Spotifyなどのサブスクサービスを利用していると、けっこう有名なアルバムも聴けなかったり、逆にマイナーなアルバムが聴けたりと、一長一短なところもありますね。
先日も、オーネット・コールマンのプライム・タイムを検索してみたら、けっこう聴けないアルバムが多かったんですね。「Body Meta」とか「Tone Dialing」とかぜんぜん聴けない。
レーベルの権利者と連絡つかない、とか何か理由があるのかもしれないですけど、こういうのも困ったものですね。
なんでこういう話を書いたかというと、先日に検索してて「CDとかはぜんぜん流通していないけど、サブスクではけっこう聴けるな」と思ったミュージシャンがいて、それが現代音楽家・作曲家のアルヴィン・カラン(Alvin Curran)です。
彼の『Solo Works』というアルバムなんて、CDはあまり枚数が流通していないのか、わたしがCDで買った時はけっこう高値が付いていて(3枚組とはいえ)6000円くらいしたんですよね。
Alvin Curran(アルヴィン・カラン)
アルヴィン・カランは、現代音楽家のエリオット・カーターに師事し、フレデリック・ジェフスキー、リチャード・タイテルバウムらとMusica Electronica VIVA(MEV)で活動を行うなどゴリゴリの現代音楽作家。
現代音楽はわたしみたいな軟弱リスナーにはともかくハードルが高くて、ぜんぜん受け付けないのですけどね。
wikiによると、現代音楽の大きな特徴としては「調性された音楽からの脱却」ということのようです。シェーンベルクみたいな。
無調性(アトーナル)な音楽というと、例えばデビッド・クローネンバーグの映画音楽でおなじみのハワード・ショアとか、ショアつながりでオーネット・コールマンとか、個人的にはあまり抵抗ないと思っているのですけどね。
それでも現代音楽をあまり受け付けないのは、音楽の理由付けみたいなものを否定しているからなのかな、とも。
たいていの音楽には「楽しむため」「踊るため」「神への信仰心の表現」などなど、明確な目的があるのですけど、現代音楽はそういうのが全然なくて、毎回「これはどう聴けば良いのだろう」となやむことになります。
ただ、アルヴィン・カランのアルバムはそんな現代音楽の中にあってすごく聴かせるアルバムが多いと思います。
基本的には、環境音楽、電子音、テープミュージックなどのテクノロジーを使った実験的でミニマルな作風が多いですね。
使われる音のフォーマットなどは、ポーリン・オリヴェロス(Pauline Oliveros)とかに近いかも。
『Endangered Species』(2018)
アルヴィン・カランもそうですが、ライブ演奏がメインでアルバムというフォーマットは重要視していないようですね。いくつかの曲をコンパイルしてリリースしてみましたという感じのものも多いです。
そんな中、このアルバムは一貫したコンセプトでレコーディングされています。
古いスタンダード曲、デューク・エリントンやクルト・ワイル、ロジャーズ=ハート(トラックリストは最後に掲載)などの曲をピアノ演奏し、その音の並走して、何語かわからないつぶやきのような加工されたボイスがかぶさるというもの。
ピアノ演奏はカラン自身が行い、ヤマハのDisklavierという自動演奏機能付きピアノで再生させているとのこと(ピアノ演奏をオーバーダビングすれば良いだけだと思いますが、ライブ演奏を念頭に置いているのでしょうね)
聴き覚えのある曲、聴いて楽しくなる曲、調性された曲、そういう従来の意味での「良い曲」がピアノ演奏される横に、常にその音楽の意味を問いかけるように人の声が重なることで、音楽を聴く感覚が揺さぶられることになります。
ちょっとこれはなんだかクセになって止められなくなる音楽ですね。
Endangered Species tracklist:
1-1. Out of Nowhere (1931) [Johnny Green, Edward Heyman]
1-2. (I’m) Confessin’ (that I Love You) (1929) [Al Neiburg, Doc Daugherty, Ellis Reynolds]
1-3. Ain’t Misbheavin’ (1929) [Thomas “Fats Waller & Harry Brooks, Andy Razaf]
1-4. Bewitched, Bothered and Bewildered (Take 3) (1940) [Richard Rodgers & Lorenz Hart]
1-5. Come Rain or Come Shine (1946) [Harold Arlen, Johnny Mercer]
1-6. I Got It Bad (and that Ain’t Good) (1941) [Duke Ellington & Paul Francis Webster]
1-7. Speak Low (1943) [Kurt Weill, Ogden Nash]
1-8. Arrivederci Roma (1955) [Renato Rascel, Pietro Garinei, Sandro Giovannini]
1-9. Tea for Two (1925) [Vincent Youmans, Irving Caesar]
2-1. Bewitched, Bothered and Bewildered (Take 2) (1940) [Richard Rodgers & Lorenz Hart]
2-2. As Time Goes By (1931) [Herman Hupfeld]
2-3. Georgia on My Mind (1930) [Hoagy Carmichael, Stuart Gorrell]
2-4. St. James Infirmary Blues (1929) [Anonymous]
2-5. As Time Goes By (final) (1931) [Herman Hupfeld]
2-6. A Foggy Day (in London Town) (1937) [George Gershwin & Ira Gershwin]
2-7. Memories of You (1930) [Eubie Blake, Andy Razaf]
2-8. Just a Gigolo (1929) [Leonello Casucci, Julius Brammer, Irving Caesar]
2-9. Red River Valley (1896) [Traditional]