルバムよりこのアルバムの方が好き」という人も多いみたいでした。
たしかにスローな曲の中にあって、印象的なフレーズを曲調を壊すことなくスムーズにつなげていくさまは聴いていて心地よいですね。
マイケル・ブレッカー『Wide Angles』
年末年始に聴いたもう1枚は、マイケル・ブレッカーのソロ作品『Wide Angles』
※オフィシャルにはMichael Brecker Quindectet名義のアルバム。Quindectetとは15人編成のことのようです。
どうしてこのアルバムを聴こうと思ったのかというと、このアルバムに参加しているドラムのアントニオ・サンチェスがこのアルバムについてSNSに投稿していたからです。
レコーディングからちょうど20周年ということで、当時の思い出を語っています。
メセニーつながりということでいえば、『Wide Angles』にはサンチェスの他にギル・ゴールドスタインなども参加していますね。
上述の『American Dreams』が2002年リリースで、ブレッカーの『Wide Angles』はその翌年の2003年にリリースされていますね。どちらのアルバムも同じVerveレーベルからリリースされています。
この『Wide Angles』はグラミー賞でBest Large Jazz Ensemble Albumを受賞するなど、高い評価を得たアルバムですが、マイケル・ブレッカーがこのアルバム以外にラージ・アンサンブルをバックに吹いているのはあまりないですし、企画盤というか、レーベル幹部が「American Dreamsみたいなのをもう1枚作りたいね!」みたいノリでレコーディングされたのかもしれません。
曲はほとんどブレッカーが書いているのですが、『American Dreams』のようなビジュアルが浮かぶような演奏ではなく、凝ったアンサンブルアレンジ(これはゴールドスタインの仕事なのかな)が聴きどころのアルバムですね。
そんな中でもブレッカーのソロは耳を奪われますね。
『American Dreams』も『Wide Angles』も、普段のブレッカーのアルバムとはかなりタイプが違っているのですが、曲ごとのフィーリングに合わせてスタイルを変えられるところが、実はブレッカーのすごさなのかも(彼のキャリアでその良さはあまり発揮されなかったようにも思いますが)
余談
ストリングセクションに、ヴァイオリンのMark Feldman、チェロのErik FriedlanderといったTzadik関連ではおなじみの人がクレジットされていますが、特にソロパートもなくて、こういうのもいかにも「お金がかかって」ますね。
『Wide Angles』クレジット
Arranged By – Gil Goldstein (曲: 3, 6, 8)
Bass – John Patitucci
Drums – Antonio Sanchez (2)
Guitar – Adam Rogers (2)
Bass Clarinet – Iain Dixon
Cello – Erik Friedlander
Clarinet – Iain Dixon
Flu te – Steve Wilson (2)
French Horn – Peter Gordon (8)
Oboe – Charles Pillow
Percussion – Daniel Sadownick
Tenor Saxophone, Producer, Arranged By – Michael Brecker
Trombone – Robin Eubanks
Trumpet – Alex “Sasha” Sipiagin*
Viola – Lois Martin
Violin – Joyce Hammann, Mark Feldman