アレキサンダー・ホーキンスはイギリスのジャズピアニスト・作曲家で、今回は彼がMIRROR CANONと名付けたグループによる新作『Break A Vase』の紹介。
ホーキンスについては、このブログではアンジェリカ・ニーシエとのデュオアルバム『Soul in Plain Sight』をリリースしており、このアルバムについてはこのブログで取り上げました(こちら)
ホーキンスは、このアルバム以外にも2021年にいくつかのアルバムをリリースしています。
ひとつは彼名義のソロアルバムで、エヴァン・パーカーをフィーチャーしたラージアンサンブル作品『Togetherness Music』。このアルバムは昨年の各メディアの年間ベストでもチラホラ名前があがっていました。
もうひとつはアンソニー・ブラクストンが2020年に行ったヨーロッパツアーを収めた『Quartet (Standards) 2020』への参加。このアルバムは13枚組CDというボリュームで、デジタルダウンロードでも100ドル近くするのでまだ未聴なのですが。
といった感じでかなりハイペースで音源をリリースしているのですが、今回の『Break A Vase』も前作からほとんど期間を空けずにリリースされていますね。
MIRROR CANONのメンバーは
Alexander Hawkins: Grand Piano, Upright Piano, Sampler
Richard Olátúndé Baker: Adamo (Talking Drum), Percussion
Neil Charles: Acoustic Bass Guitar, Double Bass
Stephen Davis: Drums
Otto Fischer: Electric Guitar
Shabaka Hutchings: Tenor Saxophone, Soprano Saxophone, Flute
みなさん!今や売れっ子のシャバカ・ハッチングスが参加していますよ!サイドマンとしての彼を聴くのは興味深いんじゃないでしょうか。
ベースのニール・チャールズとドラムスのステファン・デイビスは、ホーキンスのレギュラートリオのメンバーで、ブラクストンの『Quartet (Standards) 2020』もこのトリオで参加しています。
MIRROR CANONという新しいグループという建て付けですが、『Step Wide, Step Deep』(2014)や『 Unit[e] 』(2017)とほぼ同じメンバーだったりもします。この2枚のアルバムにはシャバカ・ハッチングスも参加しています。
彼はこれまで、アーサー・ブライス、アンソニー・ブラクストン、オリバー・レイク、ワダダ・レオ・スミスといった人たちの曲を取り上げていて、彼らが活躍した時期のダークでアヴァンギャルドなジャズをイメージして演奏している印象を受けます。
そこに彼なりのさらに現代的な感覚に加えているのですが、具体的には、ゴリゴリの演奏にキャッチーな明確なテーマやメロディーと、淀みがなく流れるようなピアノのバッキングとを組み合わせるというコントラストがいま風で、そこがホーキンスのアルバムの魅力な気がします。
他にも(スローナンバーだと良くわかるのですが)体を揺さぶられるようにモタるタイム感覚が独特で、気持ち良いのだか悪いのだか不思議な感覚になる演奏ですね。
こういった感覚は、オーネット・コールマンのプライム・タイムを聴いた印象に近いかもしれない。
今回、ホーキンスの過去作を聴き直したのですが、その中でも今回の『Break A Vase』は主色の出来かもしれないですね
(もう1枚、彼のアルバムで気に入ったのは、2017年の2枚組『 Unit[e] 』かな)